■財界1位のトヨタの変化
「大企業の変化については疑念もあったが、トヨタも結局避けては通れないのか!」
企業の取締役会評価を専門とするボードアドバイザーズの野口智弘パートナーは7月初旬、東京で行われたハンギョレとのインタビューで驚きを隠せなかった。トヨタグループの源流企業である豊田自動織機(以下、自動織機)は6月1日付で自主的に上場廃止を断行した。トヨタ自動車との重複上場を解消するための措置だ。トヨタ自動車は自動織機の株式23.5%を保有している。系列会社間で株式を持ち合う政策保有株式(以下、相互保有株式)も片づけることにした。株式公開買付けの過程で、一般株主の要求を受け入れ、株価を26%引き上げたこともある。公開買付け額5兆9000億円はM&Aとしては歴代1位の規模だ。
親会社と子会社の重複上場や企業間の相互保有株式は、日本の慢性的な問題として指摘されてきた。重複上場は支配株主の支配力を強化するが、一般株主の株主価値を損なう利益相反の問題が深刻だ。相互保有株式も、資本効率を低下させ、ガバナンスの透明性向上や少数株主の保護に逆行する。日本金融庁(FSA)と日本取引所グループ(JPX・以下、取引所)は、重複上場と相互保有株式の削減と解消を積極的に誘導している。日本財界首位のトヨタの変化は、2013年から10年以上にわたり継続的に進められてきたコーポレートガバナンスの改善とバリューアップ(企業や株主価値の向上)改革の成果を示す象徴的な出来事といえる。
■13年間にわたる改革の成果
安倍晋三元首相は2013年、いわゆる「失われた30年」を取り戻すための国家復興戦略の一環として、コーポレートガバナンスの改善とバリューアップに着手した。日本はそれから着実に改革を進めてきた。日本の主要企業の株価を反映した日経225は、2012年12月の9600台から今年6月には7万2831まで急上昇し、過去最高値を記録した。これがすべて改革の効果とは言いきれないが、最大の功労者であることは否定できない。アジア・コーポレートガバナンス協会(ACGA)がアジア太平洋地域の12カ国を対象に発表するコーポレートガバナンス評価において、日本の順位は2012年の共同4位から、2023年には過去最高の2位まで上昇した。韓国は下位圏の8位にとどまっている。
取引所の「2025年度株式分布状況調査」によると、相互保有株式が大半を占める「事業法人等の株式保有」の比率は17.7%で、過去最低水準まで減少した。重複上場も大企業を中心に減少傾向が目立つ。コーポレートガバナンスの改善のガイドラインである「コーポレートガバナンス・コード」は、東京証券取引所プライム市場(1部市場に相当)の上場企業に対し、取締役会内の社外取締役を3分の1以上確保するよう求めているが、上位100社のうち半数以上がすでに50%を超えている。取引所の渡邊浩司上場部長は、「(株価水準を示す)株価純資産倍率(PBR:株価が1株あたりの純資産の何倍かを示す)が1倍未満のプライム上場企業の割合が、2022年7月の50%から今年3月には27%へと大幅に改善された」と語った。多くの日本企業は配当性向(当期純利益のうち株主に支払われる割合)30%達成を目指しており、企業の純利益が増えるにつれて配当金も増加している。自社株買いは2023年に9兆円と過去最高を更新したのに続き、2024年にはその規模が2倍に急増した。
まだ不十分なところもある。収益性を示す自己資本利益率(ROE:株主が投資したお金に対して、会社がどれだけ効率よく利益を上げているかを示す)が8%に満たないプライム市場上場企業が、今年3月時点で43%に達している。2022年7月の47%に比べると、改善されたものの、さらなる取り組みが必要と指摘されている。TOPIX指数(プライム市場上場企業全体を含む)基準のROEは、2026年1月現在9.9%で、米国(21.7%)の半分にも満たない。企業内の現金・預金保有比率も依然として高い。取締役会による経営陣への監視・けん制機能の強化も課題とされている。
■改革のレベルアップ
日本の改革は進化し続けている。金融庁と取引所は、改革の羅針盤となるスチュワードシップ・コード(機関投資家が投資先企業との建設的な対話や議決権行使などを通じて企業価値の向上を促し、顧客や受益者の中長期的な投資リターンを拡大するための受託者責任を果たすための行動原則)とコーポレートガバナンス・コードの第3次改正作業を昨年から進めている。第1・第2次改正が独立した社外取締役の拡大や開示の強化など、形式的な体制の整備に重点を置いていたのに対し、第3次改正では、企業がコードの「形式的な遵守」を超え、改革の「実質的な履行」と持続可能な将来の成長投資に取り組むことを強調している。コードの設計を主導する金融庁によると、取締役会で単に経営資源の配分を議題として議論しただけで済ませるのは「形式的な遵守」に過ぎない。一方、「実質的な履行」とは、取締役会が企業の成長のために現金や実物資産をどのように配分することが資本コストに対して効果的かを徹底的に検討し、株主や投資家が納得できるよう説明することだ。
スチュワードシップ・コードの第3次改正では、機関投資家による「協働エンゲージメント」がさらに強調された。これは、複数の機関投資家が連帯・協力して、投資先の企業のガバナンス改善や資本効率の向上などを目標に、対話や株主権の行使を行うものだ。コーポレートガバナンス・コードは、取締役会が単なる株主還元の拡大にとどまらず、設備・人的資本・研究開発など将来の成長投資に資源を効率的に配分し、社内に積み上げた現金・預金の保有の合理性を点検して資本効率を高めるよう求めている。企業の株主還元は増加したものの、設備および研究開発投資が不十分という指摘に伴うものだ。
