中国のZ世代はなぜ毛沢東と「反清」を夢見るのか

投稿者: | 2026年10月24日

 中国で文化大革命(文革)と毛沢東への郷愁が野火のように広がっている。

 昨年11月末、「映画について語ろう」(聊会電影吧)というアカウント名のブロガーが、動画プラットフォームのBiliBiliに映画「芳華」の解説動画を投稿した。この動画は、文革終結後、「高級幹部の子弟たちが完全勝利を収め、資源、政策、市場、時代の恩恵を独占した」とし、「文革が続いていれば、中国はより平等な道を歩んでいたはずだ」と訴えた。2017年に公開されたこの映画は、文革末期を舞台に、軍の宣伝部隊に所属する若い芸術家たちの悲恋と人生を通じて文革の狂気を批判した作品だ。ところが、動画ではそれを正反対に解釈し、文革を理想化した。ネットユーザーらは「人民万歳」などのコメントを寄せて熱狂し、動画の再生回数はわずか数日で3500万回を突破した。検閲当局は直ちに動画を削除した。

 人工知能(AI)やロボット、電気自動車、半導体など、先端技術の大躍進をたたえる勝利の歌が鳴り響く中国で、数多くのZ世代(1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代)の若者たちが文革と毛沢東に熱狂するという奇妙な現象が続いている。若者たちが愛用するアプリ「小紅書」で「毛沢東選集」(毛選)を検索すると、毛沢東の著作や演説を読む読書会や、「最も感銘を受けた一節」が次々と上がってくる。清華大学図書館の貸出図書ランキング1位は、2019年以降ずっと「毛沢東選集」だ。毛沢東の死去から50年となる今年9月9日前後には、毛沢東の故郷である湖南省韶山に大勢の人々が押し寄せた。

 多くの若者は毛沢東を「先生」と呼び、崇拝している。毛沢東語録を、日常で直面する困難を乗り越えるための教訓として引用する人は多いが、とりわけ「階級闘争」に関する一節が人気を集めている。「誰がわれわれの敵で、誰がわれわれの友なのか。この問題は革命における最も重要な問題である」「米帝国主義とすべての反動派は張り子の虎だ」といった毛沢東語録を共有し、資本家を敵に挙げる。「官僚と資本が高度に結託している」と、政府に矛先を向けることもある。

 今年、約1270万人の大学卒業者が労働市場に参入する中国で、公表されているの若年失業率は18%に達し、就職した人々も長時間労働や「内巻」と呼ばれる不条理で過度な競争、貧富の格差に不満を訴えている。プラットフォームに依存してデリバリーや配車サービスの運転手などとして働く不安定雇用の労働者が、全労働者の44%にあたる3億2000万人に上るという統計(首都経済貿易大学・新就業形態研究センター)もある。

 こうした状況の中、中国のZ世代は文革を、誰もが平等で、食べるものや仕事に困らなかった時代として作り変え、現在の不平等や就職難への不満を表明している。多くの人々が命を落とし、家族同士が互いを告発し合い、人生が破壊された文革の混乱と暴力を消し去った「作られた過去」だ。

 最近、中国のインターネット上では、「皇漢」や「1644史観」などと呼ばれる、漢民族の優越主義に傾いた反清の歴史観も影響力を増している。1644年から中国を統治した満州族の清朝を「異民族による植民地支配」と位置づけ、近代中国が西洋や日本に侵略され「屈辱の100年」を経ることになったのは、満州族が支配したためだとする。7月に映画「澎湖海戦」の公開が突然中止されたのも、こうした「皇漢」勢力の反発が原因とされる。1683年、台湾を拠点に清朝に抵抗していた鄭成功の勢力を清軍が征討した歴史を描くこの映画は、「台湾統一の勢いは止められない」という共産党の宣伝メッセージを盛り込んでいた。しかし皇漢勢力は、満州族が漢民族を征服した歴史を美化する映画だとして、激しく反発した。

 高まる漢民族優越主義は、強烈な愛国主義と結びつき、疑似歴史学である「西洋偽史論」をインターネット上に広めてもいる。古代ギリシャ・ローマなどの西洋文明や、近現代の西洋人による自然科学・技術の発展は、すべて中国のものを盗用したものであり、西洋近代科学は明代の「永楽大典」を模倣した、といった主張だ。

 こうした現象は、習近平時代の中国共産党と国家が強調してきたイデオロギーが、奇妙にねじれた形で変奏されたものでもある。中国共産党は2021年、「第3の歴史決議」を通じて、文革における毛沢東の役割を含め、過去の党の過ちに対する批判を「歴史虚無主義」と規定し、処罰の対象とした。文革への反省や省察は、公に禁じられた。中国当局は米中覇権競争のさなか、「米国は張り子の虎だ」「米国に対して持久戦を展開すれば勝利できる」という毛沢東の教えを大々的に宣伝してきた。現実に不満を抱く中国の若者たちは、毛沢東の言葉を引用して腐敗や不平等を批判するとともに、文革に対する党の公式見解にも挑戦しているが、党当局としてはこうした動きを処罰・対応するのは難しい。

