私たちの願いが統一であるように、中国の宿願は中国夢(中華民族の夢)の実現である。「中国夢」には国土統一(台湾併合)も含まれる。中国のある外交関係者は今月9日にソウルで開かれた国際フォーラムで、「中国は台湾独立はもちろん、現状維持も受け入れられない」と断言した。台湾の現状維持さえもはや容認できないというのだ。
ところで、台湾の未来は韓国にとってどのような意味を持つのだろうか。地政学的な位置上、韓米同盟という関係上、西太平洋の海路の安全問題などに起因して、韓国は台湾の未来と無関係ではありえない。そのため、韓国は台湾有事について、次の3つの問いに対して明確な答えを持っておかなければならない。第一に、中国による台湾併合は韓国を含む東アジアと世界にどのような影響を及ぼすのか。第二に、台湾有事の際、韓国は対岸の火事を見るように振舞えるのか。第三に、米国が台湾防衛に乗り出すとともに、同盟国である韓国に一定の役割と貢献を求めてきた場合、どう対応するのか。
世宗研究所のキム・ジョンソプ首席研究委員は今月10日付のハンギョレへの寄稿「台湾紛争、韓国はいかに対応すべきか」で、台湾有事について次のように主張している。第一に、米国が台湾を防御できなかった場合、東アジア-西太平洋地域に対する米国の影響力が消滅すると考えるのは極端であり、韓国の安保と台湾の運命を同一視するのは無理がある。第二に、「台湾有事はすなわち韓国有事」と断定してはならず、韓国は台湾有事とかかわらざるを得ないという懐疑論も克服すべきだ。最後に、台湾有事の際、韓国の参戦は避けられないという宿命論は行き過ぎであり、韓国がなしうる最大値は非戦闘分野での間接支援などである。
筆者はキム・ジョンソプ首席研究委員の論旨に概ね同意しつつも、現実主義と地政学の視点からいくつかの異論を提示しようと思う。まず、台湾は日本領の九州からフィリピン、マレーシア領北ボルネオへとつながる「第1列島線」の中核、すなわち南西太平洋と北西太平洋の結節点に位置しており、台湾海峡は物流ルートの要だ。近くのバシー海峡(台湾とルソン島にはさまれた海)は海底光ケーブルの主要ルートであり、グアムから台湾へと向かう米海軍と空軍の最短ルートでもある。そのため中国の台湾併合は、西太平洋の南北の断絶はもとより、台湾海峡とバシー海峡の規制につながりうる。米国は西太平洋の戦略の三角軸である韓国-沖縄-グアムの防衛ができなくなり、米国の影響力はハワイ以東の東太平洋地域に縮小しうる。そして韓国と日本を含む西太平洋地域は、中国の影響圏下に入る。輸出依存度はもちろん、戦略エネルギーの海外依存度も非常に高い韓国は、西太平洋の海路を掌握した中国に頼って生きていくしかなくなる。中国の台湾掌握はキム首席研究委員の予想よりもはるかに大きな結果につながりうることが分かる。
次に、今年3月末に米国のヘグセス国防長官が東アジア歴訪に先立って配布した「潜在的国防戦略指針」の要は「台湾と米国本土の防衛が『米国の国防戦略の唯一の基準』であり、北朝鮮の抑止はもはや同盟国が担うべき」というものだ。台湾有事の際、在韓米軍は台湾防衛のために移動することになるため、北朝鮮による挑発の抑止は韓国が主導すべきだというのだ。台湾防衛についての第2期トランプ政権の本音ははっきりしないが、同指針によると、台湾有事の際、在韓米軍は台湾に移動展開するということだ。そうなると、在韓米軍基地は中国による攻撃にさらされうる。韓国が望もうが望むまいが、「台湾有事はすなわち韓国有事」とならざるを得なくなる。
最後に、台湾有事の際に韓国は参戦せざるを得なくなるという宿命論は行き過ぎだということには、筆者も同意する。中国は台湾を廃きょにすることになる「熱戦」ではなく、世界的な半導体企業TSMCなどをそのまま接収しうる「海空域封鎖」によって台湾を掌握しようとする可能性が高いからだ。中国に「一つの中国原則」に則った海・空軍力を動員しての台湾封鎖を試みられると、米国は介入の大義名分が弱まる。それでも介入を決定した米国に支援を要求してこられたら、北朝鮮のけん制に注力すべき韓国は軍事的、経済的な追加負担を強いられるだけでなく、中国からの強い軍事的圧力にさらされることになるだろう。韓国は第二の朝鮮戦争の防止のためにも、北朝鮮の抑止と在韓米軍基地の防衛支援がなしうる最大値だということをはっきりと表明するなど、台湾の火の粉が朝鮮半島に飛んでこないようにするために最善を尽くさなければならない。
2025/06/18 19:18
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/53518.html