LINEの前に敷かれた予告される険しい道【寄稿】

投稿者: | 2024年6月26日

 「LINEヤフー」関連の記事の件数は、5月13日の206件をピークに急減し、6月23日には8件しかみられない。LINEヤフー問題は沈静の兆しをみせているのだろうか。終わるどころかより複雑化し、退屈な長期戦になる公算が高まっている。

 日本の毎日新聞の6月21日付の報道によると、日本の経済安保法の生みの親であり、自民党の実力者で経済安全保障推進本部長を務める甘利明氏が、3~4月ごろにLINEヤフーの日本側のパートナーであるソフトバンクグループの孫正義会長に会い、ネイバー側の株式の買い増しとLINEの「すべてを日本化」することを要請したことが明らかになった。総務省がネイバー側に異例の株式売却要求を2回行ったまさにそのとき、甘利本部長と歩調を合わせて、総務省もソフトバンクグループの宮川潤一最高経営責任者(CEO)に同じ要求をした。ソフトバンクグループの関係者は、日本政府がここまで踏み込むとは思わなかったと驚いたという。しかし筆者は、この記事の行間からにじみ出る利害関係者の全般的な無能、無道徳、そして無責任に驚き、この記事の内容を知った韓国の社会とメディアの鈍感さにさらに驚いた。総体的難局が他ならない。

 LINEは、ネイバー‐LINE‐ヤフー‐ソフトバンクで結びつけられた一種のグローバル・バリューチェーン(GVC)だ。いや、韓国と日本の両国が価値と理念を共有する類似国であることから、一種のトラスト(信頼)・バリューチェーン(TVC)だといえる。しかし、LINEの個人情報流出事故をきっかけに、日本政府は経済安保の次元から、これさえ自己完結性を持つドメスティック(国内)・バリューチェーン(DVC)に変えようと介入した。これから、この問題をめぐる複雑な利害関係軸が形成された。しかし、これらの人たちがみせた無能、無道徳、そして無責任によって、LINEの前には険しい道が待ち構えている。

 まず、「政府」対「企業」の関係(「日本政府」対「ソフトバンクグループ」、「韓国政府」対「ネイバー」)上で明らかになった悪手だ。それまで総務省は、LINEヤフーの資本関係の是正を言ったことはないとして、韓国側の反発に直面して手を引いた。しかし、上記の記事が明確にしたのは、総務省の偽りだ。さらに衝撃的なことは、党幹部が背後で不透明な慣行である「行政指導」を武器に、トラスト・バリューチェーンをドメスティック・バリューチェーンに変えるよう、グローバル企業の経営者を呼び出して脅迫したことだ。「経済安保」のためなのか。無道徳どころか職権乱用の余地さえある「経済的強圧」だ。しかも、主務官庁である日本の個人情報保護委員会とは違い、総務省はネイバー側の持分の売却まで要求した。省庁間の差異も、実際に差異があるわけではない。総務省の無理な手法によって、韓国ではネイバーのセキュリティ事故自体が埋もれてしまったため、ネイバーは総務省に感謝しなければならないのか。問題がこの状況にまで至れば、韓国政府は不当な経済的強圧を行使した日本政府と与党に強力に抗議するのが当然だが、ネイバーの背後に隠れたのか、どこにも見当たらない。無能、無気力で無責任なことこの上ない。

 上記の記事は、ソフトバンクグループの関係者の発言を通じて、政府と企業の利害関係の相反の余地も明らかにした。意図したかのように自国政府に不快な様子をみせたソフトバンクの内心は何か。実際のところ、ソフトバンクは会社法上はLINEの親会社として実質的な経営権を握っており、ネイバーの持ち株の買い増しのインセンティブは強くない。これまでシステム開発と運用をネイバー側に過度に依存しており、短期間での技術自立も困難だ。だからなのだろうか。ソフトバンクグループは株式買い増し関連の質問については言葉を濁す。ソフトバンクグループも内心は複雑だ。すべてのデータセンターを自国内に置くことが、経済安保の側面で正解なのかは疑問だ。それどころかソフトバンクグループは、2011年の大震災の際に、データのバックアップのために韓国にデータセンターを建設した。当時LINEが機能した理由はデータが分散していたためとする専門家の指摘は、聞き流すべきではない。

 上記の記事には書かれていなかったが、非政府・非企業の利害関係者である両国国民の声が一方向だけに偏っている点も懸念される。韓国もいつ発生するかわからない個人情報流出事故を考慮するのであれば、ネイバー側の過失も厳しく問わなければならなかった。そして、この際、データの主人は誰なのか、データとプラットホームの主権をどのように保護するのかについて、思考を拡大しなければならない。「私がすれば経済安保、君がすれば経済的強圧」ではなく、条件の探求によって認識の地平を広げなければならない。しかし、このような議論はデータ保護主義とネイバー救護で覆われてしまった。

 昨今の状況に照らしてみると、LINEヤフーが確固たる再発防止策だけを立てればよい問題ではない可能性が高まった。日本の次のカードは経済安保情報保護法の可能性がある。全員が今乗りださないかぎり、LINEの漂流は予告された未来だ。

2024/06/25 08:57
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/50431.html

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