30年間でむしろ後退…「慰安婦」問題、もはや妥協すべきか【寄稿】

投稿者: | 2025年8月21日

 戦後80年を迎え、河野談話(1993)や村山談話(1995)を継承することで、「慰安婦」問題をそろそろ終わりにしようという妥協の声が出てきている。しかし、1990年代半ばの河野談話とアジア女性基金(国民基金)が発表された際、被害女性たちがどのような立場に置かれていたのかを記憶しなければならない。

 1991年の金学順(キム・ハクスン)さんの生存者としての証言と、日本軍が「慰安所」制度に深く関与した証拠が出てくると、1990年代半ばに日本政府は、いくつかの一定の解決策を提示した。河野談話とアジア女性基金がそれだ。しかし、1996年と1998年に発表された国連人権特別報告者の報告書は、このような措置は一定程度の意味があるとはいえ、人類の歴史で類例のない規模の国家主導の戦時性的奴隷制度を構築した責任を曖昧にすませるのではなく、明確な責任認定と真相糾明、公式謝罪、法的賠償、責任者処罰、継続的な教育などを担保してこそ、真の解決になると明確に指摘した。これは、国際連帯を通じてすでに声を一つにしていた各国の被害女性たちの要求を反映した解決策だった。国家主導の重大な人権侵害に対して、国家がどのように責任を取り、解決すべきなのかについての国際的な基準が立てられたのだ。

 当時、被害女性たちも、河野談話やアジア女性基金が被害女性たちの名誉と人権を回復する真の解決策ではないとして強く反発し、これに基づき、その後の30年間、困難な闘争を続けてきた。したがって、30年前に解決策ではなかった河野談話は、いまさら解決策にはなりえない。しかも、日本政府の立場はその後むしろ後退し、いまでは強大な資金力と外交力を前面に出し、全世界を相手に少女像の撤去、ユネスコ「世界の記憶」登録の妨害、慰安婦の歴史の歪曲など、被害女性たちの名誉と人権を深刻に侵害していることは、厳然たる事実ではないのか。

 ならば、韓国政府はどうなのか。「慰安婦」問題を国際的な女性の人権問題として、被害女性たちの名誉回復を最優先にして、「被害者中心主義」的な観点から解決しようとしてきたのだろうか。

 最大の失敗は、2015年の朴槿恵(パク・クネ)政権の密室交渉から出てきた韓日外相共同記者会見発表だった。合意文もなく、国会や内閣の批准も経ていない政治的宣言にすぎないこの発表には、「慰安婦」問題が「最終的かつ不可逆的に解決」されたため、韓国と日本は今後、国際社会でこの問題を取り上げたり非難したりしてはならないという口封じの条項まで含まれている。その後、国連の数々の人権機関が、2015年の慰安婦合意は不十分だとして、「被害者中心」の解決を求める勧告を何度も出したにもかかわらず、日本政府は解決済みだと主張し、性的奴隷ではなかったなどの妄言を繰り返し、世界各地に建てられた慰安婦少女像を撤去するために、外交力を動員している。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権はこれを撤回し、被害女性たちの名誉回復を掲げ、2015年の合意を再検討すると表明した。「和解・癒やし財団」を解体し、「日本が出資した10億円を韓国政府が負担し、日本に返還する」と宣言するところまでは進展したが、政権末期には結局、2015年の韓日合意は国家間の公式合意であることを認め、この問題の解決をさらに複雑にした責任がある。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、最初から日本の立場をそのまま受け入れる親日政権だったため、言及する価値すらない。

 光の革命で尹錫悦前大統領が弾劾され、国民の選択を受けた李在明(イ・ジェミョン)大統領は、今回が本当に最後の機会だという厳粛な使命感を持ち、「慰安婦」問題の解決のために、あらゆる努力をつくさなければならない。文在寅政権が掲げたが失敗したツートラック・アプローチを今回は実践し、経済や安全保障はそれなりに進めつつ、歴史問題は切り離し、日本の真摯な謝罪と反省を引き出さなければならない。

 一方で韓国にも「直視」すべき歴史がある。最近、韓国政府はベトナム首相を国賓として招待し、相互に経済と文化協力を強化することにした。歓迎すべきことだ。しかし、ベトナムにとって韓国は加害国だ。現在でもベトナム戦争時に韓国軍が犯した虐殺の被害者たちは、韓国政府を相手取り法廷闘争中であり、韓国政府は相次ぐ敗訴の判決に対して控訴している。このような状況下でベトナム政府は、被害者の立場を代弁する代わりに国益を優先し、過去は問わないという政治便宜主義的な立場を取っている。被害国政府が要求しなくても、加害国として韓国政府が自ら立ち上がり控訴を取り下げ、真摯な解決の意思を示すべきだ。さらに一歩踏み出し、韓国軍のおぞましく残忍で大規模な性暴力についても、その被害当事者とそれによって生まれた「ライダイハン」たちには、心から頭を下げて公式謝罪すべきであり、「被害者中心主義」の原則によって、被害当事者たちと協議に入らなければならない。

 韓国がベトナムとの関係において、加害国家の責任を回避し、被害者を冷遇する日本の前例を踏襲するのであれば、韓国は決して人権先進国の列に加わることはできないだろう。韓国が人権問題において模範事例として賞賛されるドイツを見習い、被害者に感動を与えることができる真摯さを持ったうえで、謝罪と後続措置を積極的に講じるのであれば、韓国とベトナムの関係はさらに強化されることになる。日本に対しては、「慰安婦」問題を解決すべきだとする、さらなる圧力となるだろう。

 李在明政権は発足以降、多くの難問に対応している。経済、安全保障、外交、南北関係など、あらゆる分野がすべて危機であり挑戦だが、一つひとつ着実に解決しているようだ。

 李在明政権が「慰安婦」問題をどのように解決するのかについては、他の問題とは違い、この政権が国際的な人権先進国として、経済規模に相応しい指導者の地位に跳躍するかどうかを決定づける重大な問題だ。進取的かつ勇気ある決断を期待する。

2025/08/20 19:23
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54021.html

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