【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が10日、就任から丸2年を迎える。尹大統領は就任と同時に執務室を青瓦台(旧大統領府)からソウル・竜山の国防部庁舎に移転し、いわゆる「竜山時代」の幕開けを告げた。文在寅(ムン・ジェイン)前政権とは徹底的に異なる道を歩み、「国家大改造」を旗印に掲げた。自由市場経済を基本哲学とし、所得主導による成長と脱原発政策の破棄を宣言したのを皮切りに、労働・年金・教育の3大分野の改革も進めた。さらに、大学医学部の定員増員など医療分野にもメスを入れた。
だが、尹大統領の就任前に築かれていた少数与党の壁は高かった。就任以降に掲げた主要国政課題の推進はもちろん、最大の公約だった女性家族部の廃止も進んでいない。政策推進はおろか、政府組織の構成も思い通りにならなかった。
このような中、尹大統領は就任から丸1年を迎えた昨年5月10日、「これからの1年間さらに力強く、協力して走ろう」と述べ、政策課題の推進を加速させると誓った。
政権が2年目に入った直後の昨年5月16日の閣議では、抵抗勢力を「利権カルテル」と規定して改革への意志を強調した。
尹大統領は大統領選への出馬を表明した時点から利権カルテルに言及していたが、その勢いはより激しくなり、範囲も拡大した。
代表的な例が、同年6月に発表した「私教育カルテル」の解体だ。教育業界と教育当局のカルテルが教育秩序と機会の均等を壊しているとの認識が、大学修学能力試験(日本の大学入学共通テストに相当)から非常に難易度の高い「キラー問題」を排除することにつながった。
また、民間団体の補助金を含む国庫補助金の運用に対し「不正と腐敗の利権カルテルは必ず壊さなければならない」として、2024年度予算案の編成を白紙の状態から検討するよう指示した。
このように改革を加速させたにもかかわらず、少数与党の現実は甘くなかった。政策が実現しない一方、野党主導で国会を通過した法案に相次いで拒否権を行使する結果となった。
昨年5月の看護法制定案をはじめ、労働組合および労働関係調整法改正案、放送関連3法、ソウルの梨泰院で159人が死亡した22年10月の雑踏事故の真相究明に向けた特別法案などに拒否権を行使。拒否権行使の回数は、李承晩(イ・スンマン)初代大統領を除く歴代大統領の中で最多となった。
また、昨年の水害で行方不明者を捜索中に海兵隊員が殉職した事故を巡る軍の不適切対応が隠蔽(いんぺい)されたとされる疑惑の真相究明に向け、政府から独立して捜査にあたる特別検察官を任命するための法案が今月2日に国会本会議を通過したが、尹大統領は同法案にも拒否権を行使する可能性が高い。
一方外交分野では、「グローバル中枢国家」と「価値に基づく連帯」に焦点を合わせ、この1年間で8回にわたり計13カ国を歴訪した。
米国を国賓訪問中に採択したワシントン宣言(23年4月)、米大統領山荘キャンプデービッドで開かれた韓米日首脳会談(23年8月)、2年連続での北大西洋条約機構(NATO)首脳会議出席など相次いで外交の表舞台に立ち、自由民主主義の価値を共有する西側諸国との連帯強化を図った。
防衛産業協力の拡大を目的に昨年7月にポーランドを訪問した際、ロシアによる侵攻を受けるウクライナを電撃訪問したことは、西側の自由陣営に密着しようとする外交活動を象徴する出来事となった。
しかし内政で尹大統領を取り巻く環境は、就任3年目にさらに厳しいものになった。
先月10日に実施された総選挙で与党が大敗し、任期最後まで野党が過半数を占める「ねじれ」に直面する初の大統領になったためだ。
今後の政局はこれまでの2年以上に混迷する可能性が高い。さらに強度を増した野党は、海兵隊員の殉職事故を巡る疑惑を特別検察官に捜査させる法案、尹大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏が輸入車ディーラー「ドイツ・モーターズ」の株価操作事件に関与した疑惑などを特別検察官に捜査させる法案の推進など「波状攻撃」を予告している。
与党内の求心力も低下する見通しで、尹大統領に国政基調の転換を求める声が高まっている。与党「国民の力」の次期院内代表選に尹大統領に近い「親尹派」の筆頭とされる李喆圭(イ・チョルギュ)国会議員が単独で出馬する流れになったが、反対を受けた。結局李氏を除く3人の候補から院内代表を選出することになった。
政権序盤のような一枚岩の体制ではない中、尹大統領に対しては国民とのコミュニケーション不足というイメージを払拭し、「協治(協力政治)」の道に進まなければならないという指摘が与野党を問わず出ている。
このような背景から、尹大統領は先月29日、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表と就任後初めて会談を行った。
会談の成果は、尹大統領が拒否権を行使した梨泰院特別法が与野党の合意により一部修正され、国会で可決されるという結果として表れた。
また、国民とのコミュニケーション強化に対する要求の高まりを受け、就任100日を最後に開かれていなかった記者会見も9日に行われる予定だ。
大統領室高官は7日、聯合ニュースの取材に対し「現場の声にさらに耳を傾け、それにふさわしい政策を迅速に立案し、履行しなければならない」として「その基調は変わらず、今後さらに強化されるだろう」と述べた。
2024/05/07 18:00
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20240507002600882