先月27日、KOSPIが4000を超えた。今年だけで70%ほど上昇している。上下動はあるが、お祭りムードだ。
その日、ある小さなニュースが流れた。最近12年の間に、所得や資産などを合わせた多次元的不平等指数で計った不平等が深刻化しているという内容だ。主な要因は資産の格差だ。
この2つのニュースは妙に対照的だ。新政権が主な成果の指標のように考えているKOSPIの上昇は、多くの人の財布を膨らませてくれる。株式投資家はおよそ1400万人いる。別の角度から見ると、株をやらない人の方が多いということだ。彼らに相対的な剥奪感を抱かせるニュースかもしれない。住宅価格が上がっても、住宅を持たない半数の国民にとっては絵に描いた餅であるのと同様だ。株式投資家だとしても、うたげの取り分には雲泥の差がある。市場に任せていると、少数の株富豪の分け前の方が大きくなるものだ。住宅価格が首都圏の中でもソウル、その中でも江南(カンナム)を中心としたエリアで高騰しているのと同じだ。
今、株式市場は租税回避地(tax haven)に近い。このまま行くと、李在明(イ・ジェミョン)政権は資産の不平等が大幅に拡大した時代として記録される可能性が高い。新政権は福祉や分配より成長を選んだ。止まりゆくエンジンを再び加熱することが急務だと判断した。しかし誰もが知っているように、成長したからといって分配が自然に解決されるわけではない。両方をみなければならない。
先の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は不平等に無頓着だった。彼の口から不平等という言葉は聞かれなかった。李在明政権は尹錫悦政権とは違うはずだと今も期待されているようだが、よくみると心配だ。これまでに打ち出された政策に、不平等を緩和するような政策はこれといって見当たらない。資産と、そこから派生する所得に対する消極的な課税政策を堅持している。尹錫悦政権をそのまま踏襲していると言っても過言ではない。資産市場の上昇期にこのような政策的態度を保つと、租税を通じた不平等の改善効果が低下するため、資産格差はさらに拡大せざるを得ない。
実際に、資産の不平等を矯正する最も現実的な手段は税だ。だが、尹政権が設計した株の差益に対する減税は、政権交代後もそのままだ。銘柄当たりの保有株が50億ウォン(約5億2700万円)以下であれば、大株主要件を満たさないため差益に税金がかからない。0.1%台の取引税さえ払えば済んでしまうのだ。新政権は大株主要件を復元(50億ウォン→10億ウォン)しようとしたが、市場の反発と証券市場親和的な政策基調に押されて挫折してしまった。株から数百億ウォン、いや、それ以上の差益を得ても、税金びた一文払わずに済んでしまうのだ。
また、株やファンドなどで得た一定以上の所得に20%台の税率を適用し、今年からの課税を目指していた金融投資所得税の実施計画も、水泡に帰した。米国や日本では、株取引で差益が生じれば、普通20%前後の税を納める。
このような中、株を保有することによる配当所得の税率すら引き下げる法案が、まもなく国会で可決される見通しだ。近ごろの企業の業績改善と証券市場親和的な配当性向の上昇で、配当は大幅に増えるすう勢にある。所得のあるところには課税がなければならないが、株式市場はほぼ例外に近い。
誰かが言ったように、今の韓国は株富豪にとって「ベルエポック(美しい時代)」だ。ベルエポックという言葉の意味とは裏腹に、西欧資本主義は20世紀を前後して爆発的に成長したが、その時代はごく少数に富が集中したことで不平等が最もひどかった。不動産富豪にとっても美しい時代であることは同じだ。政府の政策当局者も口をそろえるように、他国に比べて保有税の負担が軽い。尹錫悦政権が総合不動産税を大幅に引き下げたせいだ。だが、李在明政権もそれに手をつけず、減税基調が続いている。江南の住宅価格はすでに、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に記録した最高値を超えている。2年前の時点ですでに、不動産所有者の上位20%は負債を除いた不動産純資産を下位20%の141倍所有していた。その後の江南圏を中心とする住宅価格の上昇は、その格差をさらに広げたに違いない。
パリ経済学院のトマ・ピケティ教授は、数年前に最小相続制を提案している。25歳以上の成人に12万ユーロ(約2億ウォン)を与えて、事業を始めるか家を買う機会をより均等に与えようというアイデアだ。彼の名声に比べると、この提案は実現性がないように聞こえる。しかし、彼の想像は暗うつな現実から生じたものだ。彼のような果敢な政策的想像と意志なしには、ますます拡大する資産格差はそうたやすく縮められないのが現実だ。そこまで行かずとも、資産の保有とそこから生じる所得には、それにふさわしい税を課すべきだ。
そのようにして徴収した税は、低いところにいる人々の所得を補填したり資産を蓄積したりする財源として使われるべきだ。今のように特に何の対応もしないままだと、先に述べたように、李在明政権は資産の不平等が拡大した時代として記憶されることになるだろう。
2025/11/06 18:01
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54659.html