【コラム】「韓国は交渉カードが多い」(2)

投稿者: | 2025年5月25日

最近米国のビッグテック企業が東南アジアに数十億ドル規模で投資したのに比べ、韓国に対する投資の知らせは聞こえてこない。マイクロソフト、アルファベット、アマゾンの3社が今年の投資額だけでも2600億ドル、韓国全体の研究開発予算の10倍を超える天文学的規模だ。規模の経済で韓国は対抗できない。韓国のAIがキャッチアップできる案は米国のビッグテック企業の韓国投資とデータセンター設立などを誘導し、米国のAIエコシステムと協力して韓国が得意な隙間分野を探してアジアのAIテックハブ化することだ。

このためには韓米間デジタル分野のハイウェーが必要だ。韓米自由貿易協定(FTA)の電子商取引分野はスマートフォンが普及する前に作られた後れた協定だ。日本は第1次トランプ政権当時に米日で高い水準のデジタル協定を結んだ。韓国も米国に韓米デジタル協定締結、あるいは米日デジタル協定に加入することにより韓米日デジタル市場を統合することを考慮する必要がある。韓国の内需市場は小さいが韓国のスタートアップが米日市場に進出して成功することになればほぼ20倍規模の大当たりを引き当てられる。

 このように新政権が大きなビジョンを新しく描いて交渉するためには新政権発足後に米国に新たなイシューを提起する可能性をいまから開けておかなければならない。いまは対米協議よりは国内準備に、新政権への交渉バトンタッチが円滑になるようにすることが望ましい。

より時間に追われているのは米国だ。最近ムーディーズは米国の格付けを引き下げ、トランプ大統領の最も重要な公約である減税案は議会で難航している。不況の可能性に対する市場の懸念がいまなお残り、主要国と名実ともに「ディール」が可能なのか市場が神経を尖らせている状況だ。

したがって新政権は追われる必要なく両国間でウィンウィンとなるディールをまとめるという建設的目標の下で堂々と交渉に臨む必要がある。韓国の特殊状況は米国側も十分に理解が可能だろう。米国の状況が一寸先を見通すこともできない不確実性が大きいため7月初めの米国市場と政治状況をいま予断する必要はない。日本が先に妥結すると仮定した場合、日本の交渉結果も参照する必要がある。

最近世界的投資家が徐々に韓国市場に再び注目している。新政権が発足して韓国の政治的・経済的不確実性が晴れ、韓国経済が底を打って上がることを期待するためだ。今回の韓米交渉を「韓国が帰ってきた」ということを国際社会に広く知らしめる機会として積極的に活用しなければならないだろう。

呂翰九(ヨ・ハング)/米ピーターソン経済研究所選任委員、元韓国通商交渉本部長

2025/05/25 10:22
https://japanese.joins.com/JArticle/334152

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