高市早苗首相は、台湾有事の際に自衛隊が介入する可能性に言及した「存立危機事態」発言について、「政府の従来の見解に沿ったものなので、撤回や取り消しをするつもりはない」と述べた。中国は「死の道」という露骨な表現を使用して強く反発するなど、波紋が広がっている。
高市首相は10日の衆議院予算委員会で「台湾有事が日本の『存立危機事態』に当たる可能性に触れたのは、(野党議員の質問に)最悪のケースを想定して答弁したもの」とし、「実際に発生した事態の個別具体的な状況をみて、政府がすべての情報を総合的に判断すると繰り返し答弁している」と述べた。「存立危機事態」とは、日本が直接攻撃を受けなかったとしても同盟国などが敵国に武力攻撃を受けた余波で日本の領土や国民の生命が危険にさらされた場合、自衛隊を動員できる「集団的自衛権」行使要件の一つ。
これについて野党第一党の立憲民主党の大串博志議員は、4日ぶりに国会に立った高市首相に「(日本が)戦争に飛び込むかどうかの判断」だとし、政府の公式見解かを質問。これに対して高市首相は、具体的な事例を挙げて質問が出た部分を指摘し、「(7日のやり取りは)様々なケースを想定してのに対して答えたものであり、実際の状況の時に政府が総合的に判断するという従来の政府の立場を変えたものではない」と答えた。大串議員が「非常に深刻な問題」だとし、発言を撤回する考えがあるか二度も確認したが、高市首相は「政府の従来の見解に従ったものなので特に撤回・取り消しをするつもりはない」と述べた。
2015年の安保法制改正の際に「存立危機事態」の概念が導入された後、現職の首相らは特定の国家を刺激することを懸念し、「実際の状況が発生すれば、政府が総合的に判断する」という原則的立場だけを明らかにしてきた。だが高市首相は7日の衆院予算委に出席し、「中国の台湾侵攻」を想定した野党議員の質問に対し、「(米軍が介入した際、中国が)戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても(日本の)存立危機事態になりうるケースだ」と述べ、物議をかもした。現職の首相が台湾有事を「存立危機事態」と述べ自衛隊投入の可能性に言及したのは高市首相が初めて。ただ、中国や台湾など特定国家を具体的に取り上げたことについては、「反省点としては、特定のケースを想定して明言することは今後慎もうと思う」と述べた。
中国の薛剣駐大阪総領事は9日、自身のXのアカウントに「『台湾有事は日本有事』は日本の一部の頭の悪い政治屋が選ぼうとする死の道だ」とし、「くれぐれも最低限の理性と遵法精神を取り戻し、敗戦のような民族的潰滅を喰らうことが二度とないようにしてほしい」と激しく批判した。同総領事は8日に「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」と書き込んだとされているが、9日夜から該当の掲示物は確認されていないと日本メディアが報じた。日本の木原稔官房長官は10日の定例会見で、これに関して「非常に遺憾」だとし、中国に強く抗議し、投稿の削除を要請したと明らかにした。
2025/11/10 19:03
https://japan.hani.co.kr/arti/international/54701.html