【時論】「トランプラウンド」が韓国の通商に投げかけた課題

投稿者: | 2025年8月18日

ブレトンウッズ体制は1944年7月に米ニューハンプシャー州ブレトンウッズで開催された「連合国通貨金融会議」’で発足した。この体制から1947年の「関税および貿易に関する一般協定(GATT)」、1995年の世界貿易機関(WTO)の開始まで国際貿易の規範と秩序の再編を主導したのは米国だった。米国は関税・非関税障壁を取り払うだけでなく、新しい貿易議題を規範に含めて国際貿易の秩序の骨組みを構築した設計者だった。ところがこうした米国の通商代表部(USTR)代表の口から「WTOが支配する現在の名もない世界秩序は持続可能でない」という宣言が出てきたのはアイロニーだ。

トランプ政権2期目に入って200日間、米国は過去30年間のWTO体制よりも多くの海外市場開放を成し遂げたと自賛し、「ターンベリーシステム」を前面に出してWTO時代の終焉を宣言した。ところがWTOに別れを告げた米国が、先月妥結したインドネシアとの貿易合意共同声明ではWTO協定の履行を叫んだ。新しい秩序を主張しながらも必要なら過去の枠組みを引き出して使用する姿こそがニューノーマルの現実だ。

 こうした激変の中で韓米関税交渉の妥結後、米国との後続の追加合意を準備する韓国政府はいくつかの課題を点検する時だ。下半期の輸出戦線は数字でも物量でも上半期の「トランプ関税爆弾」の余波をそのまま受ける見込みだ。こうした中で為替レートは非常に敏感な点に浮上するだろう。トランプ1期目の韓米自由貿易協定(FTA)再交渉当時も為替レート問題が議論されたように、追加交渉で米国がまた為替カードを取り出す可能性に対応しなければいけない。

2つ目の変数はデジタルサービス関連の貿易障壁だ。初期にトランプ大統領の視線は関税と商品貿易を向かったが、サービス貿易、特にデジタル部門は決して軽視できない分野だ。グリアUSTR代表は、過去40年間「国別貿易障壁外国貿易障壁報告書(NTE)報告書」を通じて米国企業が直面した各種貿易障壁を指摘してきたが、今はこうした貿易障壁を取り除くと同時に関税カードで米国を守ると公言している。

欧州連合(EU)との交渉ではデジタル分野のネット使用料廃止、インドネシアとは電子的伝送に対する無関税に合意した。しかし韓国にも廃止要求書がくる公算が大きいデジタル分野の非関税障壁の一部は、産業保護膜を取り除くと同時に飛躍の機会として作用する可能性がある。外部競争はさらに激しくなるだろうが、その圧力の中でさらに精巧な技術発展と革新を図るための思慮深い対応が必要だ。

シンガポールの次いで多くのFTAを締結した韓国は、FTA方式とはまた違う、初めて見る「合意形式」の罠に留意しなければいけない。米英貿易合意は法的拘束力がないという「一般条件(general terms)」形態で公開され、米国-インドネシア貿易合意は「共同声明」で、EUとの合意はホワイトハウス「ファクトシート」を通してのみ内容が把握される。トランプ大統領はこれからすべての協定を「市場開放、投資・購買約束履行」という条件付きで作り、遅い紛争解決手続きを持つWTOの代わりに自ら履行の有無を評価するという立場だ。この過程で何を履行違反と判断するのか、その結果をどのように適用するかが不透明だ。交渉をうまく終えたとしても履行過程中の予期せぬ問題を避けるためには、慣れない合意形式であるほど手続き的な明確性と評価の透明性を確保する必要がある。

日本が25%の関税を15%に引き下げながら最恵国待遇(MFN)関税を含むかどうかでもめた際、韓国は韓米FTAのおかげで相対的に無難に防御したという評価を受けた。しかしもう日本を競争相手としてのみ眺めることはできない。トランプ式の圧力と荒波を乗り越えるためにはむしろ他国との協力が生きる道だ。米国の圧力を受ける多くの国が協力と貿易多角化を模索することで、これまで進まなかった従来のFTA締結国とのアップグレード交渉にも新たな動力が生じるだろう。大韓民国が苦労して築いたFTAネットワークの強化と拡大をもう一度精密点検する時期だ。こうした意味で韓国の「包括的・漸進的環太平洋経済パートナー協定(CPTPP)」加入はこれ以上先延ばしできない、通商戦略の次のステップになるだろう。

イ・ジュヒョン/ソウル市立大法学専門大学院教授

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2025/08/18 16:06
https://japanese.joins.com/JArticle/337708

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