【リセットコリア】韓米関税妥結、危機を機会にするには

投稿者: | 2025年8月19日

韓米関税交渉が猶予期間の終了直前に劇的に妥結した。米国が課した25%の相互関税は、日本・欧州連合(EU)と同じく大規模な投資と1000億ドル(約15兆円)のエネルギー輸入などを条件に15%に引き下げされた。韓国は過去に類例がない3500億ドル規模の対米投資約定という「超大型カード」を取り出した。交渉の妥結には「米国の造船業を再び偉大に(MASGA)」というスローガンを前面に出しながら実効性が高い1500億ドル規模の投資案を提示したのが功を奏した。日本・EUの交渉結果を参考にしながら差別化した対米投資案を提示し、国内的には受け入れがたいコメと牛肉の輸入拡大を防いだ。

政府も「最善」の結果ではないものの最悪の状況を避けて不確実性を減らし、ある程度の市場接近安定性を確保した「次善」の結果を得たと自評している。相互関税と品目別関税で競争国より不利な待遇を受けなかった点を慰安としているが、自動車関税の優位が消えるなど韓米自由貿易協定(FTA)が実質的に無力化するのを防げなかった。また、トランプ大統領がCNBCのインタビューで対米投資は「貸出」でなく「贈り物」と発言するなど、韓国政府とは全く異なる主張をしている点も、今回の交渉結果に対する不安感を高めている。関税率、投資、輸入規模などに関して数字を中心に大きな枠組みの合意は成立したが、まだ口頭の合意にすぎず、重要な具体的条件と後続細部協力案を用意するのはこれからだ。

 3500億ドルの対米投資は機会であると同時に危機となる可能性がある。米国との戦略的協力を通じて韓国の造船業を世界最高レベルにし、人工知能(AI)・半導体・二次電池・バイオ・原子力発電など主要産業のグローバルサプライチェーンで主導的な位置を強化していかなければならない。しかしトランプ大統領が自身のSNSに交渉妥結を伝えながら「米国が所有して統制する投資」であり「投資収益の90%を米国が保有する(retain)」と明らかにした点は、投資履行過程で少なからず支障が生じることを示唆する。米国が希望するたびに現地雇用、技術公開、サプライチェーン調整など追加の条件を要求することが可能な構造が形成された。投資の履行が振るわなければいつでも「関税引き上げ」カードが再登場する可能性がある。海外投資の拡大は製造業の空洞化、国内雇用・技術の流出、産業生態系の断絶などの副作用を招く。

「機会の獲得」と「リスク管理」の併行が要求される。今回の韓米関税交渉は単純な市場利益の交換でなく、国際通商秩序の本質的な再編に対応する出発点となる。対米投資が「数字合わせ」や政府の見せるための実績に帰結しないよう、経済安全保障、産業生態系、国家競争力の観点で実質的な成果を最大化する戦略的対応が求められる。そのために最も重要な点は、対米投資の取引条件を再設計しながら同時に国内投資環境を画期的に改善することだ。

不確実性を減らすために対米取引に「履行担保装置」(スナップバック、条件付き相応措置、紛争調整ファストトラックなど)を要求する必要がある。現地化と再投資条件、韓国内製造・雇用効果、核心基有技術の域内残存など「国家経済主権」の担保を同時に追求できる戦略的案を用意しなければいけない。国内企業の活動環境を悪化させて対米投資を促すことは、韓国製造業のルネサンスでなく没落を自ら招く結果をもたらすしかない。

近く開催することで合意した韓米首脳会談で韓米同盟が強まるという期待もあるが、トランプ大統領が防衛費分担金、国防費増額、在韓米軍戦略など安保分野の請求書を突きつけて追加の投資と市場開放を要求する可能性が高い。これに対応するためには投資、雇用寄与、戦略産業協力などにおける韓国の「安保の役割」をデータに基づく「直観的かつ簡単な数値」で提示し、防衛産業、人工知能、宇宙・サイバー安保など未来の安保分野で韓米間「融合型分業」構造を先制的に提案する必要がある。臨機応変でなく真の実用のための交渉を準備することが要求される。韓国経済はいつも危機の中でも機会を見つけてきた。今回もその道を歩まなければいけない。

康仁洙(カン・インス)/淑明女子大経済学科教授/リセットコリア経済分科委員長

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2025/08/19 15:59
https://japanese.joins.com/JArticle/337749

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