「失敗したら飛び込んで死のう」…ゼロから作った製鉄所、韓国製造業の心臓に(2)

投稿者: | 2025年10月20日

浦項第1期高炉は73年6月9日に初めて銑鉄を吹き出した。3年間に延べ810万人、そして京釜)高速道路建設費429億ウォンの3倍近い1136億ウォンを投じた結果だった。鋼鉄生産1トン当たりの製鉄所建設単価はほぼ同じ時期に作った日本や台湾の施設と比べ40%にしかならなかった。完工する前に船舶用鋼材である重厚板工場をまず稼動し、現代重工業が初めて海外から受注した超大型タンカーを成功裏に建造できるようにした。

浦項製鉄第2~3期工事の時は設備と技術導入先を欧州に多角化し、新技術を自分たちのものにした。続けて海上に建設した光陽(クァンヤン)製鉄所は最先端技術と設備で最短期間完工という記録を立て、「夢の製鉄所」と呼ばれることになった。

 80年代に浦項製鉄は輸入するより平均30%安く鉄鋼製品を韓国企業に供給し産業競争力を高めた(『浦項総合製鉄の国民経済寄与と企業文化研究』、ソウル大学社会科学研究所)。これだけではない。韓国政府は浦項製鉄所建設を通じて大規模資金調達とプロジェクト支援案に至るまでノウハウと自信を得た。建設過程で蓄積した経験はその後、石油化学、発電所、産業用プラント建設能力を高める基盤になったという分析もある。浦項総合製鉄所建設は韓国重化学工業全般のトリガーだったということだ。

ポスコは続けて、効率を上げ汚染物質は減らした「パイネックス工法」を世界で初めて適用し、鉄鋼技術史の新たなページを開くなど、随一の世界的鉄鋼企業の座に上がった。ポスコは2024年基準で生産規模は世界8位だが競争力は最高だ。世界的鉄鋼専門分析機関であるワールド・スチール・ダイナミクス(WSD)が選定する「世界で最も競争力がある鉄鋼企業」で2010年から15年連続1位を占めており、今年6月には世界的鉄鋼企業では初めてWSD名誉の殿堂に上がった。

◇小中高校にポステック設立し「教育報国」

「製鉄報国」とともにポスコが推進したものがもうひとつある。70年秋、ポスコに6000万ウォンが入ってきた。設備を導入する時に事故に備えて保険に入ったところ、保険会社からリベートが来たものだった。朴泰俊は朴正熙に報告した。返ってきた答は「好きなように使え」だった。その資金で朴泰俊は財団法人製鉄奨学会を作った。「教育報国」の第一歩だった。奨学財団を教育財団に変え、幼稚園と小中高校を建てた。そして86年に浦項工科大学(現ポステック)を設立することにより画竜点睛した。

ポスコは世界最高の競争力を持つ鉄鋼会社になったが、現実は容易でない。英国から始まり日本と韓国へと続いた鉄鋼産業の主導権をいまは中国が受け継ぐ態勢だ。すでに中国は世界の鉄鋼生産量の50%を占めている。東南アジアでも設備新設が続き世界的な供給過剰圧力が高い。鉄鋼主導権を取り戻そうとする保護貿易主義の波も激しい。米国に続き欧州連合も鉄鋼関税を50%に引き上げた。地球温暖化による炭素規制もまた、温室効果ガスを多く排出する鉄鋼産業には厳しい挑戦だ。

しかしこうした大転換は新たな機会の入口を開いたりもする。まずは鉄鋼と関連した前方・後方産業との協力を通じた革新が重要だ。例えばエネルギー分野で水素インフラを、造船では親環境アンモニア推進船を速やかに開発し、ここに必要な鋼材を韓国の鉄鋼会社が供給する形だ。こうすれば他の国で水素インフラなどを作る時も韓国の鋼材を使うことになるだろう。初めて検証された材料を使い続けるロックイン効果だ。

ポスコがパイネックスをベースに開発中の「ハイレックス」技術もまた注目の的だ。水素を利用して鉄鉱石から酸素を取り出す(還元)もので、温室効果ガス排出を画期的に減らす革新的な工程技術だ。70年代に海外資本と技術、設備導入に依存して出発したポスコがハイレックスを商用化して世界市場に技術を輸出することになるならば、それはもうひとつの神話を作るものではないだろうか。

2025/10/20 12:03
https://japanese.joins.com/JArticle/339983

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