【ファクトチェック】原発は広島級の核爆弾落ちても安全だって?

投稿者: | 2025年5月20日

 「長崎と広島に落ちた原子爆弾が落ちても(原発に)破壊や故障なし」(国民の力のキム・ムンス候補。19日のテレビ討論会で)

 「極限災害と航空機の衝突に備えている…それ以上はない」(原子力安全委員会の関係者)

自然災害と航空機の衝突以外に要求基準なし

 今月18日に行われた第21代大統領選の候補者による1回目のテレビ討論会で、与党「国民の力」のキム・ムンス候補は「原子力発電所に行って、原子力安全研究所に行って点検してみたが、長崎と広島に落ちた小型原子爆弾が落ちた程度では、原子炉反応をする部分が破壊されたり、原子力そのものが故障したりすることはない」と述べた。キム候補の発言は、「原発は基本的に危険だから再生エネルギー中心の社会へと転換していかなければならない」と主張する共に民主党のイ・ジェミョン候補を攻撃する過程で飛び出した。

 国際原子力機関(IAEA)や韓国の原子力安全委員会(原安委)を含め、世界のどこにも核兵器による攻撃に耐えられるほどの原発を建設することを求めている基準はない。概して「極限状況に備えなければならない」程度の抽象的な基準を提示しているに過ぎない。韓国の「原子炉施設等の技術基準に関する規則」は、「(地震、台風、洪水、津波などの)自然現象の影響と、航空機の衝突、爆発などを含む予想可能な外部の人為的事件の影響によって損傷することのないよう」設計せよと明示している。

 この「外的要因」に自然災害ではない「航空機の衝突」が加わったのは、2001年に米国で発生した9・11テロの影響だ。事故後、米国の原子力規制委員会(NRC)は航空機の衝突に耐えられるようにするため原発の設計基準を強化したが、韓国もその影響を受けたのだ。原安委の関係者は「極限災害と航空機の衝突に備えることを要求しており、それ以上の要求基準はない」とハンギョレに語った。キム候補が述べた長崎・広島原爆の衝撃の大きさは、航空機の衝突の衝撃をはるかに超える。9・11テロでワールドトレードセンターに加わった爆発のエネルギーは1千億ジュール(J)ほど。これは広島型原爆の威力の2%ほどだとする分析が過去に発表されている。

「戦争やテロに備えることを要求すれば原発の存立は不可能」

 キム候補の発言にある「原子力安全研究所」は民間団体で、キム候補は国家機関である「原子力安全研究院」のことを言おうとしたとみられる。原子力安全研究所のハン・ビョンソプ所長はハンギョレに、「9・11テロの影響で(安全基準に)反映されたのは『航空機の衝突』程度だが、それにとどまらず戦争やテロに備えることを要求すると、危険性が果てしなく膨らむため原発そのものが存立できなくなる」と語った。航空機の衝突などは「最低線を設定した」に過ぎず、軍事的脅威に対しては安全基準を設定すること自体が事実上不可能だということだ。

 実際に、NRCは規定集で「原発の運用者には、米国の敵から加えられる攻撃や破壊行為などから保護するための設計・措置を求めない」と述べている。ハン所長は「よく『ボーイング747が、燃料タンクが空の常態で格納建屋にぶつかっても耐えられる』などと言われるが、燃料が満タンだとその脅威ははるかに大きくなる。ミサイル攻撃にも耐えられないのに、核兵器に耐えるなどというのはとんでもない」と述べた。

 韓国は、現在法令で定められている安全基準がすべての原発に適用されてすらいない。現行の原子力安全法は原子力発電所の運用者に、原安委の定める設計基準を超える原子炉の炉心の著しい損傷をもたらす「重大事故」を管理すること、その計画を提出することを求めているが、これは日本で福島第一原発事故が起きて4年もたった2015年にようやく法制化されたもの。福島第一原発事故は水素爆発、浸水などを伴う炉心溶融がどれほど大きな災害を引き起こすかを示した。だが、韓国の法令には長い間、それについての管理規定そのものがなかったのだ。ハン所長は「韓国の原発はそもそも、重大事故は起きないという前提で設計されている」と述べた。そのせいで「現在、稼働を延長しようとしている原発は、重大事故対策がないたいめ承認を受けられずにいる。そういったことすら起きている」ともハン所長は指摘した。

2025/05/19 17:55
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/53241.html

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