米国が課す相互関税を1週間後に控えて韓米の「2プラス2通商協議」が延期され、韓国は崖っぷちに立つことになった。トランプ米大統領は圧力を強めた。韓国を含む交渉対象国に向けて日本のように「投資して関税を低めるべき」とし、市場の開放も強調した。韓米交渉の突破口を開くためには、農産物市場の開放などトランプ大統領が掲げるほどの確実な「トロフィー(名分)」を提示するしかないという分析が出ている。
トランプ大統領は24日(現地時間)、ワシントンの連邦準備制度理事会(FRB)本部を訪問し「(日本のように)金を出して関税を低めること(buy it down)を許容する」とし「経済(市場)開放は日本が出す5500億ドル(約81兆円)より価値がある」と話した。トランプ大統領のこの日の発言は異常な気流が流れている韓米関税交渉にもそのまま適用される。1000億ドル程度で議論している韓国の対米投資をさらに拡大し、農畜産物など市場開放レベルを高めるべきという圧力だ。
日本をはじめ、米国との関税交渉で早期に合意した英国・ベトナム・インドネシア・フィリピンなどは農畜産物を含む市場開放を交渉リストに入れた。まだ交渉妥結前のオーストラリアも牛肉市場を先に開放した。トランプ大統領はこの日、ソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」にオーストラリアと交渉について伝え、「我々の立派な牛肉を拒否する他国も(開放)要求を受けた状態」とし「(拒否する)国々を今後を見ていく」と投稿した。ある外交筋は「実際の交渉テーブルで農畜産物をどのようにどれほど輸入するのか正確な数値を提示するべきとの要求もあった」と伝えた。
政府内外ではコメ・牛肉市場に対して韓国政府が保守的な立場を見せたことに米国側が不満を表示し、「2プラス2通商協議」を突然延期したのではという解釈も出ている。別の経済・通商専門家は「事実上、農畜産物市場の開放はトランプ大統領の関税戦争の成果を広報する戦利品のように使われている」と説明した。
こうした中、韓国大統領室は25日午後、緊急通商対策会議を開き、初めて農産物市場拡大開放の可能性に言及した。金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長はこの日、竜山(ヨンサン)大統領室で開いたブリーフィングで「交渉品目に農産物も含まれている」と話した。ただ、交渉テーブルに載せられた農産物品目が何であるかは具体的に言及しなかった。また、この日のブリーフィング後、「畜産物を含む」かどうかについて中央日報の記者が問い合わせしたが、金室長は答えなかった。
一方、トランプ大統領は25日午前(現地時間)、ホワイトハウスで記者らに対し「多くの関税交渉は来月1日までに終わらせる」とし「我々は韓国ともうまくやった。我々が多くのリスペクトを受けたと考える」と話した。
韓国政府はひとまずコメの輸入拡大と30カ月齢以上の米国産牛肉輸入を「レッドライン」(限界線)としている。農畜産物市場の追加開放は国内の農家はもちろん政界でも激しい反発を招きかねないからだ。しかし米国の圧力が強まっているため市場の一部開放は避けられないという見方も出ている。
一部では市場を開放しても米国産は懸念されるほど入ってこないという分析も出ている。すでに交渉を終えた日本も米国産のコメと自動車の輸入を拡大することにしたが、実際、日本経済に及ぼす影響は少ないとみている。コメの場合、輸入総量(年間77万トン)はそのまま維持し、米国産の比率だけを増やすことにしたからだ。昨年基準で日本の米国産米輸入比率は約45%(35万トン)だったが、今回の合意で比率は78%(60トン)に上がる。
最近の米国産米取引価格(1トンあたり353ドル)で単純計算すると、日本の米国産米輸入額は9550万ドル(約140億円)から1億6376万ドルに増える。市場開放効果は年間100億円程度ということだ。自動車・トラック市場も同じだ。昨年基準で米国から日本に輸入された乗用車は1万6000台水準にすぎない。従来の販売台数があまりにも少ないため、日本国内の自動車産業全般に及ぼす影響は実際には少ないというのが大半の意見だ。
日本が昨年米国に輸出した自動車は140万台にのぼる。西江大のホ・ユン国際大学院教授は「日本が国民経済に及ぼす影響が大きくない市場を開放し、トランプ大統領が誇示できる5500億ドル投資案を提示し、交渉で比較的善戦したとみられる」とし「韓国も国民経済に及ぼす影響を綿密に分析し、トランプ大統領が成果を広報できる提案をするべきだ」と述べた。
対米投資規模をめぐる韓米間の隔たりも大きい。韓国政府は米国との交渉でサムスン・SK・現代車・LGの4大グループを中心に1000億ドル以上の米国内投資計画を提示することを検討中だ。防衛産業や造船業など韓米両国が協力できる製造業ファンドを設立する案も交渉テーブルに載せられた。米国内のインフラ建設事業、先端装備とエネルギー購買拡大などが対米投資に含まれるとみられる。しかし米国側は4000億ドル以上の投資の約束を要求している。4大グループのある役員は「これまで可能な限り絞り出したが、さらに増やせというのは難しい」とし「米国への投資が増えれば、結局は国内への投資余力が減るしかない」と懸念を表した。
一方、「2プラス2協議」が延期された中でも、金正官(キム・ジョングァン)産業通商資源部長官と呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長はこの日、ワシントンでラトニック米商務長官に会って交渉を続けた。この日の韓米産業長官会談は80分間ほど行われたが、可視的な成果はまだ出ていない。大統領室も25日午後、姜勲植(カン・フンシク)大統領秘書室長の主宰で緊急通商対策会議を開き、対応戦略について議論した。金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長は会議の後、「ラトニック長官の場合、ニューヨークの個人の私邸で会うことになっている」とし「可能な範囲で最大限の交渉をする」と伝えた。
2025/07/26 09:56
https://japanese.joins.com/JArticle/336764