3月8日午後6時ごろ、東京の「赤坂プリンス・クラシックハウス」には、白いドレスを身にまとった日本人の花嫁がブーケを持って立っていた。中世ヨーロッパの王室を背景にした、映画でしか見たことのない、高さ4-5メートルの華麗なステンドグラスの窓の前で、彼女は入場の瞬間を待っていた。新しい人生の門出に立った日本人新婦の心躍る瞬間だったが、単に祝福の拍手を送ることはできなかった。ここは高宗の息子であり亡国の皇太子だった英親王の李垠(イ・ウン)=1897-1970=が住んでいた邸宅だからだ。1930年に建てられた建物の公式名称は「旧李王家東京邸」だ。
異国の新婚夫婦を祝福する結婚式場と化した邸宅でオーバーラップした人物は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領だ。2月28日、米ワシントンのホワイトハウス執務室でドナルド・トランプ米大統領と舌戦を繰り広げ、事実上追い出された彼だ。ゼレンスキー大統領の「彼(ロシアのプーチン大統領)は休戦協約を破棄した」という発言は間違っていない。国連のような国際機関やあらゆる国際協定が約束した国際秩序の原則によると確かに正しい。まず、武力侵攻したロシアと戦争中のウクライナとしては、米国の支援に対する信頼を当然視したに違いない。
1900年前後の朝鮮・大韓帝国も、ウクライナと同じ戦略を使用したのではなかったか。大日本帝国の侵略的野望を他国からの支援を通じて追いやろうとした。清を味方と信じていたが、日清戦争で廃虚と化したのは朝鮮半島だった。俄館播遷(がかんはせん、1896年2月11日から1年と9日間、朝鮮の高宗がロシア公使館に逃亡した事件)を敢行して帝政ロシアを味方に引き入れようとしたり、一時米国を大韓帝国を守る存在だと信じたりもした。しかし、それはわれわれだけの希望だった。1905年、桂・タフト協約を通じて日本による大韓帝国の支配権が認められ、これ以上支援してもらえる味方に巡り合うことができなかった大韓帝国は、日本に強制併合された。
ウクライナは過去の大韓帝国と似たような境遇に置かれているのかもしれない。当時も今も他国の平和のために代価を求めず膨大な軍資金を支援したり、自国の軍人の血を流したりする「善良な国家」は、存在しない。無条件的な他国の支援のみで国を守るという戦略は通用しないという意味だ。トランプ大統領は会談でゼレンスキー大統領に「あなたはカードを持っていない」と断言した。本当の同盟とは、互いが相手にとって必要な手札を持っているときだけ有効だが、ウクライナにはそのようなカードが存在しないといった意味だろう。舌戦の4日後にゼレンスキー大統領はトランプ大統領に「鉱物協定に署名する用意ができた」という書簡を送った。その日にあった全てのことに対する謝罪も盛り込まれていた。侮辱されておきながらも謝罪しなければならず、米国に潜在的な経済利益を提供するという意向も明確にした。
ウクライナは大韓帝国のように、自国の運命を自ら決める力を失ったのだろうか。「鉱物」は、ウクライナが終戦交渉のテーブルに着くよう助け舟の役割を果たせるだろうか。目の前にある英親王旧邸は「ウクライナに対する懸念に先立って、2025年の大韓民国は冷酷な国際情勢を乗り越えていくだけのカードを持っているのか、よくよく考えてみよ」と語っているようだった。
東京=成好哲(ソン・ホチョル)支局長
2025/04/06 11:45
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