 皇漢の漢民族優越主義も、中国当局が「中華民族」の団結を強調する一方で、少数民族の歴史や文化を抑圧している流れと結びついている。西洋文明が中国文明を模倣したとする「西洋偽史論」は、当局が「中華民族の偉大な復興」を掲げ、米国との競争に勝利していると強調することと表裏一体だ。トランプ時代の米国を揺るがす「MAGA(米国を再び偉大に)」勢力において、不平等や機会喪失への怒りが国の偉大さや移民排斥、フェイクニュースへの熱狂へとつながっていることを思い起こさせる。

 中国の若者たちが現実への不満を公然と表明し、議論するための公共の場が失われていることも影響している。13年前に時計の針を戻し、習近平が最高指導者となった当時の中国では、さまざまな思想や改革を目指す動きが競い合っていた。2013年1月3日、中国を代表するリベラル系メディアだった「南方週末」は、新年の社説として「中国の夢、憲政の夢」を準備した。「中国人が過去100年以上にわたり、絶え間なく追い求めてきたのは『憲政の夢』だった。…権力が恣意的に振るわれず、すべての公民(市民)が法の下で自らの権利と尊厳を守れるようになって初めて、真の国家の富強と社会の安定が実現する」

 当時、習近平主席は中華民族の偉大な復興を強調する「中国の夢」を掲げたが、社会の底辺では、普通の人々がより多くの権利を享受し、自ら変化を生み出そうとする動きも活発化していた。しかし、南方週末の新年の社説は結局、検閲によって掲載されなかった。中国社会は党の厳しい統制の中へと引き込まれていった。人権派弁護士、労働運動家、学生運動家、女性運動家、リベラル派の学者、独立系ジャーナリストらの活動は厳しく封じられた。普通の人々が自ら組織をつくり、問題を提起し、解決するための公式な道筋は、すべて閉ざされた。

 こうした現実の中、中国の若者たちが、党の掲げる毛沢東思想や中華民族の偉大さ、米国に対する勝利のスローガンを変形させた異端的な思想を通じて不満や怒りを表明したり、少数民族を攻撃したり、異端的な歴史観に逃避したりすることは、当局にとっても厄介な現象だ。

 歴史学者で上海・華東師範大学の許紀霖教授は、「躺平(タンピン、「寝そべり主義」)と1990年代生まれ世代の文化」と題した論考で、中国の若者たちのこうした感情を「ルサンチマン(怨恨)」の蓄積と解釈し、「怨恨に満ちた『非組織的な力』は、拒みがたい巨大な破壊力を持っている」と警告している。「この怨恨の標的は、第一に資本、第二にエリート、第三に絶えず競争することを強いる能力主義体制そのものだ。社会的な落伍者の集団の内部では、富裕層やエリートへの敵意がオンライン空間に広がっている」

 積み重なる中国の若者たちの不満は、中国の未来にどのような影響を及ぼすだろうか。中国政治の研究者で、『習近平研究』を著した大東文化大学の鈴木隆教授は、筆者のインタビューに対し、中国の安定性を考えるには「繁栄」「利便性」「偉大さ」の3つの側面を総合的に見る必要があると語った。「繁栄という点では、不動産市場の低迷、若者の雇用不安、経済成長の鈍化による不満が確かに存在する。一方で、AIやロボットなどの先端技術を日常生活に急速に導入しているため、技術がもたらす利便性に対する人々の満足度や期待は高い。偉大さという点でも、先端技術と経済大国・中国のイメージが、国民の自尊心を継続的に強めている」。鈴木教授は「これらを総合すると、現在の習近平政権に対する中国人の姿勢は、一方的な支持でも敵対でもなく、『パッチワーク』のようなものだ」と述べた。「大衆の不満は体制を揺るがすほど強くないため、今後も『幸福感を欠いた発展』が続くだろう。しかし社会の底流では、諦めや引きこもり、ときには無差別暴力となって噴き出す復讐心など、否定的な感情が蓄積し続けている」。こうした状況で、AIの全面的な導入によって雇用不安がさらに深刻化した場合、配達労働者をはじめとする低所得の都市労働者の動きが重要な変数になると、鈴木教授は見通しを示した。

 先端技術が目覚ましい発展を遂げる一方、中国の若者たちの将来への不安と怒りは、溶岩のように煮えたぎっている。これは、不平等が深刻化する韓国や米国にとっても聞き慣れない警告ではない。欧州の街頭では、すでにその溶岩が激しく噴き出している。

2026/10/21 08:08
https://japan.hani.co.kr/arti/international/cn_tw/57480.html

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