日立製作所とレゾナックのような模範事例も増えている。これらは、親会社・子会社の重複上場の解消などのガバナンス改革とともに、周辺・低収益事業の整理、将来の成長事業への集中により、事業構造の再編と収益性の改善を同時に成し遂げたと評価されている。だが、全般的に企業の競争力向上が産業の体質改善や経済復興につながり、好循環を生み出すという改革の究極的な目標の達成までは、まだ不十分という見方もある。
■金融庁・取引所・公的年金の三角協力
日本の改革では、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードといった軟性規範が核心的な役割を果たしている。法律を前面に押し出す韓国とは異なる点だ。軟性規範に基づく改革が成果を上げている秘訣として、「同調圧力」が高い日本社会の特性が挙げられる。他の企業がすべてコードを遵守し改革に参加している中で、一社だけが拒否したり遅れをとった場合、問題企業とレッテルを貼られ、評判が悪化するリスクが大きくなる。
このように軟性規範が機能する背景には、金融庁・取引所・公的年金(GPIF)という3つの公的機関による緊密な三角協力がある。金融庁は、両コードの制定・改正など、制度設計と政策の方向性を主導する。取引所は金融庁と連携し、企業が実質的な改善に取り組むよう誘導する。取引所は2023年4月、「資本コストと株価を意識した経営」を要請し、PBRが1倍未満の企業に対し、改善計画の開示を義務付けた。取引所の渡邊上場部長は、「取引所の要請は、単なるPBRの改善にとどまらず、企業が投資家と建設的な対話を交わし、究極的には成長を遂げるよう奨励することが目的だ」と説明した。
公的分野で金融庁と取引所が改革を牽引する一方、民間市場では公的年金が主導的な役割を果たす。約290兆円に達する年金資産をテコにして、機関投資家によるスチュワードシップ・コードの履行を促すことで、市場規律が機能するよう強力なリーダーシップを発揮する。資産運用会社を選定する際、スチュワードシップ・コードの遵守評価を連動させる「飴と鞭」戦略をとっている。これにより、資産運用会社が投資先企業に対し、積極的なエンゲージメント活動を通じて、ガバナンスの改善と資本効率性を求めるよう誘導する。
機関投資家の協働エンゲージメント活動が活性化しているのも、公的年金がコード遵守の基盤を築いたおかげだと言える。日本政府も2024年の法改正を通じて、機関投資家が経営の重大な変更に関して議決権の共同行使に合意しない限り、「共同保有者」の地位が成立しないことを明記した。協働エンゲージメント活動を阻んできた法的障害を取り除いたのだ。機関投資家協働対話フォーラム(IICEF)は、協働エンゲージメント活動を支援するために2017年に設立された機関投資家の集まりだ。同フォーラムの木村祐基会長は、「過去9年間、コーポレートガバナンス、ESG、資本効率性などを議題として、約2600社に書簡を送付し、約130社と対話を行い、金融庁などとの会合を約90回開催するなど、活発な活動を行ってきた」と語った。
■韓日は改革のパートナー
韓国政府は、商法改正のフォローアップ改革課題として、機関投資家によるスチュワードシップ・コードの履行の充実を推進している。国民年金も、国内株式の委託運用会社による受託者責任活動を強化するため、スチュワードシップ・コードの履行点検体制を整備しているが、日本の公的年金が重要な参考モデルとなっている。韓国は2016年にスチュワードシップ・コードを導入したが、過去10年間は事実上、眠ったままだった。韓国は市場環境やコーポレートガバナンスにおいて日本とは違いがあるが、日本の経験を適切に参考にすれば、改革に大きな助けとなるだろう。
日本の経験を振り返ると、改革には長い時間がかかり、それだけに政策の一貫性が重要であることが分かる。日本は安倍政権以降、首相が4回も交代したが、13年間にわたり改革を続けてきた。昨年10月に就任した高市早苗首相も、改革の基調を忠実に引き継いでいる。今年だけでも、企業統治コード第3次改正案(金融庁)や「資本コストと株価を意識した経営」に関する要請のアップデート(取引所)に続き、株主還元と将来の成長投資の調和を強調した「成長投資ガイダンス」(経済産業省)の発表が相次いだ。
東京でインタビューに応じた金融庁・取引所・公的年金の関係者たちは、口を揃えて改革の持続性を強調した。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の廣川齊IESG・スチュワードシップ推進部長は、「ガバナンス改革には『ゴール』(目標)がない」と語る。目標を達成したからといって満足するのではなく、より高い目標を見据えながら持続的に改革を推進しなければならないという意味であり、韓国が耳を傾けるべき点だ。
韓日間の改革推進方式の違いも注目される。法規制中心の韓国は、軟性規範中心の日本に比べ、推進の強度や速度において強みがあるかもしれない。だが、企業が法の抜け穴を見つけて防御的な戦略をとれば、限界も明らかだ。企業が市場の期待に沿わない行動をとった場合、投資家から敬遠され、市場で生き残ることが難しいという自律的な規律文化の定着が必要である。野村資本市場研究所の西山賢吾主任研究員は、「韓国は取締役の株主に対する忠実義務を商法に盛り込み、日本はコードに原則を反映している」とし、「軟性規範中心の日本の方式と法律中心の韓国の方式のうち、どちらが改革により効果的か、日本でも関心が高い」と語った。渡邊上場部長は、「日本や韓国だけでなく、アジア圏全体が(立ち遅れたコーポレートガバナンス構造のために)ディスカウント状態にあるようで残念だ」とし、「日本ではコーポレートガバナンスが改善される兆しが見られ、投資家からも肯定的な意見も聞かれているが、これは始まりに過ぎない。両国が早急に問題を解決するという目標を共有し、協力関係を続けていければと思う」と話した。
2026/07/30 10:42
https://japan.hani.co.kr/arti/economy/56823.html