認めよう、私も中国が嫌いだ【寄稿】

投稿者: | 2025年10月13日

 私は中国が嫌いだ。突然の反中宣言なのか。違う。私は米国も嫌いだ。ロシアも嫌いだ。私はほとんどの国が嫌いだ。理由はレッテルの貼り方次第だ。まず、人間が問題だ。米国は人間が騒がしくて嫌いだ。中国も同じ理由で嫌いだ。フランスは人間が無礼で嫌いだ。フランス人は無礼さを耳当たりのよい言葉で隠して生きるずる賢い人たちだ。ドイツは少し好きな国なので、嫌いな理由を考えなければならない。ナチスだから嫌だとは言えない。意外なことにドイツ人は優しい。原罪を抱える国の人たちは、どうしても少し優しい。理由を探した。ドイツは食事がまずくて嫌いだ。当然、英国も嫌いだ。食事がドイツよりまずくて嫌いだ。

 何かを嫌いだと言うと、良いところも探せと言われる。良い面だけをみる人生が幸せなのかどうかはわからない。私は何でも嫌なものが先にみえるタイプの人間だ。だからこそ、このコラムのタイトルも「キム・ドフンのひねくれ」だ。私も「キム・ドフンの優しさ」のようなタイトルのコラムを書きたい。しかし、ネタが思い浮かばなくなり、4回ほど連載したら、連載を終えてしまうだろう。好きなことだけで埋めつくした文章を、一体誰が読むだろうか。われわれは友人たちと誰かをほめながら時間を過ごすことはめったにない。ほめることもある。3分で終わりだ。代わりにわれわれは陰口をたたく。30分は話せる。ただし、年を取るにつれ、陰口はだんだんと減っていく。若いからこそ「あいつが5年前にやったこと」だと怒ることができる。年を取ると「あいつが15年前にやったこと」にすぎない。15年前のことなど、あまりよく覚えてなどいない。記憶が減退すれば怒りも減る。

 誰もが嫌う国はあるだろう。最近では、世界中の人たちが最も嫌う国は、米国、ロシア、イスラエルなどではないかと思う。力が強いからと意地悪をする国々だ。韓国人が一番嫌いな国はどこか。中国だ。最近の韓国メディアは嫌中デモをしかりつけている。韓国内の人種差別をなくそう。多くの記事は倫理的にいさめるだけで終わる。倫理的な叱責ほど、効果に乏しい結論もない。韓国は人種差別が微妙な国だ。他の人種と一緒に暮らした経験が極端に少ない。他の人種が嫌いというより、見慣れていない。米国人が「わが国の人種差別」を語るときと韓国人が「わが国の人種差別」を語るときでは、同じ文言でも意味が異なる。嫌中デモに関係ないイスラエル国旗が登場したことをみるだけでわかる。この国は差別をするにしても、本当の意味での脈絡がない。

 誰もが反中を語る。最近の韓国政界は嫌中デモに巻き込まれ、「反中感情」を強く懸念している雰囲気だ。極右なのか。違う。現時点では西欧の極右と肩を並べるには程度が低いので、単に保守と呼ぼう。進歩派の政治家とメディアは、保守が反中を扇動することが、韓中関係にとっての負担になる恐れがあると心配している。心配すべき点はある。区別しなければならない。嫌中デモと反中感情の主体だ。前者は偽情報だらけの政治系YouTubeの中毒者たちだ。後者はそうではない。2023年の韓国ギャラップ調査では、韓国人が最も嫌いな国として選んだのは中国だ。34%だ。日本は24%にまで後退した。20代の77%が日本に対して好感を持っている。70代以上は36%にすぎない。中国に対する非好感度が最も高い世代は20代だ。最も低い世代は40~50代だ。認めよう。韓国では、韓国の未来の世代が中国を最も嫌っている。反中より反日に慣れ親しんでいる40代と50代は心配しているだろう。

 心配などするのはやめよう。理由は単純だ。どの国も隣国を最も嫌う。隣国とは当然親しくすべきだというのは、歴史と地理の勉強が足りない人たちによる極端に優しい世界観だ。インドとパキスタンは互いに殺し合うほど嫌いあっている。ギリシャとトルコは宿敵だ。英国とフランスは百年戦争の記憶など忘れたふりをするが、互いにいまだに見下している。南アフリカ共和国の周辺諸国は南アフリカ共和国を一番嫌っている。ベトナムは中国を嫌っている。タイと周辺諸国も互いに嫌いあっている。アルゼンチンとブラジルが互いに嫌う理由をアルゼンチンの友人に尋ねたところ、ただ笑っていた。ブラジルの友人に尋ねたところ「南米のすべての国はアルゼンチンを嫌っている」という返事が来た。ロシアとドイツが国防費を増額する様子を見守るポーランドの心境も聞いてみたい。

 すべての国が隣国を最も嫌う理由は隣だからだ。仕方なく何百年も隣り合って過ごしていれば、沈殿物が生じないわけにはいかない。イスラエルがガザ地区に爆弾を降り注いでいても、ドラマの著作権を無視してコピーする中国のほうがもっと嫌いだ。ロシアがウクライナにドローン攻撃を浴びせても、キムチを自分たちの食べ物だと主張する中国のほうがもっと憎い。遠くの国を嫌う理由はあまりない。近くの国には嫌いな理由が次々と生まれる。近いがゆえに関わることが多く、目に入るものも多いためだ。

 反日が反中に転化した理由も単純だ。日帝強占期(日本による植民地時代)の集団的記憶は、それを体験した世代とともに徐々に蒸発しつつある。最近の世代にとっての日本は、安くて旅行に行きやすく、「鬼滅の刃」のようなものもよく作る、とにかくそのような国だ。ライバルかつ憎い隣国の地位は中国が取って代わった。半導体も競争だ。携帯電話も競争だ。電気自動車も競争だ。土地も広くて人口も多いため、気になることも多い。新世代は、高齢の皆さん、いや私も含め、われわれのように「三国志」を読んで成長したわけでもない。「中国夢」という単語の好き嫌いを世代別に調査すれば、驚くほど極端な結果が出るだろう。

 今日も私のフェイスブックには、「中国経済は内部では腐っているので、心配するな」という主張と、「中国経済は韓国を圧倒しているので、緊張しなければならない」という主張を込めた長文が、互いの存在を知ることなく争っている。結局のところ、一種の反中感情という点では、仲が悪いようにはみえない。どうせわれわれは、いとこが土地か何かを買ったり、自分より大きなテレビを買ったりすることで、腹が立つ人間だ。適当に反米もして反日もして反中もして生きていればいい。根拠のない嫌中でさえなければ問題ない。そういえば、イスラエル国旗を手に、ソウルの大林洞(テリムドン)で行われた嫌中デモに出かけた人たちが、路地裏にただよう羊串や麻辣湯の匂いを愛国心でこらえている表情は、少し気にはなる。カメラマンの皆さんの健闘を祈る。

2025/10/11 21:24
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54436.html

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