韓国と日本の大衆文化交流は2003年、ドラマ「冬のソナタ」がNHKで放送されてから、シンドロームを起こし、大きな変化を迎えた。日本の大衆文化の過度な流入を懸念していた韓国は、いまや日本に文化コンテンツを輸出する国になった。しかし日本では「韓流」と共に「嫌韓」現象がどぐろを巻き、暗い影を落としている。
真夏の日差しが照りつける炎天下の6日、多国籍Kポップグループ「ENHYPEN」のワールドツアー「WALK THE LINE’ IN JAPAN -SUMMER EDITION」が開かれた東京の味の素スタジアムには色とりどりの「日傘の花」が咲き乱れていた。35度を超える蒸し暑さの中で、観客たちは熱くなったアスファルトの入口前で日傘を広げて席を取り、公演4時間前から長蛇の列を作った。
「ENGENE」(エンジン・ファンクラブの名前)の20代の日本人ファン、ソノコさんは猛暑の中、しきりに扇ぎながらも、浮かれた気持ちを隠せなかった。彼女は「ENHYPENがデビューした時から好きだったが、歌が良くてメンバーたちがハンサムなだけでなく、一生懸命に活動する姿も魅力的だ」とし、「コンサートに来るためにはチケットや応援用品などかなり出費が多いが、それだけ投資する価値がある」と語った。一緒に公演を見に来た友人のユイさんは「K-POPグループはENHYPENだけでなく、トゥバイトゥ(TOMORROW X TOGETHER)もとても素敵だ」とし、「スタイルが良く、ダンスや歌が日本のグループよりはるかに優れていると思う」と評価した。
前日に続き2日連続で開かれた同日の公演は、観客席と運動場まで埋め尽くした5万人の観客の期待を満たすものだった。ヒット曲「Brought The Heat Back(ブロート・ザ・ヒット・バック)」と「FEVER(フィーバー)」を皮切りに観客の熱気を高めたENHYPENの華麗なライブとダンスで、ただでさえ熱い公演場は溶鉱炉と化した。また、大型水鉄砲を使った「びしょ濡れショー」と眩しい花火ショーも加えられ、夏の夜を華やかに彩った。メンバーのNI-KIとリーダーのJUNGWONはそれぞれ「私たちのエネルギー原動力は私たちの『ENGENE』であることを忘れないでください」、「『ENGENE』と共に歩く道がいくら険しくても、私たちがその道を花畑にしてあげます」という言葉で「ENGENE」の心を虜にした。ファンたちは「大合唱」で応えた。
ENHYPENは昨年11月から3カ月間、大阪の京セラドームなど3回の日本公演で観客19万人を動員するほど、強力なチケットパワーを誇るグループ。特に、今回の公演で日本で活動中の海外アーティストの中で、デビューから最速(4年7カ月)でドームツアーを成功させた記録も立てた。所属事務所の「ビリー・フラップ」は「数万人が入ってくる日本のスタジアムの単独公演は現地に確固たるファンを確保していることの証」だとし、「単なる人気を越えてKポップグループとしての『ブランド価値』が定着したという意味」だと説明した。
同日のENHYPENの公演は現在、日本国内のK-POPの人気を示す一つの事例だ。K-POPは、日本大衆文化の主流になって久しい。その年の人気歌手たちが総出演するNHKの年末プログラム「紅白歌合戦」にはTWICE、SEVENTEEN、Stray Kids、IVE、LE SSERAFIMなどK-POP歌手たちが常連として出演している。現在、所属事務所 HYBEとの紛争で活動中止状態のNewjaeansは昨年6月、日本で海外アーティストとしてはデビュー以来最速(1年11カ月)で東京ドーム公演という記録を打ち立て、韓日両国の注目を集めた。
K-POPの爆発的な人気はバーチャルアイドルにまでつながっている。バーチャルグループの「PLAVE」は最近、日本デビューシングル「かくれんぼ」でオリコンとビルボードジャパンの主要チャートを席巻するなど合算4冠を達成し、日本国内の海外歌手の中で今年最高の成績を上げた。
K-POPの爆発的な人気に支えられ、日本の音楽産業の輸出は毎年増加傾向にある。韓国コンテンツ振興院(コンテンツ振興院)の資料によると、日本向け音楽産業の輸出額は2021年3億1千万ドル、2022年3億6千万ドル、2023年4億2900万ドルと着実に増加している。
音楽だけではない。韓国ドラマや制作陣、俳優たちも日本に積極的に進出している。韓国人気ドラマの日本版が公開されたり、韓日合作で日本ドラマが作られる事例が増えており、日本現地ではドラマ製作を専門とする韓国の「スタジオ」システムに対する関心も高まっている。
日本ドラマ「私の夫と結婚して」は先月27日、日本のライムビデオで公開されるやいなや、(アマゾンオリジナルドラマ日本視聴者歴代)1位となり大きな関心を集めている。この作品は同名の韓国ウェブ小説を日本ドラマに脚色したもので、昨年1月に放送され大きな人気を集めた韓国ドラマ「私の夫と結婚して」(tvN)と同じ原作をもとにしている。原作が同じであるだけでなく、製作自体が韓日合作で進められ注目を集めている。「秘密の森」、「ザ・グローリー」のアン・ギルホ監督が演出を引き受け、スタジオドラゴンのソン・ジャヨン・プロデューサーとCJ ENMグローバルコンテンツ製作チームのイ・サンファ・プロデューサーが責任プロデューサー(CP)を担当した。
