関税の次は為替戦争か、米国「100年物米国債押し売り」までほのめかす

投稿者: | 2025年4月9日

トランプ米大統領が「関税戦争」の次に「為替戦争」を選ぶ可能性が大きくなっている。米国が慢性的な貿易赤字と財政赤字を解決するため関税緩和を口実にドルの価値を下げる「第2のプラザ合意」を要求するだろうという見通しが出ている。

◇「弱いドル」望むトランプ大統領、「マールアラーゴ合意を検討」

 ニューヨーク・タイムズなど外信は8日、トランプ政権がドル相場を調整する多国間協議体である「マールアラーゴ合意」を検討していると明らかにした。マールアラーゴはトランプ大統領が所有するリゾートの名前だ。過去の「ブレトンウッズ体制」や「プラザ合意」が交渉場所であるリゾートの名前を使ったのをまねた名称だ。

米国がドル価値調整を試みる可能性が大きいのは為替相場が持つ相殺効果のためだ。実際に2019年の米中貿易紛争当時、中国は人民元を切り下げて米国が課した関税効果の4分の3以上を相殺したという分析がある。

米国の貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」が基軸通貨であるドルの構造的強さのためという見方も為替戦争の可能性を裏付ける。他国が基軸通貨であるドルを準備資産として蓄積しドルの価値が過度に上がり、これによって米国の輸出競争力が落ちたという解釈だ。このため自国の製造業復活を掲げるトランプ政権としてはドル高を必ず抑える必要がある。

◇関税緩和口実に「弱いドル、100年物国債押し売りの可能性」

米国政府の最近の関税施行が「弱いドル」を作るための布石という具体的なシナリオも出ている。ホワイトハウスのミラン経済諮問委員長は昨年11月の大統領選挙直後にまとめた報告書で、「懲罰的関税以降、欧州と中国のような貿易パートナーが関税引き下げの見返りとして通貨協定にさらに受容的になるだろう」とした。関税を先に課した後、これを緩和する見返りとしてドル安に同意する、いわゆるマールアラーゴ合意を導くことができるという主張だ。

問題はドル安を人為的に作る時に発生しうる影響だ。ドルが基軸通貨の地位を維持するには、それだけ強い需要がなければならず、そのためにはある程度のドル価値は維持されるほかない。だがドル高が続けば経常収支赤字は累積する。結局ドル基軸通貨体制では経常収支赤字を避けることができないといういわゆる「トリフィンのジレンマ」が発生する。

ミラン委員長は報告書でこのジレンマを解決するために「100年物米国債」を同盟国に事実上「押し売り」しなければならないと主張した。同盟国に米国政府が超長期で無料に近く資金を借り入れて長期間ドルに対する需要を維持するということだ。この場合、ドル安でもドルの基軸通貨としての覇権は続くというのがミラン委員長の考えだ。ミラン委員長は「関税というムチ、防衛の傘というニンジンを活用すればそうした取引に同意させられる」と報告書に書いた。

◇プラザ合意時は「3安好況」「いまは当時と違う」

米国が「ドル安体制」を実際に試みるならば、韓国経済に及ぼす影響は複雑だ。ひとまずドル安自体は韓国経済に大きく悪くないとの分析が多い。過去のプラザ合意時は輸出競合国である円の価値が大きく上がり、韓国の輸出競争力が上がった前例がある。プラザ合意後に韓国は低金利・原油安・ドル安の「3安好況」の恩恵を受け高い経済成長率を記録した。今回の米国の貿易紛争の主な当事者は中国だが、人民元を切り上げる場合、中国と競争する韓国の輸出品が相対的に利益を得られる。

ただプラザ合意当時と状況が違うという指摘もある。漢陽(ハニャン)大学経済学科のハ・ジュンギョン教授は「円と違い人民元はウォンと同調するので人民元が上がればウォンも一緒に上がり、韓国の輸出品に大きな利益は発生しないだろう。プラザ合意当時は韓国が貿易赤字国だったが、いまは黒字国のため米国はどんな形でも黒字を減らそうとする可能性が大きい」と指摘した。

◇「中国は従わないだろう、実現の可能性小さい」

トランプ式為替戦争の実現の可能性そのものが低いという分析も出ている。プラザ合意当時は主な交渉対象である日本とドイツが米国の国防力に依存していたため合意が比較的容易だった。だが今回は中国を相手にしなければならないため交渉自体が困難という説明だ。かえって関税と為替政策を大きく調整する状況で金融不安だけ拡大しかねないという懸念が大きい。

梨花(イファ)女子大学経済学科の石秉勲(ソク・ビョンフン)教授は「過去とは違い大多数の国が変動為替相場制を採択している状況で米国の強要により為替相場を人為的に調整するのは事実上不可能だ。結局トランプ大統領は中間選挙用に業績として掲げる投資誘致や防衛費引き上げのような他の反対給付を要求する可能性が大きい」と話した。

2025/04/09 13:36
https://japanese.joins.com/JArticle/332327

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