チョ・ヒョン外交部長官が米国「ワシントンポスト」とのインタビューで、中国との友好関係の維持について言及しながらも、「中国が隣国にとって多少問題になっている」と異例の発言をしたことが様々な解釈と議論を呼んでいる。
チョ長官は3日(現地時間)に公開されたインタビューで、「我々は中国が南シナ海と西海(ソヘ)で行ってきたことを見てきた」とし、「北東アジアでは中国が隣国にとって多少問題になっている」と述べた。中国が西海上の韓中暫定水域で、構造物の設置などで韓国と対立していることを、南シナ海の領有権の対立とともに言及したのだ。チョ長官は「私たちは中国の浮上と挑戦をかなり警戒するようになった」とし、「中国に『良い関係を維持したいし、中国が両国(関係)だけでなく域内の懸案においても国際法を遵守することを見たい』というメッセージを送りたい」とも語った。チョ長官は中国に対する封鎖一辺倒の政策については反対の意を明確にする一方、米日とも協力していくというメッセージを明確にした。
韓国の外交部長官が中国の「挑戦」についてこのように公に言及したのは異例のことだが、それに盛り込まれた「メッセージ」が注目される。
まずチョ長官は今月末に予想される韓米首脳会談を控え、ドナルド・トランプ政権をはじめとする米国世論に向かって「新しく発足した韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権が韓米同盟を重視する」というメッセージを発信しようとしたものとみられる。トランプ大統領の支持層である「MAGA(米国を再び偉大に)」勢力の一部は韓国の極右勢力と結託し、「中国が韓国選挙に介入した」とか、「李大統領は親中大統領」という陰謀論を広めてきた。米国政界と世論でも「中国牽制」の戦略目標を強調し、韓国の新政権の外交安保方向に疑問を呈する人々もいる。
チョ長官は、長官就任後初の米国訪問で、米国の主要マスコミとのインタビューを通じて、韓国の新政権が米国の関心事案についてよく知っており、韓米同盟を中心に日本とも必要な協力を図るというメッセージを強調しようとしたものとみられる。まもなく行われる韓米首脳会談にむけ地均しを始めたわけだ。
次に、今回の発言は、米中競争が激しくなり、国際情勢が変化する中で、韓国も米中の間に一定の「外交座標」を作らなければならないという問題意識に基づいたものとみられる。外交筋によると、チョ長官の今回のインタビューは、個人の意見ではなく、政府内で調整された立場を表明したものだという。米中競争が激しくなるほど、二大国がそれぞれ韓国に対する要求と圧力を強めることが予想されるが、このような状況で韓国が動揺しないために、一定の外交原則を定めて(メッセージの)発信を試みたということだ。中国が韓国と海洋境界が確定していない西海の暫定措置水域に超大型の鉄製構造物を設置する問題などについて、これまで政府が「私たちの海洋権益を侵害する側面がある」という立場を一貫して明らかにしてきた点も考慮されたものとみられる。
チョ長官のインタビューの公開とともに、中国は直ちに4日夜、駐韓中国大使館を通じて「異論」を呈した。「中国は周辺国と良好な関係を維持」しており、「国連を中心とする国際体制、国際法に基づいた国際秩序、国連憲章を基礎とした国際関係の基本ルールを一貫して確実に守ってきた」と強調した。さらに「韓国の新政権発足後、両国関係は良いスタートを切った」としたうえで、「中韓の戦略的協力パートナー関係をさらに高いレベルに引き上げるために取り組んでいきたい」と述べた。中国の原則的立場を強調しながらも、韓国に対する批判より両国関係の改善を強調する慎重な反応だ。
中国は官営メディアを通じて、チョ顕長官の発言について、より批判的な反応を示した。遼寧大学米国・東アジア研究院の呂超院長は官営「グローバル・タイムズ」とのインタビューで、「チョ長官の発言は慎重な綱渡り外交」だとし、「韓国は第3者(米国)のレバレッジ(テコ)として利用されるよりは、一貫性と真摯さを持って行動しなければならない」と主張した。社会科学院アジア太平洋・グローバル戦略研究院の董向栄研究員は官営「環球時報」とのインタビューで「チョ長官の政策基調は米日側に傾いており、依然として中国に対し米国など西側諸国の言説を使っている」としたうえで、「チョ長官が『中国崛起』に対して警戒感を示したことは遺憾」だと語った。環球時報やグローバル・タイムズが対外的に苦言を発信してきたメディアであることを考えると、これらは通常に比べて強い批判ではない。
大統領室は5日、チョ官の発言に対する立場を明らかにした。「チョ長官の発言は韓中間の一部事案において意見の相違があっても、暮らしの問題および域内の安定と繁栄に貢献する韓中関係づくりのために引き続き努力するという趣旨の言及」だとし、「私たちは堅固な韓米同盟に基づき、韓中関係の発展を目指している」という内容だ。大統領室は「チョ長官は中国との関与の必要性を関係国に提起しているという点も強調したことに注目してほしい」と付け加えた。チョ長官のインタビューが出た後、国内外で「中国問題」を明確に取り上げる必要があったのかという議論が続いていることに対する反応だ。しかし、外交長官のインタビューに対して大統領室が釈明したのは行き過ぎの側面があり、むしろ外交的混乱を拡大させたという指摘もある。
李在明政権発足後、中国側は李大統領を9月3日の中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利(戦勝節)記念軍事パレードに招待するなど、悪化した韓中関係を迅速に改善し、韓国を中国側に引き込もうとするシグナルを送った。ところが、トランプ政権の関税と安保関連圧力などで、韓国はまず韓米外交に集中し難題を解決していくほかはなく、韓中関係の改善と進展にはもう少し時間がかかるものとみられる。特に、トランプ政権が中国牽制を目標に「韓米同盟の現代化」と「在韓米軍の戦略的柔軟性」に対する韓米協議を本格的に進めると、韓国外交の困難はより一層大きくなると予想される。韓国が、米中のどちらか一方に揺さぶられないという自らの明確な原則と戦略、自強の意志を持つ必要性が高まっている。
2025/08/05 18:24
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