今年1月に公開された日本ドラマ「初恋DOGs」も韓日合作で製作された。スタジオドラゴンと日本のTBSはロマンスドラマ「初恋DOGs」を共同企画・製作し、韓国俳優のナ・イヌとハン・ジウンも出演した。「あやしいパートナー」(SBS)、「怪物」(JTBC)のように韓国ドラマが日本でリメークされた事例もある。スタジオドラゴンの関係者は「世界的にヒットしたKドラマが相次いで出てきて、韓国ドラマ製作システムに対する関心が日本国内の事業者から急速に高まった」とし、「韓国はドラマ製作を専門とする『スタジオシステム』が拡散した一方、日本は過去の韓国のように放送会社中心のドラマ製作システムが維持されている」と語った。
韓国大衆文化の日本国内での人気を指すいわゆる「韓流」ブームの始まりは、23年前にさかのぼる。2002年に韓国放送(KBS)で放送されたドラマ「冬のソナタ」は2003年にNHKで放送され、社会現象と言えるほどの人気を集め、2002年にBoAが韓国歌手としては初めてオリコンチャート1位に輝き、韓流ブームが本格化した。2000年代半ばには「文化放送」(MBC)のドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」と歌手「東方神起」や「神話」が相次いでヒットし、韓国大衆文化の力を誇示し、その後「防弾少年団」(BTS)まで韓流は絶えず拡張した。ハ・ジェグン大衆文化評論家は「日本はかつて韓流ブームを経験したため、韓国大衆文化に対する固定ファンがすでに形成されている」と話した。
このような成果には「SM」、「HIVE」、「JYP」、「YG」のような大手芸網事務所の現地化戦略とシステムの伝授が基盤になった。大手芸能事務所は日本現地に法人を設立し、輸出ではなく現地で歌手を育てる方式へと進化している。2020年、JYPの現地化ガールズグループ「Nizu」が良い反応を得たことを受け、「BLACKPINK」の製作陣がK-POPシステムを適用して作ったガールズグループ「XG」も人気を博した。最近デビューしたHIVEのボーイズグループ「aoen」、ソニー・ミュージック・コリアが日本のNTTドコモスタジオと協力して作ったガールズグループ「cosmosy」も関心を集めている。
このような流れの中で、韓国のコンテンツ産業は日本に圧倒的な輸出実績を見せている。コンテンツ振興院の統計によると、2023年の韓国の全体コンテンツ輸出額は約125億ドルであり、このうち日本への輸出額は約22億9500万ドルで18.3%を占めている。これは中華圏(33.5%)に次ぐ高い割合であり、単一国家としては最大レベル。韓日間のコンテンツ輸出入の格差はますます広がり、2023年には約20倍以上の差を見せた。
韓流が日本国内で拡散することができたのには、1990年代半ば以降、韓国コンテンツ産業の急速なデジタル化と開放が決定的な役割を果たしたと専門家たちはみている。1990年代中盤、超高速インターネット網の普及とアルバム・ビデオ物の規制緩和で創作環境が一層自由になり、グローバル大衆文化市場で競争力を持つようになったということだ。最近は、グローバルOTTが韓流の拡散に大きな役割を果たしている。キム・ホンシク文化評論家は「この時、音楽、映画、ドラマなど多様なジャンルのコンテンツに対する接近性が高まり、新しい世代がクリエイターに成長できる基盤が整った」とし、「ポン・ジュノ、パク・チャヌクなど世界的な監督がこの時期に多く登場したのは偶然ではない」と語った。一方、日本の場合、自国市場に集中する内向的文化戦略がむしろ世界市場での拡張性を制限する要因となった。
韓流が20年以上続いている状況だが、バラ色の見通しばかりではない。日本も大衆文化の発展とグローバル進出に向けた対応に悩んでいる。日本政府は6月に初めて開かれたグローバル大衆音楽授賞式「ミュージック・アワード・ジャパン」を通じてコンテンツ産業を主要基幹産業とし、積極的な支援に乗り出した。この授賞式自体がJ-POPを世界に知らせるという趣旨で政府が企画したものだ。授賞式に出席した日本の都倉俊一文化庁長官は「日本の芸術と文化を世界に知らせることは国の非常に重要な役割だ。今回の『ミュージック・アワード・ジャパン』は、そのような役割を積極的に支援する画期的なプラットフォームだ。政府レベルで全面的な支援を惜しまない」という方針を明らかにした。
実際、J-POPアーティストたちの韓国進出もここ数年間活発になり、国内にJ-POPブームが起きている。3月、仁川(インチョン)の「インスパイア・アリーナ」でシンガーソングライターの米津玄師が2万人を越える観客を集め、成功的な来韓公演を行っており、シンガーソングライターのあいみょんと優里の公演も続いた。昨年、公演を行ったグループ「YOASOBI」は、チケットが入手困難になるほど、韓国内での人気が高い。藤井風は昨年末、日本の歌手としては初めてソウルの高尺(コチョク)スカイドームで公演した。日本からの音楽輸入額も2021年291万ドルから2023年には368万ドルに徐々に増えている。
キム・ホンシク評論家は「映像分野では第2のパク・チャヌク、ポン・ジュノが出ておらず、Kポップ側では詐欺的不正取引疑惑でHYBEのバン・シヒョク議長が検察に告発されるなど、経営危機が生じている。K-POP産業の環境・人権問題は長年の慢性的問題だ」とし、「このような問題が解決されていない状況でい、強固な内需市場を持つ日本の韓国市場攻略が本格的に行われた場合、韓流の持続可能性を楽観することはできない」と指摘した。
2025/07/30 08:16
https://japan.hani.co.kr/arti/culture/53917.html