慰安婦問題、感情よりも合理的思考が必要【朝鮮日報コラム】

投稿者: | 2025年11月3日

 このほど亡くなった日本の村山富市元首相は「談話で過去の歴史を反省した良心的指導者」と認識されている。李在明(イ・ジェミョン)大統領がわざわざ追悼声明を出したのも、このような影響があったのだろう。1995年8月の植民地統治謝罪談話(「戦後50周年の終戦記念日にあたって」〈いわゆる村山談話〉)が有名だが、その1年前に発表した「戦後50年に向けての村山富市内閣総理大臣の談話」にも注目しなければならない。

 村山氏はこの談話で、「いわゆる従軍慰安婦問題は、女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、私はこの機会に、改めて、心から不快反省とおわびの気持ちを申し上げたいと思う」と述べた。同氏はその後、被害者のための民間基金設立を構想し、1995年7月に「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」が作られた。多くの韓国人の間で「法的責任を避けようとする小細工だ」と認識された同基金の近況が気になり、ホームページを探してみた。

 同基金は2007年に解散したが、「デジタル記念館」の形でこれまでの状況を韓国語でも詳しく説明している。韓国関連部分を要約すると以下の通りだ。「元『慰安婦』 2004年現在207人、生存者は135人。韓国政府はアジア女性基金の設立に対しては、当初積極的な評価を下したが、やがて否定的な評価に変わった。被害者を支援するNGOである韓国挺身隊問題対策協議会(略称:「挺対協」)が強力な反対運動を展開し、マスコミも批判すると、政府の態度も影響を受けた。基金に対する元「慰安婦」の方々の態度は、さまざまだった。アジア女性基金を批判し拒否する考えの方々もいるが、不満はもつものの、受けとるという態度の方々もいた。受けとるという考えを公然と表明したため、批判や圧力を受けた方もおり、その中にはやむをえずアジア女性基金拒否を再声明した人も出た」

 その上で、「(最終的に)償いを受けとった7名の被害者たちには強い圧力がかけられた。『償い金』他をお渡しすることが被害者への圧力につながるということは、被害者の方々にとっても基金にとっても耐え難いものだった」と書いてある。韓国国内の事業は1999年に中止された。しっくりしない部分もなくはないが、外交上の確執が起こらなかったのを見ると、おおむね事実に符合しているものと推察される。

 だからこそ気になる。韓国は慰安婦被害者たちに対して十分な、そして適切な待遇をしてきたのだろうか。横領罪が確定し、支援金返還訴訟中の「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(旧・挺対協)尹美香(ユン・ミヒャン=前代表、前国会議員)事件」が決してそうではないことを物語っている。では、韓国はなぜあれほどまでに断固とした姿勢を取っていたのだろうか。時代の状況上、避けられなかった面があると思う。1991年8月の金学順(キム・ハクスン)さんの証言公開をきっかけに、慰安婦問題は国家的関心事になった。同年に放送されたテレビドラマ『黎明の瞳』など、慰安婦の苦しみを描いた大衆メディアも国民感情に影響を及ぼしただろう。このようなムードの中で結局、関連団体・運動家の領域が聖域化され、逸脱行為につながったと思われる。

 国や社会が当時、もう少し冷静沈着に対応していたなら、慰安婦問題は中途半端な形になった現在よりも良い結果になっていたのではないだろうか。保守強硬派と評される高市早苗氏が首相に就任しても「韓日協力」を重視する期待の方が懸念の声を圧倒している韓国のムードを見ると、なおのことそのように感じる。慰安婦問題は、国家間の懸案解決において、感情よりも合理的思考が必要であることを気づかせてくれる。今後の対日外交において苦い教訓になることを願う。

鄭智燮(チョン・ジソプ)記者

2025/11/03 07:00
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2025/11/01/2025110180015.html

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