フィリピンが2025年1-3月期(5.4%)に続いて4-6月期にも5.5%という高い経済成長率となった。これは東南アジア主要国のASEAN5(インドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン)のうちベトナムに次いで2番目に高い。グローバル景気鈍化と米国の関税圧力で大多数の国の成長率が下方修正される中、フィリピンはむしろ成長予測が上方修正され、注目される。
さらに重要なのは2025年上半期にフィリピン内の投資承認額が前年同期比59.1%増え、韓国が最大投資国に浮上した点だ。
◆韓国企業、フィリピン投資承認額の15?
HD現代重工業とハンファオーシャンの造船所拡張からサムスン電機の10億ドル規模のスマートフォン・電気自動車核心部品(MLCC)工場増設の検討まで、韓国企業のフィリピン進出ラッシュが本格化している。これまで観光地として認識されてきたフィリピンが新しい経済パートナーに浮上していることを見せている。
韓国ではそれほど注目されていなかったが、フィリピン経済は過去30年間、年平均4.67%の堅調な成長率を維持してきた。その結果、1995年に837億ドルだった経済規模は2024年には4616億ドルへと5.5倍以上に拡大し、1人あたりの国内総生産(GDP)も1224ドルから4078ドルへと3倍以上に増えた。コロナ感染拡大当時の2020年(-9.5%)を除くと、過去10年間のフィリピンはベトナムの成長率を追い上げるほどだ。
こうした成長の核心には内需基盤がある。約1億1000万人の人口と中産層の浮上で強力な消費市場が形成され、海外勤労者が送ってくる送金額が増え、家計の消費を支えている。
またコールセンターやデータ処理などビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)産業がグローバル競争力を確保してGDPの60%を占めるなどフィリピン経済を牽引している。最近は物価の安定と利下げで消費が増加し、農業も7%成長するなどバランスのよい回復を見せている。
フィリピンの成長を牽引した各種インフラ投資と外国人投資の裏には、成長基調を維持しようとする政府の積極的な投資誘致政策がある。2021年にCREATE法を制定して法人税を30%から25%に引き下げたが、複雑なインセンティブ体系と行政手続きの遅延など限界が表れた。
これを受け、2024年にCREATE MORE法を新たに制定し、税制優遇を大幅に強化して投資手続きを簡素化した。付加価値税ゼロ税率適用拡大、地方税最大2%固定に続いて外国人専門人材のための特殊ビザ制度までも新設した。このように法人税引き下げに加えて多様な行政および税制インセンティブが結びつくと、外国人投資誘致に対する政府の意志がより確実に伝わった。
こうした投資環境改善努力はすぐに効果を表した。2025年上半期のフィリピン経済区域庁(PEZA)投資承認額は723億6000万ペソ(約1850億円)と前年同期比59.1%増となり、承認プロジェクト件数(133件)も10.8%増えた。このうち韓国が全体投資承認の14.87%を占め、最大投資国に浮上した。韓国の投資金は107億ペソ、約2619億ウォン(約276億円)にのぼる。
実際、韓国企業のフィリピン進出は昨日今日ことではない。サムスン電機が1997年から進出し、SFAのような半導体・電子部品企業も現地生産を増やしてきた。最近はハンファオーシャンの海上風力事業からポスコ建設のインフラ事業まで約20件のプロジェクトが新たに承認され、投資領域が多角化している。これまでになくフィリピンの戦略的重要性とビジネスチャンスが注目されている。
多様な産業分野協力のうち、特に造船業分野でフィリピンの戦略的価値が新たに浮き彫りになっている。「スーパーサイクル」に乗った韓国造船業界が海外生産基地の確保に積極的に動いているうえ、韓国が米国と推進中の「MASGA(米国造船業を再び偉大に)プロジェクト」でフィリピンがアジアの重要な拠点となる可能性があるからだ。
HD現代重工業はすでに2022年からフィリピンのスービック造船所をMRO(維持・補修・整備)用として使用し、海外受注量が増えたことで船舶建造にも活用している。最近、香港と日本の船会社から受注した運搬船8隻もここで建造する予定だ。ハンファオーシャンも海外拠点確保戦略を展開し、昨年シンガポール海洋プラント企業ダイナ・マック・ホールディングスの経営権を確保し、米フィリー造船所を買収して施設投資を進めている。
◆米中競争の中で戦略的空間となるフィリピン
特にフィリピンは米国と相互防衛条約を結んだ同盟国であり、米軍がスービック湾を海軍基地で活用していて、他の東南アジア国家とは違い米艦艇のMRO事業まで受注できる独特の利点がある。フィリピンはHD現代重工業やハンファオーシャンなど韓国の主要造船企業が共通して活用する海外事業拠点だ。こうした特性のためにフィリピンは韓国造船業界が米国とアジア・太平洋をつなぐK造船の核心戦略拠点として利用することが可能だ。これは「韓国-フィリピン-ベトナム-シンガポール-太平洋-米国」とつながる拠点体系の構築を現実化するうえでに重要なステップになるはずだ。
今はもうフィリピンに対する認識を変える時だ。堅調な経済成長と米国との同盟関係は韓国企業に戦略的拠点としての価値を証明する。米中競争の中でフィリピンは韓国の「第3の戦略的空間」になる可能性がある。もちろん政治的な変動性とインフラ格差のリスクは存在する。韓国企業はこうした潜在的リスク要素を綿密に分析し、政府との協力を通じてリスクを最小化する戦略を同時に推進するべきだろう。韓国がK製造業・K造船強国の競争力を維持するうえで、フィリピンとの協力はさまざまな面で有益なカードになる。
コ・ヨンジョン/延世大国際学大学院デジタル通商研究教授
2025/08/20 12:02
https://japanese.joins.com/JArticle/337793