米国が唯一の超強大国として国際秩序を率いた脱冷戦時代は終わった。これは近く混沌のポスト脱冷戦時代が始まることを意味する。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻と昨年10月のハマスのイスラエル攻撃に見られたように、世界は非常に不安定であり流動的な戦略環境に変わっている。脱冷戦時代を貫通していた自由主義国際秩序が多様な遠心力と求心力の作用により基盤から揺らいでいる。
◆崩れる米国中心の国際秩序
国際秩序の変化の根幹は米国の相対的な衰退と中国の浮上だ。米国は第2次世界大戦以降に維持していた「優位(primacy)」を徐々に失っている。一方、年平均10%台の高速成長を見せた中国の役割は大きくなっている。中国は2000年の国内総生産(GDP)が世界6位にすぎなかったが、2010年に2位の日本を追い抜くと、最近は米国の70%水準にまで近づいた。中国の軍事力は地理的な利点を考慮すると、西太平洋では米国とほぼ対等なレベルに到達したと評価される。中国は自由主義国際秩序の恩恵で急成長したが、グローバル発展・安全保障・文明イニシアチブを追求しながら代案秩序を模索し、自由主義国際秩序の基盤が揺らいでいるのだ。
ロシアも旧ソ連の栄誉を回復しようという戦略を追求しながらウクライナを侵攻するなど、従来の秩序の脅威要因となっている。さらにイラン・北朝鮮・キューバ・ベネズエラなどのかく乱の軸(Axis of Disruption)国家が中国・ロシアとの連帯を強化し、混沌を加重させている。一方、南半球の新興国と開発途上国をいうグローバルサウス国家も国際社会で独自の発言権を高めていて、米国中心の連帯、すなわちグローバルウェストと反対陣営のグローバルイーストの間で利益を得ようとしている。ロシアのウクライナ侵攻が明白な国際法違反であるにもかかわらず、国連の対北朝鮮制裁にあいまいな立場を見せているのが代表的な例だ。
◆加重する脅威の要素
自由主義国際秩序を構築して維持してきた米国が国内政治環境による孤立主義性向を見せ、求心力も弱まっている。2010年代初め、米国は欧州と東アジア、中東の3つの全域で2つの戦争を同時にする戦略を放棄した。1つの戦争には関与しても、別の地域で同時に発生する戦争は抑止する案を選択した。国力の消費を防ぐための「選択と集中」戦略だが、これも最近、ウクライナとガザ地区で戦争が同時に進行し、米国の意図通りになっていない。米国と共に自由主義国際秩序維持の軸となる欧州と日本も経済不振と社会・政治分裂で以前のようではない。ウクライナ戦争が始まった後、西側の結束力はやや強まったが、11月の米大統領選挙で米国優先主義を標ぼうするトランプ共和党候補がまた執権する場合、同盟体制に間隙が生じる可能性もある。それだけでなくこうした地政学的な危機に加え、巨大変化(Mega Change)が同時に発生し、国際秩序をさらに複雑にしている。2020年に始まった新型コロナが代表的な例だ。全世界に恐怖をもたらしたコロナのようなパンデミックはさらに頻繁に、さらに強く地球村を襲う可能性がある。気候変動も同じだ。グリーンエネルギー転換によるエネルギー地政学の変化を予告している。また人工知能を筆頭に急速に展開する第4次産業革命は経済・安保・社会に幅広い波及効果が予想される。アフリカを除いた全世界が出生率低下で人口の崖を経験している点も長期的に国際秩序に衝撃を与えるだろう。国際的に経済・社会環境に大きな変化をもたらす転換が同時に生じる複合大転換は、こうした混沌をさらに深めている。
2024/09/27 15:32
https://japanese.joins.com/JArticle/324276