韓国保守野党国民の力、引き算政治の結末は「ユン・アゲイン党」

投稿者: | 2026年1月19日

 先週は大きなニュースが相次ぎました。李在明(イ・ジェミョン)大統領と日本の高市首相の首脳会談が行われました。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の内乱首謀容疑の裁判で死刑が求刑されました。逮捕妨害容疑の一審で懲役5年が言い渡されました。民主党のハン・ビョンド院内代表の選出、キム・ビョンギ前院内代表の除名、イ・ヘフン企画予算処長官候補をめぐる波紋など、与党発の悪材料も多かったのですが、ニュース自身も名刺を差し出せないほどでした。

 これらすべてのニュースをつまらないものにしてしまった特大のニュースがありました。国民の力中央倫理委員会が14日未明、ハン・ドンフン前代表の除名を決めたというニュースでした。民主党のイ・ギホン議員が14日朝に、フェイスブックにこんな投稿をしています。

 「夜遅くに尹錫悦の死刑求刑を聞いてふとんに入ったが、朝起きてみたらハン・ドンフンの政治生命が終わっていた」

 私もびっくりしました。ハン・ドンフン前代表の除名はある程度予測されていました。しかし尹錫悦前大統領の死刑求刑の直後に、それも真夜中に突如決めて発表するとはまったく予想していませんでした。ユン・ミヌ中央倫理委員長が尹錫悦前大統領の死刑求刑という国民の力にとっての悪材料を薄めるために除名決定を急いだのではないか、という強い疑念を抱かせます。

 メディアもかなり驚いたようです。すべての新聞が一斉にハン・ドンフン前代表の除名を批判する社説を載せました。一部だけご紹介します。

 「深夜にハン・ドンフン前代表の除名決議、さらに墜落する国民の力」(文化日報)

 「ハン・ドンフン深夜の除名」…国民の力『引き算政治』弁解の余地なし」(ソウル新聞)

 「国民の力のハン・ドンフン除名、納得難しい自傷・引き算政治だ」(世界日報)

 「深夜に『テロ』『マフィア』だとしてハン・ドンフン除名、正常ではない」(朝鮮日報)

 「ハン・ドンフン除名事態であらわになった保守野党の引き算政治」(中央日報)

 政党内部の事案について、このようにすべての新聞が一斉に社説で批判するケースを、私はほとんど見たことがありません。メディアは今回の事態を国民の力の危機ではなく保守勢力全体の危機、大韓民国の民主主義の危機と認識しているようです。

 メディアの強い批判におびえたのでしょうか。チャン・ドンヒョク代表は15日、ハン・ドンフン前代表の除名案の採決を保留し、突如としてハンストをはじめました。民主党の推進する「第2次総合特検」の不当性を訴える、というのがハンストの大義名分でした。しかし実は、ハン・ドンフン前代表の除名に集中する視線を外に向けるのが目的のようです。ペ・ヒョンジン議員は17日、「懲戒撤回という正解を避けるために、党内の同意も集められないで始めた1人ハンストは、李在明と民主党の嘲笑を買うだけだ。我が党の家長が飢え死にしたところで得るものは何もない」と述べ、ハンストの中止を求めました。

 1月16日付けの朝鮮日報は「国民の力の新党名どうしようと本質は『ユン・アゲイン党』ではないのか」と題する社説を載せています。タイトルが強烈すぎて、内容を読んだのはどの新聞なのか確認し直してからでした。

 「今、チャン代表は、尹錫悦前大統領側の人々に取り囲まれている。尹前大統領の弾劾に反対した人物を指名職の最高委員に据えるとともに、戒厳を『果川(クァチョン)上陸作戦』だとして擁護した最高委員に党のコミュニケーション委員長を任せた。尹前大統領の演説文担当秘書官は党のメッセージ室長に、『12月3日、私たちは目覚めた』と主張した人物はメディア報道官に起用した。ハン前代表を懲戒した党倫理委員長は、『ケッタル(改革の娘の略語で、李在明を熱烈に支持する女性のこと)の李在明愛はキム・ゴンヒ女史に対する嫉妬と連動している』と主張した人物だ。チャン代表は『ユン・アゲイン』を主張するユーチューバーたちにとらわれている、とも言われている。

 代表の周囲を見ると、同党は国民の力ではなく『ユン・アゲイン』の会のように見える。国民の力は新たな党名を募集するという。党名をどう変えようと、その本質は『ユン・アゲイン党』であろう。この本質を国民が知らないと考えているのなら、それは誤算だ」

 どうでしょう。私は、朝鮮日報の社説は100%正しいと思います。朝鮮日報は17日付けで「野党第一党の没落と変質はハン・ドンフンの責任も大きい」と題する社説を掲載しましたが、チャン・ドンヒョク代表に対しての方がはるかに批判的なのは確実です。

 ですが、チャン・ドンヒョク代表は一体なぜこのようなことをしたのでしょうか。私は先週の政治舞台裏で、国民の力の重鎮議員の言葉を引用して「ユン・アゲイン強硬支持層という虎の背に乗って降りられずにいる恐怖感が、チャン・ドンヒョク代表をとらえている」と分析しました。国民の力の強硬支持層は新聞を読まず、極右ユーチューバーの生産するフェイクニュースの中毒になっているため、中道への拡張という、保守政党が選挙で勝利するための公式を無視していると分析しました。

 ある国民の力の支持者から、私の記事に抗議する電子メールが送られてきました。表現が少し激しくて乱暴ですが、まとめるとおおかた次のような内容です。

 「ファン・ギョアン代表時代、朝中東(朝鮮日報、中央日報、東亜日報の保守3紙)は中道への目配りを主張した。それに屈服して正しい未来党を全員受け入れた。選挙で惨敗した。ハン・ドンフン非常対策委員長時代には、中道を取ると言って民主党から追い出された議員を大勢迎え入れた。これに反発した支持者が投票場に来なかったため、またも惨敗した」

