「グローバル・ミノタウロス」の死後【寄稿】

投稿者: | 2025年1月1日

 われわれは米中貿易戦争の真っただ中にいる。米国は不公正な競争や人権問題を理由に、中国製輸入品に関税と制限を課そうとしている。かつては保護主義を「貧しい国が後れた産業を保護するために用いる手段」だとして見下していた米国が、今になり中国が革新的なライバルとして浮上すると、自ら中国に関税爆弾を投げようとしているのだ。

 金融取引の普遍的な媒体として米ドルが享受してきた地位は脅かされている。ギリシャの経済学者のヤニス・バルファキスが主張するように、1970年代初めから世界経済を動かしてきた「グローバル・ミノタウロス」体制が終末を迎えたのだ。1971年に赤字国家である米国は金本位制を放棄した。それからは、古代ギリシャ人から生贄(いけにえ)を得ていた怪物のミノタウロスのように生産しない捕食者になり、ドイツ、日本、中国のような黒字経済国から、これらの国が生産した商品を吸収してきた。米国はこうして流入してきた資本をウォール・ストリートで直接投資、株式、金融商品、融資などに変えた。

 この体制は2008年から崩れ始めた。これに対してバラク・オバマ政権は、米ドルが世界の通貨である事実を利用し、大量に紙幣を印刷する手法で輸入に必要な資金を調達し、既存の体制の寿命を延長しようと考えた。ドナルド・トランプはこれとは違う手法で問題にアプローチしている。彼は米国が負債を輸出して紙幣を印刷することによって利益を得てきたにもかかわらず、米国内の雇用減少のような問題を、米国に対する不公正としてフレーミングする戦略を用いている。

 暗号資産(仮想通貨)は、グローバル・ミノタウロス体制後に形成されつつある新体制の特徴をよく示している。新体制において資本は脱中央化される傾向がある。国家の独占は消え、銀行の橋渡しの役割は弱まる。こうして暗号資産は、外部の統制を受けない自由な空間を約束するが、問題は国家の独占が消えた場合、無慈悲な搾取と支配の上限ラインも消えるという点だ。結局、規制されない垂直的支配と混沌とした水平性が結びつき、利益の論理はそのまま維持され、搾取はさらに強化される。

 ここでわれわれは、新体制で中国が果たすことができる役割に注目する必要がある。世界最大の生産国である中国は、今では技術強国としても新たに浮上している。中国は、強力な国家を通じてマーケット・メカニズムの効果を制限できるという点で、米国の金融支配力に抵抗できる力を有している。中国は、現在のデジタル通貨などのかたちで新たな基軸通貨を作り、米ドルの支配力から抜け出す代案を模索しているが、米国主導のグローバル・ミノタウロス体制が不平等を持続させてきたことを考えると、中国の試みは支持を得る資格がある。

 もちろん、だからといって、中国を資本主義に対抗できる勢力として理想化するばかりにはいかない。中国は米国の巨大企業とは利益のために緊密に協力することを望んでいる。同時に、アフリカや南アジアのような第三世界では、経済的新植民地主義を繰り広げている。ミャンマーでは軍事政権を支援し、ザンビアでは銅山労働者たちから苛酷に搾取し、ウクライナ戦争については表面的には中立を守るふりをしているが、実際にはロシアを支援している。

 われわれはこんにちの世界状況を、進歩に対する単一の概念が支配するのではなく、さまざまな未来や普遍性が重なるホログラムとして理解しなければならない。現在はグローバル資本の多くの派閥が互いに競合している。われわれは、この闘争でどちらか一方だけを持ち上げるのではなく、これらの競争を戦略的に徹底して活用しなければならない。ウクライナに軍事的支援が提供されるよう米国を支援しながらも、同時に他方では、米ドルの支配力に亀裂が生じるよう、中国を支援できるのだ。これは矛盾する選択ではない。この世界自体に内在する矛盾を考慮すれば、妥当なことだ。

2024/12/08 20:40
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/52040.html

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