「内乱事態で北朝鮮も衝突を望んでいないことを確認…まず軍事合意から始めるべき」

投稿者: | 2025年1月8日

 キム・ヨンチョル元統一部長官(仁済大学教授)は先月30日、ハンギョレとのインタビューで、「ドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長が近く親書を交わす可能性があるが、朝米が交渉を始めても(以前より)複雑ではるかに悪化した北朝鮮の核問題をきちんと解決できるかは疑問だ」と述べた。キム元長官は第1次トランプ政権と直接向き合い、朝米外交と南北関係に関与した人物。キム元長官はトランプ大統領と金委員長はいずれも韓国が交渉に介入することを望んでおらず、「韓国パッシング」の可能性が高いと懸念を示すと共に、南北米中の4者会談を提案した。

 金正恩委員長の「敵対的な二つの国家論」については、南北関係において期待するところがないという判断によるもので、南北関係が回復するのは容易ではないと語った。その一方で「内乱局面で再び確認されたのは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が南北境界地域で衝突を誘導しようとしたが、北朝鮮は衝突を望んでいなかった点」だとし、南北が緊張緩和のための軍事合意をすることから始めるべきだと語った。「敵対的な二つの国家」を「平和的な二つの国家」に変えていくことが急がれるという意味だ。

―第2次トランプ政権の朝鮮半島政策をどう予想するか。

 「第2次トランプ政権を予想するためには、第1次トランプ政権の政策決定過程を少し詳しく振り返る必要がある。2018年シンガポール朝米首脳会談、2019年のハノイ朝米首脳会談の過程を思い起こしてみると、トランプ大統領は実務陣の報告書を読まなかった。政府内部のシステムも機能しなかった。ジョン・ボルトン(国家安保補佐官)、スティーブン・ビーガン(北朝鮮政策特別代表)、マイク・ポンペオ(国務長官)が互いに牽制し、対立が激しく、重要な交渉に臨む実務的な準備が全くできていない状態で、ハノイの会談場に向かった。さらにトランプ大統領は第2次政権に自分に忠誠を誓う人だけを起用している。システムがさらに機能しにくくなるだろう。ただし、金正恩国務委員長に対して肯定的な表現を使い続け、自分だけが北朝鮮問題を解決できるという自信を示している。北朝鮮も米国との状況をさらに悪化させる措置に慎重な態度を示し、トランプ大統領に対しても感情混じりの批判は控えている。トランプ大統領と金正恩委員長が近く親書を交わす可能性がある。ところが、実際に朝米交渉が始まっても、(以前より)複雑でさらに悪化した北朝鮮の核問題をきちんと解決できるかは疑問だ」

―朝米交渉が再開された場合、主な争点は何か。

 「これまで北朝鮮の核兵器が非常に増えており、ミサイルも急速に発達した。交渉の枠組みを作るのが2018年に比べてはるかに難しくなった。トランプ政権が対北朝鮮制裁にどれほど柔軟性を発揮するかが、交渉を再開する上でカギになるだろう。第2次トランプ政権は中国に対して金融、先端技術分野の制裁を大きく強化するとみられるが、中国に対する制裁を拡大する一方、北朝鮮との交渉では制裁の柔軟性を発揮することが容易ではない点も(交渉再開に)影響を及ぼすだろう」

―トランプ大統領と金委員長は、韓国を排除した交渉を行い、米国が非核化ではなく軍縮交渉を通じて米国に対する脅威だけを取り除くと懸念されている。韓国パッシング(外し)を防ぐ案はあるだろうか。

 「非核化と軍縮交渉を二者択一とみなし、軍縮交渉は絶対に駄目だと考える必要はない。非核化は最終的な目標だが、10年かかるか、それとも50年かかるかは分からない。核軍縮は非核化の過程と解釈できるし、非核化という目標を放棄する必要もない。ただし、米国と北朝鮮が交渉を再開しても、意味ある合意に至ることは非常に難しいだろう。このような複雑で重要な問題を北朝鮮と米国だけに任せておくことは適切ではない。米中対立の状況で容易ではなくても、南北米中の4者会談を推進することを提案したい」

―朝ロが急速に密着し、朝中関係は相対的に疎遠になった。原因は何か。

 「北朝鮮がロシアに集中する理由は朝中関係の限界のためでもある。中国は基本的に国連安保理の北朝鮮制裁を順守するという立場だ。朝中境界地域に通商区が14カ所あるが、現在丹東をはじめ2〜3カ所を除くと、開かれていない状態だ。北朝鮮制裁のため、北朝鮮が輸出できる物がないためだ。2023〜2024年の朝中貿易で北朝鮮が中国に最も多く輸出したのはかつらだ。制裁の対象ではないからだ。水産物と鉱物の輸出、委託加工もすべて制裁のため不可能になった。北朝鮮はこれを非常に不満に思っており、全面的にロシアに依存せざるを得ない状況だ。北朝鮮がロシアに派兵した最大の理由はこのような経済的状況のためであり、その次が軍事分野の技術確保とみられる」

