米研究所の韓国専門家「韓国次期政権の発足前に韓米関税交渉の妥結は困難」

投稿者: | 2025年4月26日

 米国戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ韓国部長は、韓国は米国との関税交渉を始めたが、次期韓国政権の発足前に妥結することは難しいと予想した。

 23日にグランド・ハイアット・ソウルで開かれた「峨山(アサン)プレナム2025」に参加したビクター・チャ韓国部長は記者会見で「韓国は、米国に対する報復ではなく交渉を選択したが、韓国が何を受け取れるかは不明で、韓国の早期大統領選前の妥結は困難だ」として、「交渉のディテールがきわめて複雑なうえ、ラトニック商務長官、ベッセント財務長官、グリア米USTR代表は、韓国をはじめ約30カ国と交渉している」と述べた。

 チャ氏は、韓国次期政権の発足後について、「関税の猶予措置が終わる7月9日より前に交渉を終わらせるべきだが、韓国新政権は容易ではない状況に直面することになるだろう」と述べた。チャ氏は「憲法裁判所の(弾劾)判決までのトランプ政権下では、韓米同盟は『静かな危機』に陥り、軽視されていた」としたうえで、「憲法裁判所の判決後、米国が韓国政府とのコミュニケーションを再開して交渉を始めたことは、肯定的なサイン」だとしながらも、「妥結はきわめて難しく、トランプ大統領は10%の一律関税はあきらめないだろうし、自動車と鉄鋼の関税も維持され続けるだろう」と予測した。

 ビクター・チャ韓国部長は、安全保障問題も韓国にとってかなり難しい状況になると見通した。「トランプ大統領を予測することは不可能だといわれるが、戦略的には予測可能だ」として、「韓国の対米貿易での660億ドルの黒字を好んでいないことに加え、在韓米軍撤収を35年間言ってきた」と述べた。チャ氏は、トランプ大統領が韓米関係でこの目標を必ず解決しようとするだろうが、その時期と戦術(方法)は予測が難しいとも述べた。「トランプ大統領は、今は関税とウクライナに集中しているが、その後、分担金と在韓米軍縮小の議論が本格化する可能性がある」として、「トランプ政権は、中国、台湾について、米軍をインド太平洋地域に再配置しようとしており、韓国とは『戦略的柔軟性』(在韓米軍を朝鮮半島外の台湾問題などにも活用すること)が主要な議題になるため、次期韓国政権はこの問題を扱わなければならない」と指摘した。チャ氏は「トランプ大統領は異例の分野で協力を推進する傾向があるため、戦時作戦権の委譲や在韓米軍の防衛費協定問題が悪い結果で終わらない可能性がある」とも付け加えた。

 ビクター・チャ部長は、トランプ大統領には、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長との朝米対話を再開しようとする強力な意志があると強調した。チャ部長は「トランプ大統領は、いかなる形であっても対話を再開しようとして、韓国政府よりも金正恩国務委員長とより対話を進めたいと望んでいる」として、朝米首脳会談、または「朝米中」の3カ国会談になる可能性があると予想した。また、チャ部長は「トランプ大統領は北朝鮮を『核保有国』と呼び続けているが、これは、非核化を米国の政策の直近の目標にはしないという意味」だとして、「朝米対話が再開されても、北朝鮮問題は残り続けることになる」と見通した。

 この日の「峨山プレナム2025」に参加した外交安全保障の専門家らは、第2次トランプ政権後の国際情勢の不確実性のもとで、韓米同盟の未来や核武装論などについて様々な意見を述べた。

 峨山政策研究院のチョン・モンジュン名誉理事長は、韓国内への「戦術核再配置」とともに、アジア版北大西洋条約機構(NATO)の設立が必要なときだと主張した。チョン理事長は「中国とロシアの支援を得ている北朝鮮の脅威に対抗するためには、必ず『想像できないことを想像する』準備ができていなければならない」として、「より強い核抑制の保障が必要であると同時に、集団安全保障措置も必要だ」と述べた。

 米国バイデン政権で国務副長官を務めたカート・キャンベル氏は、米国の核抑止力に疑問を示す同盟国が徐々に出てきているとしながらも、核拡散には反対する意向を表明した。キャンベル元副長官は「過去30年間にわたり、数十カ国が、米国の核抑止力に対する信頼から核兵器を作らないことを選択してきた」としたうえで、「しかし、今では多くの国が米国は何ができるのかと問うている」と述べた。キャンベル元副長官は「軍事と核運用に関する意思決定に、韓国と日本の参加を拡大しなければならない」として、「アジアで核拡散が実際に起きるとなると、領域内の安定が脅かされる」と述べた。

 北京大学の賈慶国教授は「韓国の核兵器開発や配備が韓国の安全保障を強化するとは考えない」としたうえで、「北朝鮮が核開発を行うのは、在来型の戦力では押されており、補完するためだ。韓国が核兵器開発を行ったり、米国の核兵器を配備したりする場合、北朝鮮をさらに窮地に追い込むことになるだろう」と述べた。賈教授は「戦術核兵器を韓国に配備しても、意図しない結果として、全世界の非拡散体制を損ね、他の国々も核兵器開発に進むことになる」として懸念を示した。

 多くの専門家は、米国主導の既存の国際秩序が揺らぐ過程で、韓国が、日本、欧州、グローバルサウスとの関係を強化し、中国との関係を適切に管理する必要があると強調した。韓米日協力とあわせて、韓中日協力を適切に維持して発展させる必要があるという提案も多く出された。

 慶応大学の添谷芳秀名誉教授は「韓国と日本は、中国、ロシア、米国という周辺3強に囲まれた国家として協力すべき点が多い」として、特に、韓米日と韓中日協力を着実に進展させていくべきだと強調した。「トランプ大統領は、自由主義の国際秩序が存在せず、米国第一主義と取引関係の外交がなされる別の世界に住んでいるようだが、トランプ後も当面は相当期間、このような状況は変わらないだろう」として、「韓国と日本は、価値を共有する他国とも協力していく必要があり、状況に応じて、米国と同じ立場ではない可能性もある」と述べた。

 峨山政策研究院(ユン・ヨングァン理事長)が主催した「峨山プレナム2025」は、「解放80周年、韓日国交正常化60周年」をテーマに開催された。チョ・テイル外交部長官と水嶋光一駐韓日本大使が祝辞を述べ、米国のポール・ウォルフォウィッツ元国防副長官・元世界銀行総裁、ウォール・ストリート・ジャーナルのカレン・ハウス元発行人、CSISのジョン・ハムリCEO、米国防総省のランドール・シュライバー元インド太平洋次官補、CSISのビクター・チャ韓国部長、北京大学の賈慶国教授、長嶺安政元駐韓日本大使など、外交安全保障の専門家50人あまりが参加した。

2025/04/23 16:53
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/53036.html

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