教員を定年退職し、地方に戻った知人は敬老堂(韓国の高齢者向けコミュニティー施設)に行かない。ユーモア混じりに語った彼の「行かない」理由は「先輩たちに使い走りをさせられそうだから」だ。70歳をとうに過ぎているのに、末っ子扱いされるという。(韓国の)ベビーブーマー(1955~63年生まれ)世代だが、気持ちだけはまだ若者だ。「世間が老人と呼ぶなら仕方ないが、自分自身をそのように認めたくはない」と語った。また、「敬老」という名称にも抵抗感があるという。
ソウル市内のとあるマンションの敬老堂では派閥争いも深刻だ。80歳を過ぎた高齢者たちが政治に対する考え方によって「朴正熙(パク・チョンヒ=元大統領)」「金大中(キム・デジュン=元大統領)」「金鍾泌(キム・ジョンピル=元首相)」の支持者に分かれ、対立しているという。相手側が主導する行事は不参加であることが多いが、例外もある。昼食が無料の時や、バスを貸し切りにして紅葉狩りに行く時などだ。形式的に少額の会費を払うが、実際にはほぼ全額が国庫と地方自治体の予算で賄われる。
韓国の敬老堂が幾何級数的に増えたのは1991年のことだった。政府が住宅建設200万戸を推進し、共同住宅団地(現在は150世帯以上)への敬老堂設置を義務化した。2014年からは米と冷暖房費の国費支援が法制化され、選挙を経て「週5日の昼食提供」も基本提供になった。これに加えて老朽化したエアコンの交換費用、レジャー・健康プログラム費用、調理補助の人件費も支給されている。会員数によって異なるが、多いところでは1カ所当たり年1000万ウォン(約110万円)以上を受け取っている。2025年の統計で敬老堂は6万9000カ所を超えた。
最近、本紙の社会面に「敬老堂は増えているのに、利用するシニアは減っている」という記事が掲載された。65歳以上の敬老堂利用率は約20%で、毎年下落傾向にある。政府の支援や恩恵は増えているのに、肝心の主役たちはそっぽを向くという奇っ怪な現象が起きているのだ。すべての敬老堂がそうとは限らないが、主な理由は新参者に対する縄張り意識と閉鎖性である。そして、さらに大きな原因は世代の変化だ。学歴が高く、スマートフォンに慣れ親しんだ「新老人層」にとって、テレビ視聴を中心に時間を過ごす昔ながらの敬老堂は窮屈な空間にすぎない。
毒舌で知られる日本の作家・丸山健二氏は、自らの経験を書いた『田舎暮らしに殺されない法』の中で、「楽しい歓談の憩いの場どころか、仲間うちで固まって陰口をたたき、噂を言いふらす巣窟だ」と日本人の「敬老堂ファンタジー」を冷ややかに批判している。この本は10年ほど前のものだ。現在の日本は、高齢者専用の隔離空間をなくし、多様な世代が交流する「地域リビング」の概念へと再編されつつある。米国も同様に、フィットネスセンターとカルチャーセンターを結合した形態が主流だ。韓国でも、敬老堂が老人だけの溜まり場から脱却し、世代と地域社会全体のための「開かれた憩いの場」として生まれ変わる時、シニアたちの自負心もさらに高まることだろう。
2026/09/23 06:00
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