韓国政府が米国と3500億ドル(約53兆円)規模の対米投資パッケージをめぐり詰めの交渉に入った。
16日(現地時間)、金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長と金正官(キム・ジョングァン)産業通商部長官がラトニック米商務長官に会い、2時間ほど談判した。これに先立ち15日、「国際通貨基金(IMF)・世界銀行(WB)年次総会」などに出席するために米ワシントンを訪問中の具潤哲(ク・ユンチョル)副首相兼企画財政部長官がベッセント米財務長官と会った。
韓米交渉は3500億ドルの投資方式をめぐり膠着状態となったが、最近、米国が韓国側の修正代案に「意味のある」反応を見せ、新たな提案を韓国に伝達して気流が変わった。米国側の交渉「キーマン」であるラトニック長官と会った金容範政策室長は交渉後、「2時間に十分に話した」と短く話して去って行った。具体的な交渉結果はまだ公開されていない。
この日、両国交渉団は韓国が米国に投資することにした3500億ドルの①投資構造(現金対保証)②投資配分の商業的合理性③通貨スワップの範囲の3つの争点をめぐり合意点を模索した。
米国は韓国が投資金を現金中心、前払い(up front)形態で納入することを要求してきた。これに関し具潤哲副首相はベッセント長官に対し、対米投資の前払い要求が韓国為替市場の安定性を害するという懸念を伝えた。具副首相は「米国が早期の前払い執行を要求するが、為替事情上、韓国がそのようにするのは難しい」とし「ベッセント長官もこれを理解し、内部的に十分に説明すると答えた」と話した。
米国の前払い・現金投資要求に関連し、韓国政府は為替市場の安定性と財政負担を考慮して保証・貸出中心に投資構造を組むべきという主張で対抗している。このため韓国はキャピタルコール(capital call)方式、年度別分割執行などを米国に要請し、米国が一部で前向きな反応を見せたという解釈が出ている。
キャピタルコールは出資金を一度に納入するのではなく、約定限度内で必要な場合に出資要求に応じる方式だ。これを適用すれば3500億ドルを一度に準備する必要はなく、財政負担を減らすことができる。
ある外交筋は「米国が今回の交渉で前払いを強く要求している。韓国は為替事情を考慮して期間を長くしたり分割納入方式で対応しようとしている」とし「トランプ大統領が政治的に前払いを強調しているだけに実務レベルの折衝がカギとなる」と話した。具副首相も「実務長官は(全額前払い投資は難しいという韓国政府の立場を)理解しているが、どれほど大統領を説得してトランプ大統領が受け入れるかは不確かだ」と明らかにした。
韓国政府はその間、為替「安全弁」性格の無制限通貨スワップが韓米投資交渉妥結の「必要条件」と強調してきた。外貨準備高(4220億ドル)の83%にのぼる3500億ドルを投資する場合、短期間にドル流出が発生し、ウォン安など「通貨危機」につながる可能性を排除しにくいからだ。
ただ、通貨スワップ問題は今回の交渉の最優先議題でないというのが政府の説明だ。投資構造(スキーム)が確実に決まった後に議論する問題ということだ。具副首相は「投資構造が確定すればそれによって為替所要が計算される。前払いは為替事情上不可能だと話したので、他の代案が出てくればそれに合わせてスワップ規模と必要性を判断することになるだろう」と述べた。
一部では3500億ドル投資時期を最大10年に分割し、韓国ウォンで投資金を調達する案を両国が議論中という主張が出ている。ある金融当局者は「韓国為替市場規模を考慮すると、年間150億~200億ドル水準が市場衝撃を最小化できる限界値」と説明した。しかし具副首相は「初めて聞く話」と一線を画した。
投資先や損益配分も重要な争点だ。米国は投資ファンドの運用権を自らが持ち、収益配分も米国に有利に構成することを望む。これに先立ち日本は米国との交渉で投資金回収前は5対5、回収後は米国90%・日本10%で収益配分する構造を組んだ。
高麗大の朴成勲(パク・ソンフン)名誉教授は「政府は韓国企業が強い産業を中心に投資先を決め、その企業がドルを直接調達して投資すれば政府の為替所要を減らすことができる」とし「3500億ドルの現金支給は現実的に不可能であり、代わりに長期的プランで米国産業の再建に実質的に寄与するべき」と強調した。
政府内では「中国のレアアース(希土類)輸出統制がトランプ大統領を説得する意外な変数になり得る」という声が出ている。同盟国に無差別的な関税圧力を加えてきた米国が、レアアースを前面に出す中国との全面戦争の可能性が拡大すると、全世界の同盟国に向けて対中国共同戦線を要求してきたからだ。
外交筋は「米国は韓国が造船、半導体、二次電池など対中競争のために必要な技術を保有している点を知っている」とし「このため本格的な全面戦争が始まる前に同盟国との不必要な葛藤を急いで最小化するべきだと認識している」と伝えた。
一方、この日、金正官長官と金容範政策室長は訪米最初の日程で米行政管理予算局(OMB)のラッセル・ボート局長と約50分間の会談をした。今回の会談では両国造船業協力プロジェクト「MASGA(米国造船業を再び偉大に)」推進案が主な議題として議論された。
2025/10/18 10:41
https://japanese.joins.com/JArticle/339933