ソウルを守るためニューヨークを犠牲にできるのか【パリ特派員コラム】

投稿者: | 2026年1月3日

 米国が先日公表した国家安全保障戦略(NSS)は最初から北朝鮮に言及せず、韓国と日本に対し「新たな能力」を保有するよう求めた。また米ワシントンでも「韓国の核武装容認論」が聞こえてきている。例えばナショナル・セキュリティー・ジャーナルのハリー・J・カジアニス会長は「北朝鮮がすでに保有している核兵器を同盟国である韓国はなぜ保有できないのか」と疑問を呈した。米国が東アジアで核兵器拡散を容認する場合、以前なら韓国ではなく日本を選択するとの見方が支配的だった。それが昨年10月に米国は韓国の原子力潜水艦建造を承認し、その上今回はさらに「新たな能力」を求めたのだ。

 1960年に世界で4番目に核実験に成功したフランスは現在欧州連合(EU)で唯一の核保有国だ。先日フランス戦略研究財団(FRS)のブルーノ・テルトレ副所長に取材を行った。テルトレ氏はフランスの核抑止戦略の権威だ。記者がテルトレ氏に「韓国が核武装する可能性はあるか」と質問したところ、テルトレ氏は「核兵器を保有すれば利益もあるが、代償も伴う」と答えた。そこには言葉に出てこない別の意味合いもあるようだった。ノーベル賞を2代にわたり5回受賞したキュリー家の人たちは原子力研究の過程で放射能に被ばくし命を失った。また1930年代から核分裂を研究してきたフランスの科学者たちはアングロサクソン系の米国、英国、カナダによる「マンハッタン計画」でもほぼ排除されるなどあからさまにけん制を受け続けた。

 これらに抗して独自の核開発を決断したフランスのドゴール大統領は米国に対し「パリを守るためにニューヨークを犠牲にできるか」と問いただした。国連はフランスの核開発に反対する決議まで採択したが、フランスは左右両陣営が結束してNATO(北大西洋条約機構)からの脱退という強硬手段をも辞さなかった。テルトレ氏は「韓国が核武装に言及するのは、米国に対し『安心させてほしい』と求めるシグナルだが、その韓国人に核開発に伴う国際社会からの制裁について説明すると誰もが驚く」と語る。要するに今の韓国の核開発を巡る議論には真実も覚悟もないということだ。今「ニューヨークと引き換えにはできないパリ」を守っているフランスの核兵器が「いかなる代償を払って開発されたか知っているのか」と問いただすかのようだった。

 核兵器を手にロシアや中国の首脳らと対等に渡り合う北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記はロシアのドローン工場に1万人を派遣するという。このような中で韓国と米国の核協議からは「北朝鮮の核」という言葉が消えた。韓国の左派陣営からは「北朝鮮を核保有国として認めて平和共存を」と求める声まで出始めた。「戦犯国」と非難されてきた日本からも「自分たちも核兵器を持つべきだ」と総理官邸の周辺から聞こえてきた。ある日北朝鮮が極超音速かつ多弾頭ミサイルで米本土と韓国を同時に狙う状況になれば、米国は何を選択するだろうか。ニューヨークどころか米本土の小さな集落の一つでもソウルと引き換えにするだろうか。

 「われわれは世界を支えるアトラスではない」と米国はすでに本音を語ったが、韓国の政治家たちに「ニューヨークと引き換えにできないソウル」を守る覚悟と決意ができているか疑問だ。

パリ=ウォン・ソンウ特派員

2026/01/03 07:00
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/12/27/2025122780009.html

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