中国人団体観光客のビザなし入国が認められた初日の29日午前6時、仁川(インチョン)港クルーズターミナルに7万7000トン級クルーズ船ドリーム号が入港した。1時間15分ほど船で待機した中国人観光客がターミナルの入国ロビーから出てくると明るい顔で手を振った。仁川観光公社は韓服姿の歓迎団とともに彼らを迎え、笑って記念写真も撮影した。
ドリーム号は中国・天津を拠点に2023年8月から日本と済州(チェジュ)など北東アジアの短期路線を運航するクルーズ船だ。今回の乗船人数は合計2189人で、乗務員だけで563人に達する。中国の海運会社が中国人団体観光客のビザなし入国施行に合わせて観光商品を準備した。ただ韓国出入国当局はドリーム号の乗客にはすでに施行中である「クルーズ観光上陸許可制」を適用して入国を認めた。仁川港湾公社関係者は「海運会社はビザなし入国政策に合わせて観光商品を準備したが、クルーズ観光客の国内滞在時間が短く円滑な出入国のため既存の制度を活用したようだ」と話した。
中国人観光客の最初の訪問先は、歓迎行事が行われたサンサンプラットフォームだった。彼らは仁川市が準備したサムルノリとテコンドーなどの伝統公演を見て開化期衣装体験ブースと地域商品販売ブースなどを見て回った。仁川市は中国人観光客に向けタッカンジョン、仁川サイダーとビール2000人分を準備した。観光客はチャイナタウン、新浦市場など近隣の観光地も訪問した。その後景福宮(キョンボックン)、明洞(ミョンドン)、南山(ナムサン)などソウルの主要観光地へ向かう観光バスに乗った。ある観光客は「こうした歓迎行事がありとても良い。韓国にまた来たい」と話した。
◇流通・観光業界、中国人観光客に期待感上昇
ビザなし入国施行とともに韓国の流通業界と観光業界で中国人観光客特需への期待感が高まっている。この日から来年6月30日まで内外の旅行会社が募集した3人以上の中国人団体観光客はビザなしで15日間韓国で観光できる。業界では中国最大の名節である国慶節(10月1~8日)、来月末の中国の習近平国家主席のアジア太平洋経済協力会議(APEC)訪問という好材料と合わさり観光客流入の触媒になるだろうとの見通しが出ている。韓国政府は今回の政策で来年上半期まで中国人100万人以上が訪韓すると期待している。
中国人観光客を迎えるのに最も忙しいのは流通業界だった。この日ドリーム号乗船客400人を誘致した新羅免税店はソウル店に「貴賓歓迎」と書かれたプラカードを広げ花束贈呈行事を行った。浮き立った表情で免税店を訪れた観光客は1~2階を回って高額なブランド品を次から次へと購入した。花束を受けた観光客は「今回家族と初めて訪れたが、(ビザなし政策が終わる)来年6月までにもう一度韓国に来たい」と話した。
◇商人「反中デモ激化の懸念も」
一部では最近続く反中デモに対する心配も出ている。特に集会が頻繁に開かれるソウル・明洞の商人の間で期待と懸念が交差する。明洞でのりや紅参などを売るイ・ソンヒさんは「商売がもっとうまくいくだろうという期待はあるが、それだけ集会が頻繁に開かれ中国人の足も途絶えないだろうかとの心配もある」と話した。保守指向の市民団体はこの日、汝矣島で約270人が集まった「国家情報資源管理院火災真相究明要求と中国人ビザなし入国反対」集会を開いた。参加者の一部は「天滅中共(天が中国共産党を滅ぼすだろう)」など反中スローガンが書かれた服を着た。
ビザなし入国と関連し確認できていない主張も相次いでいる。国会電子請願ホームページには「来年6月3日には全国同時地方選挙が予定されており選挙期間とビザなし入国期間が重なる」といの投稿があった。29日午後4時基準で6万382人がこの投稿に同意した。Xには「国家情報資源管理院火災でビザなし入国の中国人観光客の身分を確認することができない」という趣旨の投稿が広がった。ここに政界も加勢した。「国民の力」のキム・ミンス議員はこの日、仁川観光公社で開かれた現場最高委員会議で「中国人ビザなし入国開始は国民の安全を担保にした危険な賭け。ビザなし制度を悪用した犯罪組織浸透の可能性がある」と主張した。
これに対し法務部は「出入国管理情報システムは法務部所属機関で別に管理しており国家情報資源管理院火災と関係なく正常運営されている」と説明した。漢陽大学観光研究所のイ・フン所長は「政府が徹底した滞在管理と安全への備えで一部の根拠のない主張に対し口実を与えないことは基本。中国人観光客流入により生存権が左右される商人協会など民間でもヘイトスピーチに積極的に対応しなければならない」と助言した。
2025/09/30 08:32
https://japanese.joins.com/JArticle/339250