9月末の高市早苗首相による国連総会出席、その直前の日米首脳会談、さらにその直後の米中首脳会談は、日本の指導者とマスメディアに知識が欠け、思考停止に陥っていることを示す事例となった。
日米首脳会談について、日本政府とメディアは、米中首脳会談でドナルド・トランプ大統領が中国に譲歩しないよう牽制するためと説明していた。しかし、日本以外のメディアからはまったく注目されず、日本側が言う目的も達成されなかった。日本政府は、会談の意義について日米関係の緊密さを確認したと言ったが、それは自己満足にすぎない。
国連演説で、高市首相は国連憲章にある「旧敵国条項」の削除を要求した。いつまでも敵国と言われるのは不名誉だと言いたいのだろう。しかし、この改正は安全保障理事会の常任理事国を始めとして、多くの国々の賛同を得なければ一歩も前に進まない。実際に高市政権が行っているのは、中国などと敵対関係を深めることであり、日本のこの種の主張が実現する可能性はゼロである。国際舞台における高市首相の行動は、国内向けの政治的演技であり、日本が直面する外交上の課題を解決するものではない。
米中首脳会談で、トランプ大統領が米中関係について「同盟」という言葉を使ったことは、日本の政府とメディアに衝撃を与えた。この言葉は、高市首相の旧敵国条項削除の要求に対する痛烈な切り返しであった。そもそも第2次世界大戦後の国際秩序は、民主主義の国々(アメリカ、イギリス、ソ連、中国)がファシストの国々(日本、ドイツ、イタリア)を打倒したという物語の上に構築されている。日本人としては、原爆使用の当否など、疑問を呈したいことはいろいろあるが、この大きな物語に代わるものを提示することは不可能である。
米中両国の首脳は、利害対立を調整する上で、かつてファシズムとともに戦ったという歴史を再確認することを利用したように思える。それが、日本の政治家やメディアには、トランプによる裏切りのように映ったから、周章狼狽した。日本のメディアには、第2次世界大戦におけるアメリカの同盟国は当時の中華民国だという主張があふれた。しかし、これは悔し紛れの言いがかりに過ぎない。中華人民共和国は、かつて日本と戦った中国の地位を継承している。歴史という武器を使った日本に対する牽制に対抗するには、戦争や植民地支配に対する反省を国民的合意にして、十分な償いをすることしかない。
一連の外交イベントは、日本に重い教訓を与えた。アメリカ、トランプ政権は、つねに自己の利益を優先して行動し、中国とは対立しつつ、実利を確保するための関係調整を行う柔軟性を持つ。トランプは北朝鮮訪問にも意欲的と伝えられる。仮にそれが実現すれば、日本にとっての敵、味方の構図は大きく変化する。つねにアメリカについていけばよいという思考停止では、日本の直面する外交上の問題を解決することはできない。
最大の課題は、中国との関係改善である。高市首相は、昨年秋のいわゆる「台湾有事発言」以後、中国側が対日姿勢を硬化させることを放置してきた。9月末、岩屋毅元外務大臣が、日本国際貿易促進協会会長の立場で中国を訪問し、王毅外務大臣と会談した。日中間の経済交流を広げることは、中国側の利益にもなる。中国の指導部も、日中間の対話の経路を開くことへの意欲を見せた形である。
日本の一部のメディアは、岩屋氏に対する中国の積極的な対応を、高市政権を揺さぶる意図に基づくと解説した。すべてをそのような対抗図式でとらえるというのは、現実を見ていない発想である。対米依存、対中敵視という思考停止を、今こそ脱却して、日本の生きる道を自分で考えることが、政治家にもメディアにも求められている。
山口二郎|法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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