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-トランプは就任後、韓国に対して在韓米軍の防衛費引き上げや在韓米軍の撤退で圧力をかけてくると思うか。
「トランプは既存の同盟構造に批判的な立場だ。NATO(北大西洋条約機構)、韓米同盟いずれも米国を搾取して利益を得てきたと考えている。加えてトランプは第1期時代から、韓国は特に容易でくみしやすい相手だという認識を示している。選挙運動期間中に韓国のことを『マネーマシーン』と言ったのも、韓国は圧力を加えれば多くを得られる国だと考えているということを意味する。韓国がバイデン政権と防衛費交渉を急いだことが、むしろ標的になる可能性をより高めた。トランプは、バイデンがしたことは無条件に否定しなければならないと考えているから、まず在韓米軍の防衛費について再交渉を要求してくる可能性が高い。その過程で在韓米軍の撤退の話も持ち出して、強く迫ってくるだろう。この過程において、価値同盟のような論理が作用する空間はまったくない。韓国も『取引』の姿勢で対応するしかないだろう」
-今の韓国の内乱と弾劾政局がトランプとの外交にどのような影響を及ぼすと思うか。
「ひとまずトランプは、完全に『ノーコメント』で一貫している。『民主主義か、独裁か』といった問いには無関心であることを示している。問題は、トランプが韓国はさらにくみしやすい相手になったと判断する可能性が高いということだ。韓国国内の状況が混乱しているから、さらに米国にしがみつくようになっているし、韓米同盟や在韓米軍の懸案をめぐって自分が強く迫れば、より多くのものを得られると判断するだろう。また北朝鮮問題についても、韓国を素通りする可能性がより高まっている」
-金正恩(キム・ジョンウン)との交渉の再開はトランプの優先課題になっているのか。
「米国の立場からするとウクライナ戦争、中東、米中競争が最も重要で、北朝鮮問題は相対的に優先順位が低い。だが、不思議なほどトランプの個人的な優先順位では、北朝鮮問題は高い位置にある。トランプは、自らが業績を残すのに適した対象こそ北朝鮮問題だと考えているようだ。『自分だけが解決しえる問題』であり、『自分は誰も行ったことのない地点に立った』という自信を持っており、金正恩との個人的関係もある。これらを考慮して、予想より朝米対話が速く展開する可能性に備える必要がある。注目すべきは、トランプが北朝鮮問題を一種の東アジア勢力圏の調整だと考えているということだ。マイク・ポンペオの回顧録によると、平壌(ピョンヤン)でポンペオに会った際、金正恩は『中国の脅威から朝鮮半島を守るために米軍が必要だ』という趣旨の発言をしたという。旧冷戦時代に中国とソ連のと間で等距離外交を展開した北朝鮮は、今は米国、中国、ロシアの間での新冷戦等距離外交で利益を得るという戦略を持っており、米国も拒む理由はない。北朝鮮は中国の唯一の条約上の同盟国だが、北朝鮮を米国側に引き寄せて、あたかも今日のベトナムのように中立化でもさせることができれば、中国けん制用として意味がある。そうトランプも判断するだろう」
-朝米交渉が進む過程で、韓国が素通りされるのを避ける方法はないのか。
「北朝鮮の追求する『通米封南』をできる限り回避するというのが、韓国の追求すべき外交の方向性だ。だがトランプも金正恩も、韓国を挟んで交渉する考えは今やないようだ。たとえ民主党が政権を取ったとしても、韓国と共に交渉しようという考えはない。関連して『非核化交渉でないのなら朝米交渉は無条件に防ぐべきだ』との韓国の主張は、再考すべき時が来ている。非核化でないなら、いかなるかたちの朝米交渉であってもダメだというような態度は、もはや現実的ではなく、緊張を高めるだけだ。そうすればするほど、米国と北朝鮮の両方から通米封南の状況に追い込まれることになるだろう。韓国が明示的に非核化という目標を放棄する必要はないが、最も危険な状況を沈静化させる程度の軍備規制交渉には賛成し、それについて韓国の主張を通す方法を探るべきだ」
-北朝鮮の核問題の悪化、トランプ政権の登場で、韓国の独自核武装論が改めて高まっている。
「究極的に自救(self-help)を追求する現実主義的論理のみで考えると、米国の核の傘も結局は信頼できないため、独自の核武装という袋小路に迷い込まざるを得ない。だが、韓国が本当に核武装する状況に至ったとすると、それは世界がすでにNPT(核拡散防止条約)をはじめとする自由主義的な安保関連規範がすべて破綻した弱肉強食の状態になっているということを意味する。韓国が核保有国になったからといって、決して安保問題が完全に解決されるわけではないということは、特に覚えておかなければならない。インドとパキスタンを見ると、いずれもが核を保有してからは、『もう大規模な戦争は起きない』という考えのせいで小規模な紛争はむしろ増えた。いわゆる『安定-不安定のパラドックス』だ。核は万能薬ではないし、最終的な解決策でもない。真の安定を追求するためには南北間、朝米間の外交交渉と妥協、軍備規制交渉の過程へと向かうしかない。核を持てば一気に安保問題が解決するという考えから脱し、リスク管理に注力すべきだ」
-今年は光復80周年だ。だが、その80年間保たれてきた国際秩序が崩壊しつつあるとしたら、韓国はどのように対応すべきか。
「まず、今が『時代の転換期』であり、既存の一極時代の外交パラダイムでは対応できないという現実を、はっきりと理解しなければならない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権もこのような構造的転換を認識したからこそ、『価値観外交』で新冷戦に対応したのだが、行き過ぎた『戦略的明確さ』によって陣営外交の危険な道へと足を踏み入れてしまった。いま必要なのは、中庸と慎重さを追求する現実主義的戦略だ。韓国は中国、ロシアにも関与が必要であり、自律的な交渉の空間を作ってリスクを管理し続けなければならない。旧冷戦時代の西ドイツやフランスのように米国との同盟を保ちつつも自律的な空間を作り出す道を韓国が歩むためには、国家的なコンセンサスを形成し、国力を結集する過程が重要だ。だが今の韓国の二極化した国内の政治状況は非常に懸念される。日本、米国、中国、ロシアについての言説が、相手陣営を攻撃する政争の手段になってしまっている。今回の非常戒厳で状況がさらに厳しくなっているので暗たんたる気持ちだ」
2025/01/07 15:50
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/52095.html