2025年5月18日0時、リアルタイムの電力需給を示す現況掲示板で「原発発電量」が0に変わった。「最後の原発」馬鞍山2号機が稼動を中断し、台湾が東アジアで初めて「脱原発」国になる瞬間だった。台湾内のすべての原発が止まった瞬間、台北に位置する台湾電力公社本社の建物の壁には「非核家園」という文字が緑色に輝いた。「原発のない国」という意味だ。
■韓国と同様「エネルギー島」なのに…粘り強く進めた「脱原発」
脱原発当日、第3原発(馬鞍山1・2号機)がある台湾南部の屏東県でハンギョレと会った曾文生台湾電力公社会長は「これまで台湾全体電力生産の3%台を占めていた原発の発電比重が0に減ることを最終確認した」とし、「18日午後2時現在、エネルギー貯蔵装置(ESS)と風力、水素、ガス・石炭発電所などを稼動し、台湾全域に約3万5千メガワット(大型原発35基規模)の電力を安定的に供給している」と語った。
馬鞍山原発は、首都台北から車で6時間かかる最南端の海岸にある。そびえ立つコンクリート円形ドームの真っ黒な染みから寿命期間40年の歳月の痕跡が感じられた。原発前の浜辺は30度を超える暑さの中、海水浴を楽しむ人でいっぱいで、裏山には原発に代わる大型風力発電機が並んで回っていた。
島国の台湾は周辺国家と電気を共有できない「エネルギー島」という点で、韓国と似ている。台湾も1980年代には「エネルギー安保」を掲げ、全体電力の50%を原発に依存した。しかし、2011年に発生した日本の福島原発事故後、2017年に政権を握ったばかりの蔡英文(民主進歩党)政権は「2025年までにすべての原発の稼動を中断」する法案(「電気事業法」改正案)を可決させ、脱原発を本格的に進めた。環太平洋地震帯に位置する台湾は、どの国よりも地震への懸念が大きいからだ。しかし同年8月、ガス火力発電所停止事故で大規模停電を体験した後、「原発再稼働」の世論が沸騰し、この法案は国民投票を通じて廃棄された。ただし、寿命を全うした原発は閉鎖する形で脱原発政策が続き、結局2025年に馬鞍山2号機を最後にすべての原発を閉鎖することに至ったのだ。
■台湾電力「原発がなくても安定…再生可能エネルギーが代替」
曾会長は「台湾脱原発は時代的な流れ」とし、脱原発批判世論に対し「原発がすべての面で優れているならば、なぜ原子力産業は成長を続けられないのか」と反問した。さらに「寿命が終わった原発を修理したり10年以上かけて新しい原発を建てるより、風力や太陽光など再生エネルギー設備を急速に増やす方が、最も安定的で効率的に電力供給任務を達成する道」だと断言した。
台湾の一部メディアは「脱原発政策が台湾電力公社の赤字を増やした」と報道するが、曾会長はそれは「事実の歪曲」だと語った。曾会長は「台湾は産業競争力を高めるため、韓国より15%ほど安い産業用電気料金を維持している。韓国と同じ水準に電気料金を引き上げたなら、黒字になっただろう」と説明した。昨年、台湾の産業用平均電気料金は電力販売原価より低い1キロワット時(kWh)当たり3.38台湾ドル(約16.2円)で、韓国の産業用料金である182.7ウォン(約19円・大企業基準)より安い。台湾電力公社の現在の累積赤字は4200億台万台湾ドル(約2億120万円)。
台湾電力公社は脱原発を契機に再生エネルギー設備を急速に拡充し、2050年「カーボンニュートラル(炭素中立)」と電気料金の安定化という二兎を追う計画だ。台湾政府も2035年までに15ギガワット(GW)海上風力開発計画を推進し、「2050年までに再生エネルギー比重60%」を達成するカーボンニュートラル目標を発表した。
■福島避難民「大きな事故なく脱原発実現したのは幸い」
脱原発は破壊的な核エネルギーから生命と平和を守ろうとする人々の長年の念願だ。1954年にロシアで世界初の原発が稼働して以来、稼働原発を閉鎖する決定を下した国はイタリア、ドイツなど世界的にも数えられるほどだ。中国、日本、韓国、台湾など北東アジアは原発が特に密集している地域として知られるが、それだけに今回の台湾の初の脱原発は大きな意味がある。
韓国、日本、フィリピン、インドなど10カ国の環境団体会員たちは原発稼動が止まる前の17日夜、台北にある台湾電力公社本部前で「脱原発祝賀」集会を開いた。韓国の参加者20人余りは「核の代わりに太陽」という意味でひまわり帽子をかぶって集会に参加し、メディアの注目を浴びた。台湾の環境団体は原発発電量が0になる瞬間に合わせて台湾電力公社の建物の壁に「原発のない国、原発のない台湾、原発のないアジア」という文字をレーザービームで表すパフォーマンスを行った。
集会に参加した日本福島原発事故の避難者である大賀あや子さんは「台湾が過去50年以上の間、福島のような大きな事故を経験せず、原発を閉鎖したのは本当に幸い」だとして、目を潤ませた。慶州環境運動連合のイ・サンホン事務局長は「韓国では保守政界と核酸業界が力を合わせて脱原発政策を覆したが、そのような汚点が繰り返されないよう、台湾は解体(廃炉)作業など完全な脱原発に成功してほしい」と語った。
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