現代史を扱った韓国映画が歴史歪曲(わいきょく)論争を招くケースは、2000年代に入って目立つようになった。MKピクチャーズが制作したイム・サンス監督の映画『ユゴ 大統領有故』(2005年)については、遺族が「朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の名誉を毀損(きそん)した」として、損害賠償と上映禁止を求める訴訟を起こした。
朴正煕元大統領を連想させる「閣下」という人物が、夕食会で演歌を歌い、日本語を乱発する軽薄な人物として描かれたというのだ。裁判所は上映禁止ではなく、「映画がフィクションではなく現実だという認識を植え付ける恐れがある」として、挿入されたドキュメンタリー映像を削除するよう命じた。しかもこの映画では、銃弾を受けた「閣下」が「一発食らったじゃないか」というセリフを口にする。
朴正煕暗殺事件を題材にした『KCIA 南山の部長たち』(2020年)では、車智澈(チャ・ジチョル)警護室長が釜馬民主抗争への対策としてカンボジアのキリング・フィールドに言及し、「100万-200万人くらい犠牲にしても構わないのではないか」と言うと、朴大統領が「事態が深刻化すれば、わたしが直接発砲命令を出す」と語る。しかしこの言葉は、犯人である金載圭(キム・ジェギュ)の証言にだけ出てくるもので、現場にいたほかの人たちの証言には見当たらない。それにもかかわらず、あたかも実際にそういう発言があったかのように描いたというわけだ。
12・12クーデター(粛軍クーデター)を題材にした『ソウルの春』(2023年)では、当時の全斗煥(チョン・ドゥファン)保安司令官が逮捕された金載圭を尋問する過程で、「世の中はまだそのままだ」と言ってあざ笑う。朴正煕政権と全斗煥政権が大差のない体制だったことを示唆するものだが、実際には全斗煥氏が金載圭を直接尋問したことはなかった。
Disney+のドラマ『メイド・イン・コリア』(2025-2026年)は、選挙で大統領が選ばれた第三共和国を「クーデターによって権力を掌握した軍事政権による軍部独裁」と規定し、当代の権力スキャンダルを扱った。さらには、1970年代に中央情報部(KCIA)が麻薬取引事業に介入したかのように描いている。
しかし、中央情報部は実際にはそのようなことをしておらず、世界的にも政府機関がこのような事業を行ったケースは、北朝鮮以外ではまれだという点で、「一線を越えた」という批判を受けている。『KCIA 南山の部長たち』『ソウルの春』『メイド・イン・コリア』をはじめ、現在公開中の『暗殺者(たち)』はいずれも、HIVE media corpという制作会社が手掛けたという共通点がある。
慶南大学のシム・ジヨン名誉教授は「どの国でも大衆文化界は既存の体制への反感と抵抗意識を持ち、それを商業主義に活用しようとする」とした上で「市場が狭く人脈が張りめぐらされた韓国では、いったん歴史の物差しが特定の方向に傾いてしまうと、なかなか別の声が出にくいのが現実だ」と語った。
兪碩在 (ユ・ソクチェ)歴史文化専門記者
2026/10/01 07:00
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