日本の高市政権が拡張的財政政策を推進するために財政準則の修正を検討し、古くからの質問が再び水面上に浮かび上がった。国家財政を規則で統制できるだろうか。
経済学者は準則緩和が財政健全性を損ねるものと警告する。財政規律に対する社会的関心が高まった点でこうした論争自体は喜ばしい。ただ議論の出発点がひとつあるならば、それは「財政準則の力を過信してはならない」点だ。
世界各地で「財政膨張が国債利回りの安定性と政府信頼を脅かす」という懸念が大きくなっている。特にヘッジファンドが通貨スワップを活用して国境を行き来する国債投資を急速に増やし、ある国の債券市場不安が世界的金融市場に広がる可能性もはるかに大きくなった。
国際社会の主流の見解は明らかだ。財政準則は財政健全性維持に役立つということだ。実際に現在多くの国はどんな形態であれ財政準則を採択している。準則が制約する財政変数の数も増えた。平均的に2012年に2.6件だった財政変数は2024年には3.4件に増加した。規則はさらに精巧になり、紙の上の財政規律はより頑丈に見える。
現実は期待にこたえない。先進国21カ国と新興国32カ国の1999年以降の状況を分析した研究によると、財政準則を導入したからと必ずより良い財政成果を上げるものではない。日本の事例はこれを象徴的に見せる。日本の基礎財政収支均衡達成目標は数年にわたり延期されているが、準則自体は依然として存在する。
さらに興味深いのは導入前後の変化だ。各国の基礎財政収支を見ると、準則導入前の3年間はGDP比で平均1.1%改善されたが、導入後2年間はむしろ同じ幅で悪化した。コロナ禍のような大型衝撃の後には財政準則を持つ国で財政収支悪化がさらに目立った。規則が危機の緩衝装置の役割をしたとはいい難い。
なぜこうした逆説が繰り返されるのだろうか。多くの政府は財政状況が良くなってからその成果を記念するように財政準則を導入する。準則が基礎収支改善努力に一定部分寄与するのも事実だ。問題はそれからだ。政府は改善された財政評判を踏み台にして再び支出を増やし、その瞬間準則が作り出した肯定的効果は早く消える。
結論は冷静だ。財政健全性を守るのは政府が自ら立てた規則ではなく、長期金利と為替相場という市場の懲戒かもしれない。財政準則が失敗する理由は単純だ。市場は例外を許容しないが、政治はいつも例外を作る。
長井滋人/オックスフォードエコノミクス日本代表、元日本銀行国際局長
2026/02/02 11:40
https://japanese.joins.com/JArticle/344255