AIの進撃【萬物相】

投稿者: | 2026年9月14日

 17世紀の数学者フェルマーは、本の余白に「驚くべき証明を見つけたが、それを書くには余白が狭すぎる」という言葉を残した。私たちがよく知るピタゴラスの定理を少しひねって投げかけた「フェルマーの最終定理」だ。この短い定理一つを解くために人類最高の知性たちは350年以上にわたり絶望を繰り返し、1994年に英国のワイルズ教授が7年の研究の末に証明した。数学の難問を解くということは、単なる計算ではなく、人間固有の深い思考力を絞り出す作業だ。

 最近、この聖域が急速に揺らいでいる。米コネチカット大学のイ・ギュファン教授の研究チームは、40年の難問「M23」をAIと協働してわずか2カ月で解決した。90年間未解決の課題だった「ナビエ=ストークス方程式の問題」さえも、次世代AIが88時間で解法を導き出した。データを確率的に組み合わせてそれらしく真似ているだけという「確率的オウム」という批判は引っ込んだ。数学界では「AIと協働したのか区別しにくく、2030年になれば数学のノーベル賞である『フィールズ賞』が消滅するかもしれない」と懸念するほどだ。

 数学の難問だけではない。改編された日本の大学入学共通テストに挑戦して全領域満点を獲得した「GPT-6 Astra(アストラ)」は、人間が平均2時間かかる48段階の「私はロボットではありません」のパズルテストさえも、わずか4分で突破した。人間か機械かを区別するために作られたセキュリティ網さえも、AIが人間より30倍速くすり抜けたのだ。AIを巡る局面は、今やテキストで答えを出すだけの水準を超え、自らウェブを検索し、コードを修正して、直接見て判断する段階へと進化している。

 それでは、人間の知的な立場は消滅するのだろうか。数学者たちはAIの全知全能さに一線を画し、主導権は依然として人間にあると語る。AIがいかに素早く計算結果を出そうとも、「どの難問に挑戦するか」の方向性を定め、その結果を検証して新しい理論へと完成させる指揮者は結局のところ人間だからだ。高等科学院のペク・ジンオン博士も「どの問題に価値があるのか」を判断する文脈や企画は人間の領域だと強調する。イ・ギュファン教授もまた、AIという「アイアンマンスーツ」を着て機械をコントロールする人間の「数学的思考力」こそが、AI時代の真の主役だと見なしている。

 本当に恐ろしいのはAIの完璧さではなく、技術が人間を追いかけてくるスピードだ。「あまりにも早く変化して怖い」という、あるスタートアップ創業者の嘆きが耳に突き刺さる理由だ。自ら「ロボットではないこと」を証明し、天才たちの難問まで軽々と解き明かしたAIの能力試験は、すでに満点レベル。人間はAIというスーツを着て、賢く主導権を守り抜くことができるだろうか。

2026/09/14 09:00
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2026/09/11/2026091180187.html

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