「21世紀の核兵器」AI、米中新冷戦の最前線に(1)

投稿者: | 2025年1月23日

1940年代、米国がドイツ、ソ連と競争しながら莫大な費用と人材を投入して核兵器を開発した「マンハッタンプロジェクト」のように、21世紀には人間の能力を跳び越える汎用人工知能(AGI)の開発が核兵器開発競争と同じだという意味だ。「21世紀の核兵器」であるAI技術で先頭を走ろうとする米中の競争はますます激しくならざるをえない。

 「みんなのための人工知能」(AI for all)。

 昨年11月末、中国北京の先端技術団地である「中関春ソフトウェアパーク」にあるレノボ(Lenovo)本社に行った時、入口に設置された大きな文字が印象的だった。世界最大のコンピューターメーカーとして有名なレノボだが、今はAIとロボット研究開発が最優先課題だ。中国の主要先端技術企業はいずれもAIの開発と活用に死活をかけている。

 先端工場ではAIで動くロボットが急速に労働者たちの代わりを果たしている。中国の電気自動車工場では産業用ロボットが立ち並び、人がほとんど見えない。これは中国の電気自動車(EV)が原価を破格的に下げ、世界市場を席巻する主な原因の一つだ。中国のEVメーカーのBYD(比亜迪)とNio(ニオ・上海蔚来汽車)の工場では業務の約70%をすでにロボットが担当し、人間が30%を担当しているが、まもなく人間の業務を約10%まで減らし、人型ロボットが代替することになると、日本経済新聞が報道した。

 中国と米国の熾烈な覇権競争の最前線は、AIとロボット、それを稼動させる先端半導体だ。米国とソ連の冷戦は軍事力競争だったが、米国と中国の新たな地政学的競争は、AIを中心とした先端科学技術によって勝敗が決まると、両国の指導者が先を争って強調している。

 中国のAI技術は米国に約1〜2年の遅れをとっているとみられているが、猛烈なスピードで追いついている。米国のシンクタンク「情報技術革新財団」(ITIF)は昨年8月に発表した報告書で、「中国がAIに対する絶え間ない推進力と戦略的投資で米国に追いつき、凌駕するのは時間の問題だろう」と述べた。実際、中国のAIスタートアップの「DeepSeek(ディープ・シーク)」が去年12二月に公開した大規模言語モデル(LLM)「DeepSeekV3」は、米国を「DeepSeekショック」に陥れた。無料で使える「DeepSeeV3」は高性能半導体を使わず、比較的少ない費用で開発されたが、米国のライバル社よりむしろ進んだ機能を持っている。米国政府が中国のAIの浮上を防ぐため、高性能半導体の輸出統制を強化してきたにもかかわらず、中国はこれを技術革新で乗り越え、米国を当惑させている。

 中国は特にAI開発の中核である人材とデータで大きな強みを持っている。韓国科学技術企画評価院によると、中国のAI研究者は41万人(2022年基準)を超え、2位のインド(19万5000人)と3位の米国(12万人)を合わせたものより多い。今月初めの日本経済新聞の報道によると、昨年に世界3大AI学会が採択した論文を分析した結果、著者の多い上位10機関のうち中国の機関は4カ所で、米国(6カ所)に次いで多かったという。最も多いAI関連論文の著者を輩出したのは米国のグーグルだったが、2位は清華大学であり、北京大学、浙江大学、上海趙通大学も10位以内に入った。

 特に、中国は14億の人口で蓄積される膨大なデータと巨大な市場を活用し、追撃のスピードを上げている。顔認証、決済システム、医療などで膨大なデータを蓄積し、AI知能の開発に活用している。TikTokで有名なバイトダンス(字節跳動)が2023年6月に運営を開始したAIアプリ「豆包」の利用者は昨年10月5130万人で ChatGPTに続き世界2位だ。アリババグループ傘下の金融会社アントグループが昨年9月に公開したAIアプリ「支小宝」は、10億人以上が使用する決済サービス「アリペイ(支付宝)」と連動している。新華社通信や人民網などの中国官営メディアも、独自開発したAIを活用し、全世界に向けて膨大な量の中国発ニュースを発信している。

 中国技術専門家である漢陽大学のク・ソイン教授は「AIと半導体技術で米国が明らかにリードしているが、応用と活用の面では中国が有利だ」と説明する。「米国はサービス業中心なのでAI適用の効果が直ちに大幅な費用節減にはつながらない。ところが、中国は世界最大の製造業国家なので、AIとロボットを適用して直ちに労働力を代替し、生産単価を下げるのに有利だ。日常生活でのAIの活用も中国の方がはるかに広範囲にわたっている。米国ではAIの効果に対する疑問の声もあがっている、中国では多くの人々がAIはかならず進むべき道だと考えている」

(2に続く)

2025/01/21 18:54
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/52251.html

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