―金委員長はロシアとの関係に力を入れている。しかし、ウクライナ戦争が終われば朝ロ関係も変わるだろうか。

 「ウクライナ戦争がいつ、どのように終結するかにかかっている。朝鮮戦争も交渉が始まって2年以上経ってから休戦協定が結ばれた。多くの恨みが積もった戦争を終わらせるのは容易なことではない。トランプ大統領は短期間にウクライナ戦争を終わらせると言っているが、米国がウクライナに兵器供与を切ったとしても、戦争終結は難しいだろう。しかし、終戦が実現すれば、ロシアも米国との関係を改善することがさらに重要になる。北朝鮮も今はロシアから得られる利益を対外関係の中心に置いているが、ウクライナ戦が終われば、外交戦略を修正せざるを得ない。当然、韓ロ関係にも変わるだろう」

―トランプ大統領が再び当選した後、韓米同盟の未来に対する不安が大きくなるにつれ、韓国が独自の核武装をするしかないという声も高まっている。

 「韓国独自の核武装は詭弁だ。独自の核武装は韓米同盟を破ることだ。米国が韓国の核武装を容認すれば、北東アジアはもちろん全世界的に核不拡散体制が崩壊する。第2次トランプ政権の国防総省政策次官に指名されたエルブリッジ・コルビー氏らが『韓国が核武装を試みても構わない』と発言したことはあるが、実際米国政府が韓国の核武装を認めることはありえない。それでは米国と対立しながら核武装を進めなければならないが、韓国の貿易や原子力産業が制裁に耐えられるだろうか。韓国は核兵器は持っていないが、北朝鮮の核攻撃に対応する通常の報復能力は強い。これに加えて拡大抑止を具体化していくことが、現実的に私たちが選択できる道だ」

―金正恩委員長が「敵対的な二つの国家」を宣言した。このように悪化した南北関係が変化する余地はあるのか。

 「金正恩委員長の『二つの国家論』は南北関係において期待するところがないという判断から出たものだ。北朝鮮のこのような態度は、すでに文在寅(ムン・ジェイン)政権後半から始まっている。したがって、韓国で政権交代で北朝鮮政策が変わったとしても、南北関係の回復には様々な要因が影響を及ぼす。北朝鮮の核問題をめぐる交渉が進展し、北朝鮮に対する制裁も解除しなければならないが、それは容易ではない。にもかかわらず、南北の間でできることもある。内乱局面で再び確認されたのは、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が国境地域で衝突を誘導しようとしたが、北朝鮮は衝突を望んでいなかった点だ。そのような意味で、南北間の緊張緩和に向けた軍事合意をすることから、始めなければならない。敵対的な二つの国家から『敵対的』という単語が消えれば、二つの国家の関係も変わる」

―トランプ大統領の就任後、韓国がジョー・バイデン政権と合意した在韓米軍防衛費分担金交渉を問題視し、大幅な引き上げを目指して、在韓米軍の撤退をちらつかせながら圧力を加えた場合、どう対応すれば良いか。

 「トランプ大統領は第1期政権で防衛費分担金を扱ったことがあるため、韓国の論理を知っている。トランプ大統領が再交渉を要求しても、すでに国会批准をしたのだから、政府が勝手にできるわけではない。在韓米軍の役割と韓国の貢献については、トランプ大統領もある程度理解がある。結局、韓国政府の交渉戦略と態度が重要だ。第1次トランプ政権でもトランプ大統領が多くの圧力を加えたにもかかわらず、韓国が適切な線で守った経験がある。韓国の安保分担を実際に考えてみれば、米国が決して損をしているわけではないことを説得しなければならない」

―第1次トランプ政権を直接相手にした経験から、第2次トランプ政権で私たちが重要に考えなければならないのは何か。

 「トランプ大統領に対する説得と対話が最も重要だ。あいにく、2016年の状況と同様に、トランプ政権が発足する時、韓国は弾劾政局だ。就任前から首脳間の関係をどのように結ぶかが重要なのに、非常に残念だ。韓米同盟は、米国の利益にも合致する側面が多く、一方的なものではない。トランプ政権は、米国の利益を優先し、伝統的な同盟に大きな重きを置かない。ある意味、韓国にとっても動く余地が生じる。米国と理解を共にしなければならない分野があり、中国と協力すべき分野もあり、よく考えて対応しなければならない。今、韓国は外交環境そのものが崩れた。これを正常化することが重要だ。価値観と理念の陣営外交から抜け出し、実用外交を展開しなければならない。外交ではカードが多くなければならない。韓米、韓中、韓日関係いずれも重要だ」

2025/01/07 20:47
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/52098.html

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