ドナルド・トランプ米大統領は最近、アジア歴訪中に様々な贈り物を受け取った。韓国では金で作られた新羅王冠の複製品を、日本では金のゴルフクラブをもらった。
トランプ氏は金に執着することでよく知られている。しかし、トランプ氏が本当に切望しているのは、金より貴重なノーベル平和賞だ。問題は、トランプ氏がマフィアのボスのように、平和を全く気にしていないことにある。氏の望みは、部下が自分の命令に従い、敵が恐怖に怯えることだけだ。
トランプ氏は、ロシアのプーチン大統領が米国大統領に屈服し、ウクライナとの交渉テーブルにつくことを望んでいる。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が反抗を止めて、ハマスとの休戦交渉に乗り出すことを願っていた。マフィアのボスのように、自分が絶対的な権威を持っており、意のままに賞と罰を与える存在であることを誇示したいと思っている。
トランプ氏はまた、現実そのものを歪曲しようとしている。「7つまたは8つの戦争を終えた」と自慢しているが、これは疑わしい主張だ。氏は様々な紛争(例えば、インドとパキスタン、タイとカンボジアの紛争)で、休戦交渉にほとんど関与しなかった。また、ガザ地区のような「成果」は、そのほとんど(依然として)解決していない状態だ。エジプトとエチオピアの場合、戦争すら勃発していなかった。
トランプ氏のレトリックと行動を考えると、トランプ氏は正反対の賞、「ノーベル戦争賞」を受賞すべきだろう。氏は同盟国と敵国を問わず、戦争の脅迫の手段として使ってきた。グリーンランドに米軍を派兵すると脅したのは、北大西洋条約機構(NATO)同盟国であるデンマークとの衝突を引き起こしかねない言動だった。友好的な隣国のカナダを併合するとまで述べた。
さらに懸念すべきなのは、トランプ政権がメキシコの麻薬カルテルを攻撃するため、ドローン打撃と米軍の派兵を真剣に検討している点だ。メキシコへの介入計画は、トランプ政権がカリブ海と太平洋で遂行している麻薬との戦争の拡張だ。米国はすでに12隻以上の船舶を攻撃し、60人以上を射殺した。米国防総省がこの作戦を「戦争」と呼ぶのは誤った表現だ。米国政府は、該当船舶が実際に米国を攻撃したか、攻撃しようとしたことを示す証拠を提示できずにいる。
たとえ麻薬密売業者が操縦しているという証拠があったとしても、これは法執行の対象にすべきだ。トランプ政権は超法規的殺人を行っている。米国はベネズエラ政権を交代できるだけの武力をベネズエラ近隣地域に配置した。メキシコとベネズエラでの潜在的戦争はトランプ氏が「ノーベル戦争賞」を授賞する資格がある最も最近の理由に過ぎない。
トランプ氏は、イランに対するイスラエルの攻撃に便乗し、イラン内の核施設3カ所を爆撃した。もし氏が最初の任期序盤にイラン核合意を破棄していなければ、イスラエルや米国がイランの核計画を武力で打撃する必要はなかったのだろう。
トランプ氏はまた、米軍を米国の都市に配置した。米国内のデモに対して軍事力を使うと脅かし、甚だしくは米国市民を海外の監獄に追放するとも述べた。
最近は核兵器実験を再開すると発表した。米国が署名したものの批准しなかった「包括的核実験禁止条約」(CTBT)に正面から違反する行為だ。エネルギー省は、米国が核兵器の非核心的構成要素(運搬システムなど)に限り実験を行うと主張しているが、トランプ氏はロシアと中国が類似の実験を行うという主張を根拠に、地下核実験の復活を望んでいる。
トランプ氏が「ノーベル戦争賞」を受賞する資格がある最後の理由は、「戦争省」と呼ぶ国防総省の予算増額を目指しているからだ。昨年5月、氏は史上初の兆単位の防衛予算を提案した。約9千億ドル(約138兆600億円)の基本支出と行政府が推進した調整案を通じてさらに1200億ドルを加えた予算だった。
トランプ政権は、軍事行動を米国の外交政策の最優先手段として復元した。トランプ氏はこの変化に関して賞をもらう資格がある。もちろん、氏が受賞を望んでいる賞ではないが。
2025/11/09 18:39
https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/54686.html