日本の新首相の高市早苗氏は代表的な右派政治家に挙げられる。靖国神社を参拝し、帝国主義の侵略の歴史を否定してきた。明治維新後にアジアと太平洋に進軍した日本の威勢、敗亡後に一時は世界2位の経済大国として繁栄した時代の自負心が、今でも日本の強硬右派の意識を支配する。
高市氏は「女性安倍」と呼ばれる。彼女は「夢でも安倍晋三元首相を見る」と言って後継者を自負する。安倍氏が自虐史観から抜け出して自尊感を取り戻そうという「美しい国」を前面に出したとすれば、高市氏は「強い日本」を掲げた。活力を失った経済を回復させ、平和憲法を改正して自衛隊を実質的な軍隊に変えようとする。反撃能力を明文化した安保3文書をより一層強化し、原子力潜水艦保有の議論も避けない。
彼女の強硬右派本能は1994年の国会質疑で表れた。初当選議員だった彼女は「半世紀前の国家的政策決定を首相個人の判断で否定できるのか」とし、村山富市首相の「謝罪外交」を執拗に批判した。30分以上続いた彼女の質問には、日本の侵略と植民地支配に対する歴史的責任意識は全く見られなかった。
高市氏は2022年、「途中で参拝をやめるなど中途半端なことをするから相手がつけ上がる」と発言した。「つけ上がる」という表現には過去に周辺国の上に君臨した優越意識が込められている。こうした態度は日本の歴史教育不在に起因する。敗亡後、日本は侵略の歴史を隠して歪曲した。その結果、今の世代は日本が軍事力と経済力で全盛期を謳歌した1926~89年の昭和天皇時代の栄光としてのみ記憶する。1954年生まれの安倍氏と61年生まれの高市氏はその絶頂期にいた世代だ。
しかし高市氏が直面している現実は容易でない。日本の経済規模は来年インドに抜かれて世界5位に落ちる見通しだ。1人あたりの国民所得はすでに韓国に追い越された。国家負債は国内総生産(GDP)比で234%にのぼる。半導体など核心産業の主導権も韓国と台湾に移った。帝国の郷愁だけが残っていて、力は以前のようではない。
こうした背景から高市氏の「韓国ラブコール」は現実の圧迫の中で出てきた選択だ。彼女は就任の記者会見で「韓国のりは大好きで、韓国コスメも使っている。韓国ドラマも見ている」と述べた。文化には国境がないというが、強硬右派の口から出た意外な告白だった。中国の軍事膨張、北朝鮮の核の脅威、米国の関税爆弾など不確実性の中で日本は韓国に背を向けることができない。株価は急騰したが、円安と物価上昇で経済運用は容易でない。
高市氏は先月、トランプ米大統領に「日米の黄金時代を作り上げていきたい」と提案した。朝中ロの結束に対応するための必然的選択だ。韓国に対しても「重要な隣国であり、国際社会のさまざまな課題に対応するためにも必要なパートナー」と述べた。韓米日協力が揺らげば日本の安保戦略も動力を失うという現実的な認識がある。
首相就任の直前、彼女は靖国参拝を控え、その代わりに供物を奉納した。こうした変化は強硬右派の本能が弱まった結果でなく優れた現実適応力の表現だ。ニューヨークタイムズは彼女を「確実に規定するのが難しい人物」と評した。過去の独特な軌跡のためだ。親の反対にもかかわらず大学に進学し、アルバイトで学費を稼ぎ、ドラムを叩いてバイクに乗った彼女はキャスターとしても活躍した。松下政経塾を経て米国議会でインターンも経験した。世襲政治が根強い日本で首相挑戦3度目にガラスの天井を破った。
しかし現実政治の柔軟さが彼女の内心まで変えたのだろうか。韓国が経済と安保で揺らげば、高市氏の目線はまた「つけ上がる」に戻るだろう。歴史的に韓日協力は対等な力の均衡の上でのみ可能だった。それが冷酷な国際政治の現実だ。高市氏が「強い日本」を掲げるように、韓国も「強い韓国」にならなければいけない。
韓国はすでに低成長の底に深く入り込んでいる。成長率をまた3%以上に引き上げることができなければ韓国も日本のように「失われた30年」の道を歩むかしれない。それだけ軍事力と外交力の拡張も難しくなる。韓国の国力が強まってこそ日本の強硬右派も韓国を軽視できない。国力が以前ほどでない日本に韓国が必要であるように、韓国も強くなってこそ真の協力の主体になることができる。
「強い日本」を掲げる高市内閣の支持率は74%にのぼる。今は「強い韓国」をつくるというビジョンが韓国政治にも強く求められる。それが真の韓日協力の出発点だ。
キム・ドンホ/論説委員
2025/11/03 13:26
https://japanese.joins.com/JArticle/340535