【社説】足下の火を消した「韓国外交」、米中間の新たな均衡点を探れ

投稿者: | 2025年11月3日

 李在明(イ・ジェミョン)政権の発足からわずか4カ月で、慶州(キョンジュ)でのアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議を大きな支障もなく無事に開催した。終盤まで妥結の行方をめぐり心配させた米国との関税交渉、「安米経中」(安全保障は米国、経済は中国)が困難になった新たな戦略環境のもとで中国との新たな関係を結ぶこと、極右的だとして論議が多かった日本の新首相との協力の約束など、それぞれ容易ではない外交課題に直面していたが、かなり成功裏に第一歩を踏み出せたと評価できる。しかし、自由貿易秩序と韓米同盟が同時に揺らいでいる危機のもと、北朝鮮が事実上の核保有国になったという厳酷な地政学的現実は少しも変わらなかった。米国などとの継続交渉を通じて、今回の会談の成果をしっかり守っていくと同時に、変化した戦略環境のもとで、韓国の長期発展を可能にする新たな均衡点を探るために最善を尽くさなければならない。

 李大統領は1日、APEC首脳会議の記者会見で、「アジア太平洋地域は多くの挑戦に直面していており、持続的な繁栄と成長のためには、相互の貿易拡大が必要だという認識を共有した」として、そのために「慶州宣言」などの3つの成果文書を採択したことを明らかにした。APEC首脳はこの宣言を通じて、危機に直面するグローバル貿易体制▽人工知能(AI)などのイノベーション技術の急速な発展▽労働市場構造を再編する人口構造の変化などを主な「挑戦」として挙げ、協力を確認しあった。世界4大強国に囲まれた「分断国家」である韓国は、これらの困難に加え、北朝鮮核問題の解決と韓米、韓中関係の再調整という複雑な難題を同時に解決する必要のある苦境に追い込まれている。

 APEC会議を無事に終えた状況のもとで、最も心血を注ぐべき実務課題は、関税交渉の継続作業だ。韓国政府は米国に2000億ドルを「現金」で投資するが、1年間の投資上限額を200億ドルに定め、「元利金が保障される商業的合理性のあるプロジェクトにのみ投資」するよう協定書(MOU)に明記することにしたと明らかにした。この説明どおりに協定書が作成されるのか、最も重要な投資事業の選定の際に、韓国がどの程度の実質的な影響力を行使できるのかなど、細心の注意を払って見守らなければならない。「悪魔は細部に宿る」という点を忘れず、米国側から「別の話」が出てこないよう、綿密な協議に臨んでほしい。

 さらに困難かつ根本的な問題は、「韓米同盟の再調整」と「中国との安定的な関係の設定」という2つの課題を同時に解決することだ。李大統領が1日、中国の習近平国家主席に述べたように、韓中の経済的関係は「垂直的分業構造から水平的協力構造」に変化している。このような不安定な状況のもとで、在韓米軍の主な役割が「韓国防衛」から「中国けん制」に変わっており、韓国軍の能力が中国と対抗する方向に強化される場合、韓中関係は大きな試練に直面することになる。ニューヨーク・タイムズは1日(現地時間)、韓国の原子力潜水艦建造計画について、専門家の分析を引用し、「韓国が、均衡者から、米国のシステムに完全に組み込まれたパートナーへと転換したことを意味する」と報じた。

 韓国が米中間でバランスを取ることに失敗すれば、中国は北朝鮮の核保有を事実上容認する最悪の選択をするかもしれない。利己的な帝国に堕落した米国、期待を捨てて冷淡に背を向けた中国、核を握り敵意をむき出しにする北朝鮮の間で孤立すれば、この国に未来はない。変化する情勢のもとでも揺るがぬ韓国だけの新たな座標軸を、必ず見出さなければならない。

2025/11/02 18:50
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54625.html

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