先月22日朝8時にもまだならない、東京新宿新大久保駅。今年31歳のチョン・ウジョさんはいつもと同じように家を出て、改札口を通過して階段を上がった。イヤホンを耳に入れて音楽を聞きながら電車を待っていた。やがて到着した電車。携帯電話を見ているが、何かが変だった。しばらく経ってもなかなか閉じない地下鉄電車のドア。何かあったのだろうか。がやがや騒がしくなる乗客の隙間から、地下鉄の横の車両が見えた。人々が60代くらいに見える大柄な日本人男性を引っ張って出てきた。まもなく微動だにしない男性を地面に横たえる姿が目に入った。
「人が倒れました!息をしていません!」誰かの緊迫した声が聞こえた。その時だった。自然に足が動いた。「大丈夫ですか? 大丈夫ですか?」男性の隣に座り込んで話しかけた。焦点が定まらない目を見て焦りが湧いてきた。彼女が男性の近くに座り込んでいる間、誰かが近づいてきて男性の足を高く上げ、また別の誰かが駆け付けて心肺蘇生術を始めた。ほんの一瞬の出来事だった。彼女ができたのは意識のない男性の気道を確保することくらいしかなかった。「大丈夫ですか? 私の声が聞こえますか?」どれくらい叫んでいただろうか。男性の目尻がピクピクし始めた。そのようにして10分余りが過ぎたころだろうか。救急隊員が駆け付ける姿が見えた。男性が担架にのせられていく姿を見た後、彼女は電車に乗り直した。軽く1時間以上かかる出勤の途中、ずっと倒れた男性が無事に病院に運ばれたかどうか気になったが、知るすべもなかった。
そしてどれくらい経っただろうか。1本の電話がかかってきた。新宿消防署だった。感謝状を渡したいということだった。「どうしてですか。何もしていないのに…」。倒れた男性の気道を確保して話しかけたこと以外にはないのに、賞だなんて恥ずかしいと思ったが、新宿消防署はどうしても受け取らなくてはならないと言って退かなかった。そして19日に到着した新宿消防署。入口には大きな文字でチョ・ウジョというハングル3文字が書かれてあった。消防署長室に向かっている間、仕事をしていた消防署員が全員立ち上がって拍手をした。チョさんはこのようにして東京消防総監が授与する感謝状を受け取った。生まれて初めてのことだった。21日、新宿で会った彼女は恐縮していた。「倒れた人を助けるのは当然のこと」と話した。忙しい朝の出勤時、快く他人に助けの手を差し伸べるのは簡単ではないというと、明るい表情で笑う。「倒れた方がうちの父のような気がして」。賞よりもうれしいことがあるとも付け加えた。倒れた男性の病状が好転したということだった。24年前、義人である李秀賢(イ・スヒョン)さんが日本人を助けた新大久保駅。小さな奇跡はいまもずっと続いていた。
キム・ヒョンイェ/東京特派員
2025/05/27 15:54
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