小渕・金大中宣言の舞台裏を明かす…元駐韓大使が当時の日誌をもとに出版(1)

投稿者: | 2024年6月29日

「国民感情のすれ違いを、いわば政治的に克服して、まさに未来志向的な両国関係を構築できた時代が存在した。小渕恵三首相と金大中大統領が両国の政治指導者であった時代がその典型である。なぜ、そうした時代が存在したのか。その背後の要因は何であったのか。こうした疑問に答える一助として、その時代に韓国駐在大使であった者が、個人的に両国間の外交的、政治的、経済的、文化的接触の表舞台と裏舞台について書き残した記録を公にする意味があるのではないかと考えた」

 小倉和夫・元駐韓大使(85)は、6月28日に日本で刊行した「駐韓国大使日誌 1997~2000 日韓パートナーシップ宣言とその時代」(岩波書店)の冒頭でこう記述した。小倉氏は1997年10月~2000年1月に駐韓大使を務め、1998年の「21世紀の新しい韓日パートナーシップ共同宣言(金大中・小渕宣言)」の作成などに携わった。同書は、駐韓大使時代に記した日誌を中心に、専門家に依頼して入手した外交文書なども収録した歴史的価値の高い著作だ。去る11日、東京都内の小倉氏の事務所でインタビューした。

 Q 大使退任から20数年がたった今、出版した理由は。

A 日誌はある程度時間がたったら公にしようと考えていた。数年前に研究者に見せたら、ぜひ出版しようという話になった。ただ、自分の回想だけでは間違っている部分もあるかもしれないので、研究者に首脳会談の記録など外交文書も含めて客観的に検証してもらった。研究者から私へのインタビューもあり、刊行までに5年以上かかった。ちょうど来年は日韓国交正常化60年なので、良いタイミングになったのではないか。

小倉氏が赴任した当初、日韓間には漁業問題や韓国のIMF危機など難題が山積していた。小倉氏は着任から1週間後、「アジアの大義のために日韓両国が共に手を携えるべきだという安重根の精神に自分は賛同する」という意味を込めて安重根義士記念館を訪問した。駐韓日本大使による同記念館訪問は初めてで、小倉氏が公にしたのも初めてだ。

著書には、こうした行動を通じて韓国の政界や経済界との信頼関係を深めたことや、日韓の要人による緊迫した会談の記録、パンソリと韓国語学習を通じた韓国社会、文化への考察などが収録されている。

膨大な資料のうち、目を引くのは、小倉氏が就任直後、大統領候補だった金氏に挨拶に行った際の日誌だ。金氏が選挙期間中に検討していた内容は、共同宣言にそのまま反映されていることが分かる。

Q 共同宣言で、小渕氏は日本の植民地支配について「痛切な反省と心からのおわび」を表明し、金氏は戦後の日本の歩みを評価した。そのうえで両首脳は未来志向の関係構築を誓った。このような歴史的合意が可能だったのはなぜか。

A 一つの大きな要因は、韓国が金大中大統領、金鍾泌首相による保革連合政権だったことだ。民主化運動の中心だった金大中氏と、朴正煕政権の中枢にいた金鍾泌氏が手を組んだため、革新派も保守派も反対できなかった。それが韓国の中で日本との関係を大きく変え、新しい次元に持っていく原動力となった。日本も、1993年に自民党が下野し、翌1994年には自民党と社会党などの連合政権である村山富市政権が発足するなどリベラルな流れがあった時代だった。小渕氏自身、政治的には中道だった。日韓双方に一致できる要素があったことを、多くの人が見逃していると思う。

Q 緊密な連携をしやすい政治状況だったと。

A 日本には長年、韓国はまだ民主政治が十分定着していないという認識があり、緊密な関係を築くことに否定的な人々も存在した。しかし、軍事政権と闘ってきた金大中氏が大統領になった。これは韓国の民主主義の勝利であり、民主主義が定着したという一つのシンボルだった。このため、日本国内のリベラル派も含めて、安心して手を組めるようになったと言える。

Q 共同宣言を可能にした他の要因は。

A 日韓両国の国民の間で、相手国の文化への親しみが芽生えてきていた。良い時代の流れがあった。また第3の要因として、日韓両国とも北朝鮮を必ずしも敵視していなかった時代だったことが挙げられる。日韓の連帯によって反北朝鮮の要素が強くなりすぎると、地域の安全保障においても、韓国の国内政治的にもあまりプラスに働かない。真に日韓が連帯するには、北朝鮮との関係も無視できない。

共同声明を発表した金氏の国賓訪日(1998年10月)を前に、日本政府内では天皇訪韓問題をめぐって緊迫したやりとりがあったという。当時の小倉氏の日記にはこう記されている。

2024/06/29 08:44
https://japanese.joins.com/JArticle/320490

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