【コラム】トランプ2.0の請求書が届き始めている

投稿者: | 2026年1月21日

AIブームと保護貿易主義が相まった2025年、世界の金融市場は表面的な好況の裏側で、構造的な亀裂を蓄積してきた。今年は、その亀裂が本格的に顕在化する転換点となる可能性が高い。

昨年成立した「ひとつの大きく美しい法案(OBBBA)」は、個人所得税減税を事実上恒久化する内容で、今後10年間にわたり財政赤字を3兆5000億〜4兆ドル(約553〜632兆円)拡大させると推計されている。財源確保のため、平均輸入関税率は2025年11月に16.8%まで引き上げられ、1935年以降で最高水準に達した。ただし、連邦最高裁が関税の合法性を審理中であり、政策の持続性は不透明だ。仮に関税が維持された場合、今年上半期の消費者物価指数(CPI)上昇率は3.5%を上回り、財政赤字は中長期的に国内総生産(GDP)比6%を超える可能性が高い。

 強化された移民政策によって、労働供給ショックが経済を左右する中核的な変数となった。2025年5〜11月の月平均雇用増加は1万7000人にとどまり、失業率は4.6%まで上昇している。外国出身労働者は50万人以上減少しており、強制送還措置がさらに拡大すれば、労働市場の均衡を維持するために必要な月間雇用増加の水準は、5万人未満まで引き下げられる可能性がある。

こうした政策負担が積み重なる中、昨年の米国GDP成長のおよそ3分の2を支えた人工知能(AI)が、今年も再び成長をけん引する役割を果たすのは容易ではない。大規模なAI投資を支える資金調達や収益の持続性に対する疑念が強まる一方で、データセンターなどのAIインフラは、収益化に至る前に技術的陳腐化(オブソレッセンス)のリスクにさらされている。

連邦準備制度理事会(FRB)の理事交代や次期議長の指名は、金融政策の政治的独立性に対する市場の信認を試す局面となるだろう。その影響は、ドルの価値や金価格にまず反映される可能性が高い。11月の中間選挙で議会の勢力図が変化すれば、立法の推進力は低下し、政策の焦点は貿易や対外政策へと一段と絞られる見通しだ。

ユーロ圏は、金融・財政政策の累積効果と比較的安定した貿易環境を背景に、緩やかな回復局面にある。インフレ率が欧州中央銀行(ECB)の目標である2%を下回れば、追加利下げの余地も生まれる。ドイツ主導による国防・インフラ支出の拡大は追い風となるが、フランスおよびイタリアの政治的不安定さや財政制約は引き続きリスク要因だ。日本は経済正常化の段階に入っているものの、日本銀行(BOJ)の引き締め姿勢により、政策環境は依然として制約的だ。中国では物価上昇率が0〜1%台にとどまり、デフレ圧力が続いている。不動産市場の低迷と財政刺激への期待低下を背景に、成長率が4%を下回る可能性は高い。

高評価が続く米国株式市場と、積み上がった政策リスクを踏まえると、米国中心の投資戦略を正当化することは次第に難しくなっている。米国以外の地域への資本再配分を検討する価値がある局面と言える。

ロナルド・テンプル/ラザード・アセット・マネジメント市場戦略最高責任?

2026/01/21 13:52
https://japanese.joins.com/JArticle/343723

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