韓国政府が韓国側で発見された北朝鮮住民の遺体を板門店(パンムンジョム)で引き渡すと北朝鮮側に公開提案したが、北朝鮮側は通知期限の5日まで応答しなかった。これを受け、人道的事案を媒介に南北間の意思疎通を再開しようとした韓国政府の試みも不発に終わった。
韓国統一部によると、北朝鮮側は韓国政府の対北朝鮮通知期限である5日午後3時まで住民の遺体引き渡しに関連していかなる応答もしなかった。統一部の関係者は「当初予告した期限まで北側の応答がなかった」とし「政府の北住民遺体処理指針に従って、地方自治体で無縁故者遺体処理手続きを踏んで丁重に葬儀をする予定」と明らかにした。この日午前まで統一部は「北が応答すればすぐに遺体を今日中に伝達する準備ができている」という立場だった。
北朝鮮が引き取らなかった北側住民の遺体は無縁故者処理基準に従って地方自治体が火葬手続きを踏むことになる。遺骨は一定期間が経過した後、自然の中にまく。北朝鮮は2019年11月に遺体(1人)引き渡しに応じたが、22年(1人)、23年(2人)には応じなかった。
統一部は先月29日、北朝鮮住民の1人の遺体を引き渡すという内容の対北朝鮮通知文をメディアを通して発表した。南北通信線が断絶し、北朝鮮側に直接こうした意思を伝達するのが難しいからだ。
統一部は「我々は人道主義と同胞愛レベルで遺体および遺留品を8月5日15時に板門店を通じて引き渡す方針であり、北側は南北通信線を通して立場を迅速に知らせてほしい」と伝えた。「遺体から発見された証明書によると、住民の名前はコ・ソンチョル、男性で、1988年10月20日生まれ」とし、個人情報も明らかにした。統一部によると、コ氏は黄海北道金川郡(クムチョングン)に居住する農場員で、軍人用の綿の冬服やバッジなど遺留品も見つかった。
しかし1週間後の5日午後まで北朝鮮は南北通信線、国連軍司令部チャンネルで遺体引き渡し関連の応答をしなかった。統一部が「南北通信線」を特定して北側に回答を要求したのは人道的事案をきっかけに対話の再開を狙ったものとみられるが、結果的に北朝鮮はこれを拒否したことになった。北朝鮮は2023年4月7日から南北連絡事務所チャンネルと軍通信線など韓国側とのすべての通信を断った状態だ。
これに先立ち政府は先月9日には東海(トンヘ、日本名・日本海)・西海(ソヘ、黄海)で漂流していた北朝鮮住民6人を漂流当時の木船に乗せて東海側の北方限界線(NLL)で引き渡した。当時、国連軍司令部の「ピンクフォン」チャンネルを通じて日時・場所などを伝達したが、北朝鮮当局は有線上では特に呼応しなかった。ただ、当日はNLL付近に曳き船と推定される船舶が出ていて、北朝鮮住民は木船で自力でNLLを越えた。
統一部は鄭東泳(チョン・ドンヨン)長官の指示で政府の対北朝鮮民間接触制限指針を廃止するなど南北交流の動力を生かそうという立場だが、本質的に北朝鮮が対南断絶路線を変えない限り南北間の意思疎通には限界があるという指摘も出ている。北朝鮮の遺体引き渡し要求無視もある程度は予想されていたというのが政府内の評価だ。
前日、軍当局は最前方に配置された固定型対北朝鮮拡声器の全面撤去に着手したが、北朝鮮側の拡声器撤去動向はまだ確認されていない。これに先立ち北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長は先月28日、朝鮮中央通信を通じて発表した談話で「我々はソウルでいかなる政策が樹立され、いかなる提案が出ても興味はなく、韓国と向き合って座ることも議論する問題もない」と明らかにした。「敵対的な2つの国家関係」に基づく対南断絶気流に変化がないことを強調する発言だった。金与正副部長は談話で「感傷的な一言、二言で覆すことができると期待したのなら、それ以上の誤算はない」と李在明(イ・ジェミョン)政権の先制措置を非難したが、南側の対話提案には応じず「より大きな行動」を要求する姿だ。
2025/08/06 09:20
https://japanese.joins.com/JArticle/337227