トランプ米大統領は主要国との関税交渉を終え次第、安全保障面での課題に本格的に取り組む見通しだ。早ければ今月末にはトランプ政権の北東アジア政策などを盛り込んだ新国防戦略(NDS)も発表される。
こうした中、韓国が積極的に中国をけん制しなければ、1950年代の「アチソンライン」のように韓国が米国の極東防衛線から外されかねないとの見方がトランプ政権周辺から聞かれる。今月中に開かれる予定の韓米首脳会談で「戦略的自律性」を含め、在韓米軍の役割見直しなどに対する合意がなされない場合、アチソンラインに次ぐ「トランプライン」が現実化する可能性がある。ソウルの外交筋は「トランプ政権幹部が最近、在韓米軍に言及しながら、アチソンラインを取り上げたと聞いている。我々としては想像しにくいさまざまなシナリオが議論されているようだ」と懸念した。
■「中国から離れて中国けん制」
英文メディアの「日経アジア」は今年3月、第二次トランプ政権で台湾だけでなく韓国も防衛ラインから外される可能性があると報じ、アチソンラインについて直接言及した。 この記事でワシントンの外交安保シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」のジェニファー・キャバナー上級研究員は「過去のアチソンラインで日本とフィリピンが含まれ、韓国が除外されたように、第二次トランプ政権は韓国と台湾の双方に安全保障面での確約を与えることは難しいだろう」と予想した。
キャバナー研究員は外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」3・4月号への寄稿でも「米国の歴代政権は中国および台湾に隣接した地域に軍事基地を過度に拡大してきた」とし、第一列島線の防御に執着した戦略を批判した。キャバナー研究員は米国が中国近海での防衛戦略を修正し、第2列島線に対する防衛能力を強化すべきだと提言し、日本北部、グアム、ミクロネシア、パラオなどの空港および港湾に戦略拠点を設けるべきだと指摘した。中国との全面戦争の脅威、新技術の発展を受け、中国から離れて中国をけん制するという論理で、そこに韓国は含まれなかった。
第二次トランプ政権の国防政策の中心人物として挙げられるコルビー国防次官(政策担当)も同様の見解を堅持している。コルビー氏は「米国は膨張する中国の覇権に対抗するため、ヨーロッパの戦略資産をアジアに集中させなければならない」と主張しながらも、台湾と韓国に対しては「米国が直接防衛するのではばく、中国けん制の観点で必要な水準の介入だけを行う」という立場を明らかにしている。これは韓国と台湾が国防費を大幅に増額し、自らを防衛しなければならないという主張で、最近トランプ政権周辺で取り上げられている新アチソンラインとも符合する。
韓米同盟と在韓米軍を軽視するトランプ政権の姿勢を受け、外交・安保専門家は「新しい形のアチソンラインが出てくる可能性を排除できない」と懸念している。トランプ氏は大統領選の選挙運動中の昨年5月、雑誌「タイム」のインタビューで改めて在韓米軍撤収を主張し、「危険な地域に(在韓)米軍が駐留するのはとんでもない。韓国は豊かな国だ。 なぜ我々が誰かの代わりに防衛しなければならないのか」と強く問いかけた。
第一次トランプ政権のエスパー元国防長官は回顧録でトランプ氏が実際に在韓米軍撤収を推進しようとして、当時のポンペオ国務長官と共に再選後に先送りするよう説得したことを明らかにしている。エスパー元国防長官は昨年、本紙とのインタビューでも「トランプ政権継続は韓国に対する米国の防衛公約弱体化につながる可能性が高い」とし、トランプ氏の不出馬を願うと語っていた。
2025/08/04 11:00
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