日本製鉄のUSスチール買収が足踏みしている。2023年12月の買収発表後、バイデン大統領とトランプ大統領の反対にぶつかった。安全保障と雇用が障害だ。トランプ大統領は7日に売却不許可決定の再検討を指示したが、10日に「売却は難しい」という立場に旋回した。日本製鉄の買収の意志が強いが、トランプ政権の気まぐれな対応がいかなる妥協にいたるのか不透明だ。
日本製鉄の動きは鉄鋼事業を越えて韓国製造業全般に大きな影響を及ぼすだけに注目する必要がある。何よりも両国企業の立場は同病相憐だ。人口減少などで経済の活力が弱まっているうえ、中国の全面的な攻勢で多くの産業分野が国際競争力を失いつつある。利己主義を追求するトランプ政権を相手にいかなる実利を得るかも共通の関心事だ。日本製鉄の買収の試みは特に背景と目的、方法に関連して次のいくつかの事実を見せている。
まず、急変するグローバル経営環境の変化に積極的に対応したという点だ。日本企業の立場でみると、特有の躍動性で日本企業を苦しめてきた韓国企業の攻勢が2008-09年のグローバル金融危機後に停滞した。韓国企業の革新が鈍り、韓国の成長率は世界平均にも達しない「失われた15年」から抜け出せずにいる。こうした中、ほとんどすべての製造業分野を席巻している中国企業までが米中の対立で対米事業接近権を失っている。
次に、目的の側面で製造業の重要性を再認識させる。もうグローバルバリューチェーンで確固たる位置を確保することは国家生存の問題と直結する。製造業と輸出中心の韓国経済は対外依存度が高く、不安定性が増幅するため、サービス業の比率を高めるべきという議論が注目されてきた。ところが強力な製造業競争力が対外経済関係で交渉カードになるということも確認されている。自由貿易の流れを逆行させる米中対立の長期化の可能性が非常に高いという点で、造船・半導体産業の事例にみられるように、核心製造業は単なる付加価値を越えて安保と対外交渉力確保の基盤となる。
最後の方法に関しては、企業の活動における政府の協力の重要性だ。日本製鉄の買収の動きでも石破茂首相をはじめ、日本政府の強力な対米ロビー活動が作用している。政府の役割に関連し、外部効果のような市場の失敗に対してのみ政府が介入すべきという消極的な見方は力を失っている。国家経済で重要なミッションを遂行するための政府の積極的な役割が強調されている。各国が自国産業の保護のための多様な産業政策を実施するのは一例だ。
シン・ミンヨン/弘益大経済学部招待教授
2025/04/14 16:02
https://japanese.joins.com/JArticle/332515