冷戦が始まって以来、米軍は東アジアで大規模な軍事基地に奇妙なほど執着してきた。数万の大軍が駐留する米領グアム、フィリピンのスービック海軍基地とクラーク空軍基地、日本の横須賀海軍基地と沖縄の空軍基地、韓国の平沢(ピョンテク)地上軍基地と群山(クンサン)空軍基地などは、冷戦時代に建設された大規模な軍事拠点だ。フィリピンの米軍基地は1990年代に閉鎖されたが、基地は冷戦後も米国の力の象徴として堅固に地位を守ってきた。これらの基地は、東アジアにおける大規模な全面戦争を耐えられるようにするために事前に配置された物資と装備と人材を意味する、巨大な「鋼鉄の山(iron mountain)」と呼ばれた。しかし、中長距離ミサイルが普遍化した21世紀になると、話は変わる。
中国の東風系列のミサイルは、これらの基地をいつでも攻撃できるが、現時点では、これらの基地のミサイル防衛システムは極めて脆弱だ。仮に中国が攻撃を加えた場合、巨大な米軍基地は標的となり、多数のミサイル攻撃によって、数千人の死傷者をはじめとする甚大な被害を甘受しなければならない。しかも、米国は東アジアにただの一発の核兵器も保有しておらず、有事に備えた核兵器の保管施設も核運用の要員もいない。さらに、米国の東アジア基地には、中国を攻撃可能な中距離ミサイルもない。第1次ドナルド・トランプ政権で、米国は中距離核戦力全廃条約(INF)から脱退し、東アジアの基地に中距離ミサイルを配備する権利を確保したが、米国の同盟国は、自国に米国のミサイルを配備することに対して極度に難色を示している。米国のミサイルを拒否する韓国や日本のような同盟国も、中長距離ミサイルを保有する国家ではない。核もミサイルもなしに東アジアで中国を封じ込めるというのだから、何かむなしく思える。
海軍力でも疑問が提起される。米国サンディエゴの第3艦隊から航空母艦が東アジアに出動する場合、中国はただちに人工衛星でこれを捉える。空母のすべての運航過程を追跡する中国は、1万マイルの射程距離の地対艦ミサイルをいつでも発射できる。巨大な空母だからといって安全ではないだけでなく、米国の空母の大半は船の使用年数が30年を経過した老朽化したモデルだ。このような空母が米軍の東アジア基地に無事に到着するかも疑問だ。一方、東アジアの米軍は、無人潜水艇やステルス艦艇、ネットワーク戦争を遂行できる群集ドローンのような迅速かつ隠密である現代化した戦力を、現時点では準備できていない。そこで疑問が沸き上がる。これらの基地が中国を封じ込めるために効果的ではないとすれば、費用だけ消耗する冷戦型の基地をなぜ運用しなければならないだろうか。特に、中国封じ込めには特段役に立たない地上軍を主軸とする在韓米軍は、どこに使うのだろうか。
おりしも米国メディアは、ピート・ヘグセス国防長官が、全世界の米軍の戦闘司令部を構造調整し、海外の米軍を縮小する方針だと報じている。3月中旬に配布されたヘグセス長官の「臨時国家防衛戦略指針」は、米国防総省の人材と資源の制約を考慮し、「その他の地域における危険を甘受する」というものであり、米国はひたすら中国封じ込めに集中するために、欧州・中東・東アジアの同盟国に自ら安全保障の責任を負わせるという立場のものだ。同盟国の安全保障の負担を一手に引き受けはしないというトランプ政権の自国優先主義が反映されたわけだ。ちょうどジョー・バイデン前大統領が推進していた在日米軍の構造改編と拡大が中断される兆候とみて、日本政府は非常事態に陥った。在韓米軍については、現時点では具体的な言及がないが、北朝鮮から韓国を防衛する役割を減少させ、中国を封じ込める役割にその性格が変化することは明らかだとみられる。指針は、北朝鮮の封じ込めより、台湾防衛を優先する点を指摘している。さらに深刻なのは、このような国防指針を同盟国と何の相談もすることなく、米国が一方的に推進しているという点だ。このような一方主義は、同盟に対する根本的な疑問を呼び起こす。
米国からは防衛費分担金の増額と台湾の安全保障に対する負担を強要され、中国からは米国に協力するなという圧力にさらされた大韓民国は、深刻な安全保障のジレンマに直面することになるだろう。この状況を打破するためには、強大国の圧力に耐え忍び、韓国が周辺情勢を主導するという自主的な生存の道を切り開く決意を持つ政権が必要だ。大韓民国は強大国が揺さぶると揺れてしまう国ではないこと、高い自尊心に基づく平和の当事者であることを、明確に示さなければならないだろう。
2025/04/04 08:28
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/52924.html