 「裏切り者は放逐すべきだ。左派人士は迎え入れるべきではない。民主党が純血の親明(親李在明派)に変わったように、国民の力も変わらなければならない。中道を気取って烏合(うごう)の衆を受け入れてはならない。チャン・ドンヒョク代表がたとえ地方選挙で負けたとしても、我々が改めて代表にするだろう」

 いかがでしょう。私はこの方の文章によって、国民の力の強硬支持層がなぜハン・ドンフン前代表をあんなにも嫌い、疑うことなくチャン・ドンヒョク代表を支持するのかが、以前よりもはっきりと理解できました。

 極右ユーチューバーのコ・ソングク氏が近ごろ「機会主義者たち、ハン・ドンフンの次はオ・セフン」と主張しつつ、ソウル市のオ・セフン市長を国民の力から追い出すべきだと言っています。コ・ソングク氏の主張は、国民の力の強硬支持層の感情を正確に代弁するものです。

 国民の力の強硬支持者の中には「ソウル市長選はナ・ギョンウォンが出馬すべきだ。オ・セフンはだめだ。オ・セフンとチョン・ウォノが争ったら、いっそのことチョン・ウォンオに入れる」という人が結構います。京畿道知事も「民主党に負けようともアン・チョルスはだめだ」とする主張が広がっています。「オ・セフン不可論」、「アン・チョルス不可論」です。

 不思議ですよね。国民の力の強硬支持層は、なぜ李在明大統領や民主党よりハン・ドンフン、オ・セフン、アン・チョルスを嫌うのでしょうか。なぜ非常識な思考と極端な感情に陥ってしまったのでしょうか。

 実は、人間は本来そういうものです。国民の力の強硬支持者は宇宙人ではありません。1つひとつみていきましょう。

 1つ目、憎悪です。憎悪は人間の最も原初的な感情です。人間は、自由意志を持った個人として存在したことはありません。部族と集団に属するのが人間です。他の部族には憎悪と恐怖を感じるのが人間の本性です。

 2つ目、嫉妬です。人間は、まったく別の側に属する人間に負けるのは耐えられても、同じ側のライバルに負けるのは耐え難いのです。他国や他民族との戦争より、同じ国や民族の中で繰り広げられる内戦の方が、はるかに残酷な理由はここにあります。

 3つ目、投影です。投影とは心理学で、自身の受け入れられない感情、考え、態度を他人に押し付けてしまう防衛機制を意味します。国民の力の強硬支持層は、自分たちの方がハン・ドンフンを嫌っておきながら、逆にハン・ドンフンが自分たちを嫌っていると思っているのです。

 このような人間の原初的本能である憎悪、嫉妬、投影から脱するためには、チャン・ドンヒョク代表をはじめとする国民の力の指導部がリーダーシップを取って説得し、強硬支持層に中道への拡張の必要性を理解させることが必要です。しかし、国民の力の指導部にそのようなリーダーシップを期待するのは難しそうです。彼らはリーダーではなく、強硬支持層の意にただ従っているだけのフォロワーたちだからです。

 いま国民の力で起こっている現象は、かつて民主党でも見られました。2022年の大統領選挙での敗北後、李在明候補を支持する強硬支持層は、敗北の責任をイ・ナギョン元首相と非李在明系の政治家に押し付けました。いわゆるスイカ論争です。スイカ論争は2024年の総選挙で「非明横死」公認問題(非李在明系が公認争いで相次いで敗れた事態。非業の死を意味する非命横死から)へとつながり、民主党に浅からぬ傷を残しました。

 国民の力の今回の引き算政治も、保守勢力と国民の力の内部で徐々に激化し、最終的に6・3地方選挙の公認問題へとつながる可能性が高いと思われます。頂点はソウル市長候補を選ぶ党内予備選挙になるでしょう。もし強硬支持層の希望どおりにナ・ギョンウォン議員がオ・セフン市長を抑えて本選に進んだとしたら、どうなるでしょうか。みなさんのご想像にお任せします。

 2024年の総選挙で民主党が公認をめぐって内部対立を起こしたにもかかわらず、尹錫悦大統領は「長ネギ価格」、「大使の逃走」などのさらに大きな事件を引き起こしたため、民主党に勝利を献上してしまいました。2026年の地方選挙では、李在明大統領が大きな事故を起こし、国民の力を助けてくれるでしょうか。そうなるとは思えません。

 まとめます。国民の力は文在寅(ムン・ジェイン)政権の検察総長だった尹錫悦検事を候補として迎え入れ、キム・ジョンイン、アン・チョルスを引き入れるという足し算政治で、2022年の大統領選挙に勝利しました。ところが尹錫悦大統領は大統領選挙後、京畿道知事候補を選ぶ予備選挙でユ・スンミンを落とし、イ・ジュンソク代表を追い出しました。ハン・ドンフン代表を除去するために非常戒厳までやりました。

 今やチャン・ドンヒョク代表を中心として団結した「ユン・アゲイン」勢力は、ハン・ドンフンを追い出し、オ・セフンを追い出し、アン・チョルスを追い出そうとしています。終わりなき引き算政治の終着駅はどこなのでしょうか。

 最終的に国民の力には「ユン・アゲイン」勢力だけが残り、保守勢力全体が没落の道を歩むのではないでしょうか。国民の力が中道への拡張と保守大連合へと転じる可能性は、どれほど残っているのでしょうか。みなさんはどうお考えですか。

2026/01/18 08:46
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/55223.html

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