極右病と外国語嫌悪【寄稿】

投稿者: | 2025年11月1日

 2024年の米国大統領選挙からもうすぐ1年を迎える。ドナルド・トランプ氏の2度目の勝利は、初勝利の時同様に大きな衝撃を与えた。支持者たちは歓声を上げたが、米国社会全般で心配と不安が高まった。2度の大統領選勝利の結果は似ているようで、非常に大きな違いがある。2016年、トランプ氏は代議員投票では勝利したものの、総得票数はヒラリー・クリントン候補に比べてほぼ300万票も少なかった。ホワイトハウスの力が弱体化せざるを得なかった。一方、2024年の選挙では代議員はもちろん、総得票数でもライバルのカマラ・ハリス候補を上回った。トランプ氏は意気揚々にホワイトハウスに入城した。

 就任してから9カ月余りのトランプ氏の行動は、このような違いを示している。トランプ氏は今、躊躇いなく本性を露にしている。まさに白人至上主義だ。氏にとって「本当の米国」は白人だけが住む国だ。不法移民を防ぐとして合法移民者と米国市民を抑圧する。州兵は犯罪と闘うという名目で、ワシントンD.C.とロサンゼルスに派遣された。これらの大都市には有色人種が多く住んでいる。今度は他の都市にも軍隊を送ると脅している。9月初めに暗殺された極右ジャーナリストのチャーリー・カーク氏のために行われた国葬級の葬儀もこの延長線上にある。

 それだけではない。3月1日、トランプ氏は英語を米国の公用語に指定するという行政命令を下した。史上初めてのことだ。氏は「米国の言語は英語のみ」という古い考えを政策に反映した。言語はアイデンティティと密接な関係がある。内部団結のため、他者化のために簡単に持ち出せる道具だ。

 連邦制の米国において言語の使用、特に言語教育関連の方向性は各州が定める。トランプ氏の行政命令の前に、すでに27州が英語のみを公用語に指定していた。大半がトランプ氏が3回の選挙で勝利した地域だ。白人人口の割合が相対的に高く、長い間黒人に対する人種差別の合法化を維持した南部の割合が高い。これまで公用語を指定しなかった他の20州のうち、彼を支持するところは多くなく、この命令に従う可能性は高くない。

 国が公式言語を国語または公用語に指定する事例は非常に多い。極右的発想とは言い切れない。だが、米国は違う。極右思想の中核を成すのは他でもなく白人優越主義だ。彼らにとって他の言語使用者は「英語のみを使う白人」の「純粋さ」を脅かす嫌悪の対象だ。

 日本も急速に右傾化している。「日本人ファースト」という極右的スローガンが参政党を中心に勢力を広げている。外国人が多いとか、日本語が通じなくて不便だとか、路上で外国語だけが聞こえるとか、外国人が増えれば日本語がすぐに消えるだろうという参政党支持者たちのインタビューをユーチューブで簡単に見つけることができる。米国の白人至上主義に似た、「純粋な」日本人に対する執着を反映している。彼らは他の言語使用者を脅威の存在と捉えている。

 韓国はどうだろうか。残念ながら、韓国もこのような危険から自由ではない。最近、ソウル明洞(ミョンドン)や大林洞(テリムドン)で、中国人嫌悪デモが頻繁に行われている。地域の商人と住民にとって脅威になるほどだ。外国人労働者が多い職場で「言葉が通じない」という不満の声もあがっている。ここでの「言葉」は「韓国語」を意味する可能性が高い。もちろん、米国や日本のように言語が極右の嫌悪対象として明確に登場してはいない。まだ韓国極右勢力の「純粋さ」に対する執着は中国人嫌悪を中心に現れている。だが、他の国籍者または他の外国語へと拡散する可能性はないだろうか。

 では、どうすれば良いのだろうか。世界的に極右勢力の力が大きくなってはいるが、いわゆる「極右病」を患っている国を詳しく見てみると、他方では「純粋さ」を拒否する、開かれた民主的価値観が新しく跳躍する方法を真剣に模索していることがわかる。韓国社会でもそのような声を育てる必要がある。静かに事態を静観したり、チャンスを待つだけでは解決できない。開かれた民主的価値観に向けた声を積極的に高めなければならない。20世紀において失敗した極右に未来はなかった。21世紀にも同様であることを証明すべきだ。そこから始めてこそ、皆が共に生きていく未来を作ることができる。

2025/10/29 19:00
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54612.html

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