自由貿易と国際秩序を根幹とする伝統的な西側リーダーシップが「ニューストロングマン時代」を控えて揺らいでいる。長い自由主義の流れの中で多様性を標ぼうして象徴的政策に集中してきたが、実際、景気沈滞や治安の不安定など内政が揺れながらリーダーシップ自体が弱まった結果だ。これ以上ストロングマンが幅を利かす反自由主義的な波を牽制するのは難しいという評価が出るほどだ。
◆ふらつくフランス・ドイツ
西側民主陣営を代表してきた主要7カ国(G7)のうち欧州リーダー国の状況が特に深刻だ。トランプ次期米大統領と親しいイタリアのメローニ首相を抜いて政権がすべて不安定な状況にある。
世界3大経済圏であり民主主義の歴史の教科書のような欧州連合(EU)のリーダー、フランスとドイツの状況を見ても風前の灯火だ。
マクロン仏大統領は昨年7月の総選挙で極右に分類される国民連合(RN)を牽制するため極左が主導する新人民戦線(NFP)と手を握った。中道派が右派より左派と連合するフランス政治の伝統に基づくものだが、現実は厳しかった。
第1党となったNFPはマクロン大統領とパワーゲームをし、完全に反対側のRNの手を握ってバルニエ内閣を崩壊させた。表面上ではバルニエ内閣の増税および緊縮予算処理の動きを問題にしたが、本当の目標はマクロン大統領が擁立した内閣を倒すことだった。第1党として首相指名権を行使するということだ。NFPはマクロン大統領の下野も要求している。
ドイツもショルツ首相に対する連邦議会の不信任で総選挙を来月に控えている。ドイツの連立政権も表面的にはフランスと同じく予算問題で崩壊した。中道左派の社会民主党(SPD)出身のショルツ首相は拡張財政政策を進めたが、健全財政を主張した連立政権のパートナー自由民主党(FDP)と摩擦が生じたのだ。
フランス、ドイツともに不信任の過程で右派が積極的な姿を見せた。フランスでは左派NFPが反マクロン路線を見せると、カギを握っていた右派RNが加勢し、ドイツでは右派のキリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟(CSU)連合が社民党の連立提案を拒否して内閣の崩壊に向かった。
これについては西側の中道左派的自由主義が標ぼうした大規模な移民受け入れ政策に対する支持が衰退し、景気停滞が重なったためという分析が出ている。実際、フランス総選挙の1次投票では反移民を前面に出したRNが1位になるほど支持が高まった。
ドイツの場合、社民党が大麻合法化、性別自己決定法など社会改造水準の政策を強行し、労働者・低所得層・女性団体などの反感を招いた点も作用した。
高麗大のイ・ジェスン教授は「欧州では極左と極右の極端主義が目立つが、特に極右派の浮上が目につく」とし「ウクライナ支援に対する疲労感累積などの要因もあるが、移民者流入による治安悪化および社会・経済的費用負担など国内的な問題がさらに大きな影響を及ぼしたとみられる」と話した。
◆「文化多様性」前面に出して政権崩壊
大西洋を挟むカナダも同じだ。
支持率の急落に苦しむトルドー首相は6日、辞意を明らかにした。トルドー首相は「文化的社会主義」という非難を受けるほど多様性政策を推進し、支持層からは人気だった。
しかし年100万人を超える移民を受け入れた結果、物価と住居費が急騰して世論が悪化し、政権崩壊につながった。さらにはトランプ次期大統領から「カナダ人は米国の51番目の州になることを好む」という嘲弄まで聞いたが、カナダ内部の政治リーダーシップ問題のためまともに抗議もできないのが実情だ。
英国のスターマー首相と日本の石破茂首相はリーダーシップに問題があるという指摘が出ている。英政界ではスターマー首相について「無駄に詳細な管理しようとする(micromanaging)」、「意思決定があまりにも遅い」という酷評が続いている。日本は主要決定を自民党ナンバー2の森山裕幹事長が出すなど「石破首相スルー」が表れている。
G7主要国の政権が一斉に揺れる現象が生じている。フィナンシャルタイムズ(FT)は「政治的中道派の衰退とポピュリズムの登場、高齢化と金融危機などによる財政的圧力でG7で安定した政権を維持するのが難しくなった」とその原因を指摘した。
それでもイタリアのメローニ首相は唯一、影響力が確実な指導者に挙げられる。2022年の就任前に8%台だったイタリアの失業率を5%台に引き下げるなど顕著な成果を土台に国内基盤を確実にしたのが影響を及ぼしたという分析が出ている。G7のリーダーのうち唯一トランプ氏と親しいメローニ首相が欧州の報道官の役割をするという期待も高まっている。
伊ルイス大のオルシナ政治学科教授はCNNのインタビューで「ドイツに新政権ができる前、そしてフランスの現状態が続けば、イタリアは安定した政権を持つ唯一の国家としてトランプ政権に対して一種の独占権を持つことになるだろう」と予想した。
2025/01/15 15:13
https://japanese.joins.com/JArticle/328679