「15円50銭」が発音できず殺害された日本人【東京特派員コラム】

投稿者: | 2025年9月2日

 1923年9月1日の関東大震災の際に起こった朝鮮人虐殺で、日本の聴覚障害者も朝鮮人と誤解され殺害されていた事実が分かった。

 朝日新聞は1日、日本語で「15円50銭」が発音できず朝鮮人と誤解され、自警団に殺害された東京聾唖(ろうあ)学校卒業生の事件について報じた。

 この悲劇は「朝鮮人が暴動を起こし、井戸に毒を入れた」という流言飛語から始まった。理性を失った日本の自警団は朝鮮人を探し出すため、道端で通行人を捕まえては「15円50銭」と発音させた。朝鮮人は最初の濁音を「ちゅうごえん」と発音するためだが、その際に日本人のある聴覚障害者が朝鮮人と誤解された。

 聴覚障害者は通常の発音が難しいケースが多いが、当時犠牲となったこの聴覚障害者は他人の唇の動きをまねて発音する「口話法」に優れ、貞明皇后(大正天皇の皇后)が東京聾啞学校を訪れた際に代表して対話した記録も残っている。ところが日本人自警団はこの聴覚障害者をその発音を理由に朝鮮人と誤解した。

 朝日新聞の記事によると、当時の記録には別のある聴覚障害者が自警団の兄弟から「家から出るな」と言われた記録もあるという。自警団たちも発音だけで人間が殺される事態を認識していたことが分かる。

 東京都内の韓国文化院で1日、在日本大韓民国民団主催の関東大震災追悼式が開催された。102年前に東京で発生したマグニチュード7.9の大地震により都内で多くの建物が崩壊し大混乱となった際、日本人自警団や軍人らにより多くの朝鮮人が虐殺された。しかしこの事件について日本政府による正式な調査や謝罪などは行われず、すでに100年以上の歳月が流れた。

 2年前に本紙が日本の立憲民主党所属の杉尾秀哉議員を通じて入手した「斉藤実文書(斉藤実が朝鮮総督だった1919-27年と29-31年に記録された公式文書)」には「朝鮮人虐殺者813人」と記録されている。当時天皇直属だった朝鮮総督府が行った調査の記録だ。しかし日本政府はこれを「事実関係を把握できる政府の記録」として認めていない。

 40代の日本人のある知人は「関東大震災での朝鮮人虐殺については聞いたこともない日本人がほとんどだろう」「『過去に明治維新があった』と同じように、関東大震災は遠い過去の出来事に過ぎず、朝鮮人虐殺について学んだことも、聞いたこともない」と語る。102周年を迎え改めて振り返るべきこの悲劇も「また少し遠のいた過去」になったようだ。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)特派員

2025/09/02 09:40
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/09/02/2025090280020.html

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